照りつける太陽に日向は肌が痛くなるほどの猛暑の中、今年もサイトウキネンフェスティバル歓迎パレード合同演奏に参加してきました。

チョットした出来事

 松本駅からタクシーに乗り込み運転手に行き先を告げると、彼らは少しばかり困ったような顔をして決まってこう尋ねる。
 「少し遠回りになるけど、良いですか。」
 それは毎年の事であり理由は勿論判っている。歓迎パレードが始まって暫くは、松本城への道に交通規制がかかるので、最短経路が走れないのだ。遠回りとは言っても所要時間は大して変わらないのだから料金のことを気にして言っているのだろう。
 運転手は応えを待つことも無く、駅前の信号を直進する。私は頷きもせず世間話を始めたが、彼がそれを気にとめる様子はない。私の大きな荷物をみれば、松本城に行く目的は明らかだから敢えて確認する必要もないのだろう。
 車は、細い路地から中町通りを横断し一方通行の道を抜け市役所に曲がるあたりで停車した。もう少し先でもと思ったが既にドアも開いてしまったし、メーターに関する気遣いもあったようなので、運賃を支払い車を降ようとする。しかし、かさばる楽器に手間取ってなかなか降りれずにいると、そこに交通整理をしていたお巡りさんが来て、駐停車は困ると運転手に言い出した。
 だから言わんこっちゃないと内心思いながら楽器を背負う。
 すると、その荷物を見た警察官は、仕方ないかという表情になり、それ以上何も言わずに持ち場に戻って行った。この時ばかりは、自分の楽器が万能手形の様に思え、思わず苦笑してしまった。

 演奏者と聴衆で混雑する松本城本丸の人込みをかき分け、何とかいつもの場所にたどり着きメンバーの姿を確認すると、何だかホッとしたような気分になるのは、このイベントが私の中で完全に年中行事に組み込まれている証のような気がします。来るべき場所に来るべき時に来た。いつもの場所に戻ってきたという感覚とでも言ったら理解いただけるでしょうか。

 日向がどんなに暑くても、日差しを遮れば途端に涼しくなるのが松本の素晴らしいところで、木陰に敷かれたレジャーシートの上で遊ぶメンバーの子供たちは、長旅の疲れも見せず本当に元気一杯すっかり仲良しになっていました。今回のメンバーは昨年に比べると大幅に少ないのですが、それでも子供たちを含めるとおよそ倍の人数になり、着実に二世が成長を遂げている事が伺えます。YAMAHAの音楽教室に通っている(通っていた)子供たちも何人かいて、やはり音楽好きは遺伝するのだと確信するのと併せて、二世バンド結成も徐々に現実味を帯びてきたような気持ちになるのでした。

 今回の演奏は、「ウィーンはウィーン」「星条旗よ永遠なれ」「信濃の国」の3曲で、それぞれ色々と印象に残るものがありました。
 まずは、「ウィーンはウィーン」が1小節ずれて終わったのにビックリ、これだけ大人数だと前の方で吹いている木管とかのメロディが、チューバの最後列まで伝わってこなくて直前のユーフォやトロンボーンの音しか聞こえないので、最後の小節までズレている事に気が付かない。D.C.したあと、周りと演奏している場所が違っていて修正したのは確かですが、てっきり自分が間違っていたと思っていまいた。きっと中間あたりにいたホルンとかの人は、さぞかしもどかしい思いをされた事でしょう。私としても、一小節ずれたまま、これだけ見事に最後まで演奏しきったのは、全く初めての経験であり、貴重と言えば、そうかもしれません。しかも、小澤さんの指揮で・・・・
 「星条旗」は、いつもどおり遅れがちになる周囲を牽引するように、指揮にあわせて吹くと何とも自分だけが先走っているようで変な気分でしたが、途中から、どこかの先生が手を叩いて速度調整をしてくれたので、違和感なく吹けるようになりました。この暑い中、指導しているスタッフの方々には頭が下がります。本当にご苦労様です。
 今回は松本に行く前から「信濃の国」は、演奏しないで歌うことに決めていました。でも、実際歌ってみると歌詞を良く知っている一番だけはまともに歌えるのですが、2番以降は、殆ど口ずさむ程度になってしまいました。歌詞カードに楽譜がついていると、ずっと歌いやすいなとも思いつつ、来年はちゃんと練習してフルコーラス思いっきり歌えるようになろうと密かに心に誓うのでした。

 演奏が終わると、久方ぶりに石挽きそばで昼食をとり、お約束のアルプス公園に向かいました。子供たちの遊具が更に拡張された公園では、なぜか新しいトイレが異様に目立っていたのが印象に残っています。ryouma君とkahoちゃんは、大きな滑り台がとても気に入ったようで、本当に時間ギリギリまで遊んでいました。  その日はatsushi氏,yukaちゃん,ryoumaくんと浅間温泉の栄の湯に泊まり、翌朝は朝市を巡りました。様々な工芸品に関心しながら新鮮な林檎と桃、そしてryoumaくんの胡瓜を買って食し、午前中は国立大学法人となった母校信州大学のキャンパスを散策しました。
 駐車場になっていたグランド、メダカが泳いでいた生物学部の温室、理学部の小径に植えられた百日紅(サルスベリ)の花、新しくなった理学部の校舎などを色々見て回った後に女鳥羽そばで昼食です。今回は本当にそば三昧といった感じでしたが、どれも美味しいので本当に「世は満足じゃ」といった感じでした。
 最後は、例年通り土産物屋を一通り巡って〆とし、少し早めにあずさに乗りました。

 今年は、人数も少なくちょっと寂しいサイトウキネンでしたが、演奏できたことには大変満足しています。このように楽しい時間がもてるのも、毎年幹事を務めてもらっているokadaさん、そしていつも一緒に参加してくださる寛容なnakanoさんの協力によるものと心より感謝致します。昨年、今年と、ユーフォチューバは活動が少し休止しておりますが、落ち着いたら是非とも4人揃っての演奏を再開したいと思います。...とそのような事を書いていたら、電話が鳴りました。
 私の所属しているもう一つの団体から、演奏会出演のお誘いです。サイトウキネンで演奏してきて、モチベーションの高まっているところへ何とも良いタイミングではないですか。
 ということで、私も練習再開という事になりそうです。

 今度は、ぜひ4人揃ってサイトウキネンを楽しめると良いな。まぁ細く長くがモットーですから、あせる必要はないけどね。

以上、

文責 ハセサン