ながれぼしに、あったことがあるかい?













ぼくのながれぼし




 流れ星に願いごとをすると願いがかなう。
 そう聞いたゆかり君は、ある晩夜空を見上げて流れ星を探していました。
「あ、ながれぼしだ!」
 でも眠かったこともあって、うっかり願いを唱えそびれたゆかり君。星はどうやら学校の裏山に落ちた模様。じゃあその星を捕まえようと、虫取り網をもってお母さんに内緒で、夜の学校にいきました。
 ところが、おちていた星はなんだか頭にみっつ星をつけた顔で身体も星型の、なんともいえない生き物でした。でも一応「ひかってやがる!かがやいてやがる!」ので、さっきの流れ星のようです。
「お前、なんだ?」
「ぼく、みらん星人」
「はぁ?」
「お空から落ちちゃったから、これからゆかりの家の子になるね」
「はぁ?」
「それにどうやら僕は君の事を気に入ったようなのでね」
「はぁ?つうかお前その形でおじさま口調にするな!キモい!」
 しかたなく、ゆかり君はそれをおうちに連れて帰りました。どうやらお空に帰れないのは本当のようです。ぽーんと放り投げると、そのままゆかり君の頭の上ぐらいにとどまって、ふわふわ浮いていますが、そこから上にはいけません。
「やっぱりお空に帰れないよ」
 しくしく泣き出したみらん星人。ゆかり君はちょっと同情しました。まあ、そういうことならうちにおいてやってもいいかな……ちょっと気持ち悪いけれど。
「おや、どうやら君も僕の事を気に入ったようだね」
「だから!その格好でおじさま口調になるな!キモ!」
 かくして、みらん星人はゆかり君ちの子になりました。でもお星様であることがバレたら大変。昼間はゆかり君と同じ小学校5年生「大真みらんくん」に化けて一緒に学校に行くことになりました。夜になると
「むみゃむみゃもう眠い」
 と、変身がとけて元のみらん星人の形になって、ゆかり君の部屋にぷかーっと浮きます。部屋の電気を消すと、その光がぽうっと浮かび上がります。
「明るくて、眠れないじゃないか」
 けれどもゆかり君はその星明かりを見ながら眠ると、何故か安心して眠れる事に気付いたのです。そういえば、いつも寝つきが悪かったのにな、変だなと思うゆかり君。よく眠れるようになったせいか、いつも低血圧で起きれなかったゆかり君が遅刻をしなくなったと学校のみんなもびっくり。でもコレはよく眠れるようになったからというよりは、毎朝、みらん星人から「大真みらんくん」に変わった大真くんが
「ゆかりー!おはようー!今日もいい天気だぞー!はいじゃあ元気よく朝の体操ー!『ぞうさーん』『おさるさーん』」と叩き起こすからです。
 まったくいい迷惑だ、と思うゆかり君。けれどもそんなみらん星人との生活が当たり前のようになっていったある日のことでした。
 いつものようにおやすみなさい、と電気を消すと浮かび上がるみらん星人の星明り。けれどもそれがいつもより高い位置にありました。あれ?と思っていったら日に日にみらん星人は高い位置にとどまるようになって、そのうち天井に張り付くように眠るようになりました。
 もしかして、と思ったゆかり君。踏み台を持ってきて、天井に張り付いたみらん星人を手に取りました。
「ワシの眠りを妨げるのは誰じゃああああ!」
「キャラ立てはいいから、つうかなんだそのキャラは」
 そして、ゆかり君は窓を開けてみらん星人をぽーんと上に放りました。いつもなら、ひゅーっとおちてきて、目の前にぷかぷか浮くはず。けれどもみらん星人はひゅーんとそのまま空の彼方へ行ってしまいました。……そうだよな、忘れていたけれど、あいつ星だったんだよな。驚くよりも突然の別れを悲しむよりも、なんだか妙に納得したゆかり君。その時
―いままでありがとう、ぼく、ゆかりのこと忘れないよ、これからもずっと見てるよ、四六時中みているよ、どうやら僕らは相思相愛のようだからね
「見なくていい!つうか俺の脳内に話しかけるな!だから中途半端におじさま口調はやめろ!」
―えー、つれないなぁ。じゃあもう一回流れようかなー
「いいから!いいからもうおちてくんな!」
 そしてみらん星人の声は聞こえなくなりました。やれやれと思ったゆかり君の目には涙が。
「……」
 変な奴だったな、なんだか変な毎日だったな、と思いました。
 でももし今度、流れ星を見たら、きっとゆかり君はこう願うでしょう。
「もう一度、あいつに会えますように」