新春大真当番日誌スペシャル
 『六実さんの年賀状大作戦』


※実在の人物とは一切関係ありません。





 大真当番の六実さんは同じクラスの大まみらんくん(小学3年生)がダイスキな女の子(痒)。
 けれども大まみらんくん(小学3年生)を好きになるにはライバルがたくさん。いっこうえの西れい子先輩(小学4年生)、いっこしたのちゃらちゃん(小学2年生)、学園は上へ下への大騒ぎ(違)。
 そんな六実さんの2004年も暮れようとしていた。さて年賀状はどうしよう、今年は皆をあっと言わせるものを作りたい。イケてる年賀状をつくりたい。その時ふとひらめいた、来年は酉年、そして六実さんは大真鳥の当番。あ、じゃあ大真鳥を撮って年賀状にすればいいんだわ、すごい気付かなかった、これはきっとみんなも盲点。きっとみんな年賀状をもらったら「あ、そっかー」ってなるに違いない!「スゴイアイデア!」あたしってばチョーイケてる!……六実さんはひとりほくそえんだ。
 というわけである日曜日、お父さんのデジカメを借りて大真鳥を撮影しに学校に行こうとしたら、いつものごとくリビングのソファーで大真鳥が大の字になって寝ていた。大真当番になって随分たつけれど、未だにこの鳥がどうやって小屋を抜け出して、ウチに我がもの顔で入ってくるのかわからない。まあ、それは来年考えるとして、ちょうどいいやと大真鳥にデジカメを向けた。ところが大真鳥は、はっと起きるといきなり動き出した。かなり挙動不審。ああ、そんなに動いたらピントがずれる。もー、大人しくしててよーと言うのだけれど、大真鳥は更に挙動不振にウロウロ動きまわる。うう……こうなったら奥の手だ。
 六実さんは冷蔵庫から伊達巻(ハーフサイズ)を取り出した。ちゃんと「六実の」と書いてある。六実さんはおせちでは伊達巻が大好物、毎年毎年、家族と分け合うのじゃ物足りなくて、今年はお小遣いをはたいて自分専用の伊達巻を手に入れたのだ。六実さんの計算ではお正月から始業式まで、毎日伊達巻ライフを送ることができるはず。その虎の子を大真鳥のおとりにつかうのだ。プリンがダイスキな大真鳥、きっと卵料理は好きなはず。 台所で封印をとく慎重さで伊達巻を取り出した。これぐらいの厚さなら、大真鳥は大人しくしてくれるかなぁと、断腸の思いで切る厚さを考えあぐねていたら
「ああ!」
 いつのまに来ていたのか、伊達巻の上に大真鳥がちょこんと乗っていた。しかも何故か大人しくポーズをとっている。今だ、今がシャッターチャンスだ!デジカメを撮ってきて構える六実さん。ついでにとさかもつけちゃえ!(実は準備万端)うん、我ながらいい写真が取れたと顔をあげた時、そこにはもう大真鳥しかいなかった。ああ!あっという間に食べられた!あたしの虎の子の伊達巻を!あたしの伊達巻ライフが!騒いでいると六実母が通りかかる。
「お母さん、前から気になっていたんだけれど、鳥が卵料理食べるって、共食いじゃないの?」
 そんなことはどうでもいいのー、がっくりうなだれる六実さん。イケてる年賀状への代償は余りにも大きかった。

 というわけでおめでとう2005年、元旦。早速年賀状をチェックした六実さん。
 西れい子先輩からも来ていた。見るとそこには大まみらんくん(小学3年生)とのツーショット写真が!ええ!そんなどこかの新婚カップルじゃあるまいし!どどどいうことなのー!……写真は去年の運動会のものだった。多分、徒競走が終わって、順位のついた旗に並んでいるところだ。よく見ると大まみらんくん(小学3年生)はどこかあさっての方向を、いやカメラを全く意識していない。そして西先輩は「1位」の旗を持って無理矢理大まみらんくん(小学3年生)に寄り添うように写っている(しかもでこピースで)。……なんとなく、状況が読めた。きっと西先輩は大まみらんくん(小学3年生)が徒競走で一位を取るや否や、「1位」の旗を持っている子から無理矢理その役を奪い取り、さりげに一緒に写真に収まったのだろう。すごいトリック、大人ってずるい!でもすごいうらやましい。だって、大まみらんくん(小学3年生)とのツーショットには変わらないもの……。正直、負けたと思う六実さん。
 さらにちゃらちゃんからも来ていた。驚いたことに、ちゃらちゃんの年賀状も大真鳥だった。そこで初めて自分の「スゴイアイデア」が安直で誰でも思いつくことだったことに気付く六実さん。しかもちゃらちゃんの描いた絵はすごく上手だった。こっちの方が全然イケてる……更に敗北感を味わう六実さん。
 更に更に、大まみらんくん(小学3年生)に出した年賀状が住所書き間違いで戻ってきていた。愕然。
 ま、気を取り直しておせちでも食べよう、と顔をあげたら、六実さんの分の伊達巻を大真鳥が完食したところだった。しかもお屠蘇も飲んだらしく、そのままひっくりかえってぐうぐう寝ている。いつの間に来ていたのだう、どうやってここまで来たんだろう、それは今年も謎のままになりそうだったっていうかあたしの伊達巻がー!(涙)

 なにやら不吉な暗雲が立ち込める、六実さんの2005年の始まりだった。



※実在の人物には一切関係ありません。いやほんとに!!
(すみませんすみません)(関係者各位に平謝り)


スペシャルサンクスto香鼠殿