サイトウキネン 2007


 わずかばかりの雲を浮かべて晴れ渡る青い空と眩しいというよりも 痛く感じるほど強い日差し、普段ならクーラーの効いた部屋から決して出ることのない であろう2007年、記録づくしの酷暑の夏真っ盛り。

 8/19 AM10:00 女鳥羽川沿いにあるホテルの一室、大宴会の余韻も覚めやらぬ私の耳がとらえたのは、 サイトウキネン歓迎パレードの開始を告げるアナウンスであった。 窓の外には、陽炎も立ち上がろかと思える路面に、 パレードを見物する人々が集まり始めている。 私は覚悟を決めて大きなソフトケースに手をかけ、背中に担いだ。

 パレードで道が混雑する前に松本城本丸を目指す。 途中、道を渡るのも規制されている状況であったが、 そこでは演奏者を示すシャツと帽子、 そして何より背中の楽器が通行手形の役目をしてくれた。 道に立つ係の人に「ごくろうさま、」と言われると、 その言葉を、そのまま彼らに返した。市職員や先生、 ボランティアなど多くの人が、係員として街のあちらこちらで仕事をしている。 彼らこそが、このサイトウキネンを支えている最も大きな力なのだろう。

 本丸に着くと、木陰にレジャーシートが広げられており、 そこにおかださん一家が待ってくれている。毎年、本当にありがたいことである。 チューバとしては小さい方ではあるのだが、 私の楽器をシートに置くと、その半分程度を占拠してしまう。

 閑散とした本丸に容赦なく降り注ぐ熱波のごとき日の光を避けて、 木陰で水分を補給しつつ皆を待つ。  しばらくすると、徐々にメンバーが集まってきた。 今年は、久々にユーフォニアム・チューバの4人が揃うほか、 フルートから二人が楽器を持って参加する。 その他、トロンボーンとサックスの人も顔を見せてくれた。 そして、なにより皆が家族をつれて参加してくれるので、とても賑やかだ。 奥さんや旦那さん、そして子供達を合わせると総勢20人である。 しかも、今年は滋賀組がいない。

 毎年思う事ではあるが、合同演奏の規模は観客を含め拡大の一途をたどっている。 はじめは1000人くらいだった演奏者も 今年は3500人と考えられない数になっているらしい。 そして、観衆の数はそれ以上に伸びていると思われる。 誰もいないときは、とても広く感じられる松本城本丸跡地も、 楽器を持って移動するのさえ困難なほどに込み合っていた。 そこで、暑いとは判っていても、 少し早めに楽器を準備し涼しい木陰から 太陽を遮る物がなにもない酷暑の中央広場に向かう。

 演奏場所では、スーザフォンに囲まれて周囲が殆ど見えない状況ではあるが、 観客のどよめきから小澤征爾の登場を知る。 合同演奏での指揮は危ぶまれていたので彼の登場は会場の熱気を一気に押し上げる。 指揮台に立ち、大きくて溌剌とした声で挨拶、全く元気な翁である。 聖者の行進を演奏すると、ずれが気に入らなかったのか、 最後まで演奏しきったところで、再度初めから繰り返しありで演奏する。 酷暑の中でも疲れしらずの小中学生はともかく私としては、 随分辛いところではあったけれど翁の指揮が長く見られるという意味では ラッキーであるとも言えた。2曲目のウィーンはウィーンが終わって、 これで残すは信濃の国か期待したのも束の間、 ウィーンもフルコーラスで最初から繰り返しとなった。 立ったままの演奏なのでチューバを支える左手が少し震え始める。 それでも体制を立て直して何とか完奏、 最後の信濃の国は、別の人が指揮をして、小澤征爾は歌を歌う。

 最後に写真撮影を行い 協賛のコカコーラボトラーズ提供の生ぬるいアクエリアスが配られて解散となった。

写真提供:おかださん 文責:はせさん

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