『ユカリ、心の記録簿。−月明かりの赤い花編−』 こんにちは。市川市役所自転車対策課の紫です。皆さん、いくら土日で空いているからって、利用者シールの貼ってない自転車を、駅前有料駐輪場に置いてはダメですからね! さて、突然ですが今日は思い出話をします。僕の同期、大真の彼女・ももかさんに僕達が初めて会った話です。 あれは今年の夏の事でした。 「皆サン、見にキテくださいネ!」 こんな片言の日本語を話すのは市川市役所・海外交流窓口課のエレナ・イエツェンスカヤさんです。帰化ロシア人です。帰化してもう長いのですが、未だに日本語はかなりアヤシイです。 でも僕達新人にも声をかけてくれる親切な人です。この間はピロシキを作って持ってきてくれました。 さて、このエレナさん。市川のサンバ愛好会に所属していて、毎年浅草サンバカーニバルに参加しているんだそうです。ああ!と納得してから、「でもなんでロシア人が南半球のサンバ?」と気付いたのはウチに帰ってからでした。 それはさておき、そのサンバカーニバルを見に来いとのお誘いです。大真が「じゃ、同期皆で行こう!」と言い出し、皆で盛り上がったのですが、仙堂だけは「そんな炎天下で!」とイヤがったので、結局男4人で行くことになりました。 浅草サンバカーニバル当日。今年の夏は随分夏らしくない夏でしたが、その日は絶好のサンバ日和(大真談)でした。家族サービスとばかり美城が連れて来た奥さんと子供2人を加えて皆で浅草まで繰り出しました。 これが凄い楽しかったんですよね。 やっぱりサンバのリズムと言うのは国籍問わずウキウキするもんなんでしょうか。 巨乳判定に夢中の大河、有明よりすげぇ!とコスプレカメラ小僧と化した涼麻、三歳の娘相手にいいパパっぷりを発している美城、「光ってやがる!輝いてやがる!」とどこか落ち着きのない大真、そして美城んちの0歳児を抱っこした瞬間からアゴをつかまれっぱなしな僕(どうやら気に入られたらしい)(困惑)。そして相変わらずあまり表情のない美城んちの奥さん。ええ、とっても楽しかったんですよね、いや本当に! エレナさんは凄い大きなフロートの上で赤い衣装で揺れてました。カルナバルの女王だそうです、ついでに胸も揺れてました。でも大河は喰らいついていませんでした。奴は日本人の巨乳ちゃんが好きなようです。 で、やっぱり大真がなんか落ち着きがないんですよ、そわそわしているんですよ。なんだ、トイレでも我慢しているのかなーと引き続き美城ジュニアにアゴ掴まれたまま、その様子を見ていたんです。
その時です。 「あー!おーまくーん!」 ん? 誰かが大真の名を呼んでます。目の前のサンバチームの色の洪水から、真っ赤な衣装を来た女の人がこっちにむかってきます。 「あ!ももかさーん!」 あ、あれが大真の彼女のももかさん?だから大真はそわそわしていたのか、と納得しつつも僕は、いや僕たちは近づいてくるももかさんにクギヅケでした。 「おーまくーん!」 ぐいんぐいんぐいん。 「おーまくーん!!」 ぐいんぐいんぐいんぐいん。 「おーまーくーん!!!」 ぐいんぐいんぐいんぐいんぐいん。 ・・・・・・サンバのリズムに合わせ踊りながら、いや腰を振りながら、いやむしろ目を覆わんばかりのグラインドっぷりでした。 クギヅケなのは僕たちだけではありません、周囲の人が皆ももかさんを見ています。 「あーとーでーねー!!!」 ももかさんは僕たちの前でひとしきりグラインドして、そしてとってもエグ・・・・・・いや、とってもキュートな投げキッスをしてくれて、そのまま踊りの波の向こうに消えていきました。 誰も声を出すものはいませんでした。 ふと気付くと大真が前かがみになってました。僕と美城は子供たちの目を手でふさいでやりました。武士の情けです。いやむしろ情操教育の為に、です。 なんだかすごいモノを見てしまいました。 カーニバルの後、衣装を着替えてメイクも落としたももかさんを改めて紹介されました。ももかさんはニコニコと気さくな人でした。だけどそこにいた僕たちは、さっきのももかさんが脳裏に焼きついたままで、何をどう言っていいのかわかりませんでした。 その後、美城んち御一行は花やしきのナイター営業に、大真はももかさんと消え、そして残された僕と大河と涼麻は、電車で帰ってきました。 僕たちは終始無言でした。 あれから随分時間がたったのに、まだ唖然とした気分です。 あるいはそれぞれさっきの映像を、どうにか脳裏から消去しようと懸命だったのかもしれません。 ふいに、涼麻がつぶやきました。 「ラフレシア・・・・・・」 ラフレシア、そうあの世界最大の花を咲かせると言われる熱帯の、花と呼ぶにはおこがましいくらいの赤黒い植物のことです。 僕と大河は顔を見合わせ、そして頷きあいました。 とてもたのしいいちにちでした。 |