(大まみらんくんが主人公のぼくのなつやすみが出るなら、プレステでもPSPでも買うよ!(なんですか突然))



ぼくのなつやすみ


 おとうさんとおかあさんが共働きの大まみらんくん。小学三年生の夏休みは田舎に住むおばあちゃんちにあずけられた。けれど田舎で過ごす夏休みなんてつまならない、おとうさんもおかあさんも僕のことなんかいらないんだ。古いおばあちゃんちはちょっと怖いし、トイレは臭いし、おばあちゃんのつくるご飯はなんだか色が暗い。おばあちゃんにプリンを食べたいと言ったら出てきたのは茶碗蒸し、アイスが食べたいと言ったら「みらちゃんこれで我慢してね」と冷たい井戸で冷やしたトマトときゅうり。ちがうやちがうや!とわがままを言っておばあちゃんを困らす大まくん。でも本当は茶碗蒸しもトマトもきゅうりもすごくおいしい。本当はおばあちゃんのことが大好きだから、ほんとうはすごくうれしい。けれどもだからこそ、おばあちゃんにわがままを言っちゃう大まくん。だって普段はおとうさんもおかあさんもいそがしくて、ぼくのわがまますら聞いてくれる暇はないし、僕だって子供じゃないからそんなわがままを言って困らせないよと、おとなぶっておとなに誉められて、でも僕、ほんとうはまだまだこどもだったんだ。そんな大まくんをおばあちゃんは、だまって甘やかしてくれる。暑くて眠れないよ、どうしてクーラーないのとわがままを言えば一晩中うちわであおいでくれていた。
 おばあちゃんが住む山奥の村には、大まくんと同じ年頃の子供たちがいた。おばあちゃんにわがままいうのも飽きて、おばあちゃんだって畑仕事があるときは構ってくれない。田舎にはテレビもプレステもムシキングもなくて、すっかり飽きた大まくんはひとり村に遊びに出ると、そんな子供たちと出会った。あいつだれたという顔をされたから、こっちだって構ってやるものか、いなかの子め。ほんとうは遊んで欲しいのにそんな風に意地をはったら喧嘩になった。「やーい丸顔ー!」おこってその子達を追いかけたら渓流にかかるつり橋にでた、古くてぎしぎしいうつり橋を、その子たちはひょいひょいわたっていく。大まくんは怖くてわたれなかった。「やーい!弱虫ー!」とみんなに囃されて、大まくんは悔しいけれど、泣きながらおばあちゃんちに戻った。ちくしょう、あいつらなんてポケモン全部言えないくせに!それでも毎日、子供たちの遊び場にでかけては、喧嘩になっておっかけて、つり橋のたもとより先に行けない大まくん。ちくしょう、あいつらなんかと遊んでやるもんか!ある日おばあちゃんが言った「みらちゃん、おともだちは出来たかい?」「あいつらなんかともだちになってやるもんか!」本当は、友達になりたいのに。おばあちゃんは困ったねと笑顔を浮かべてそれでその子たちは何ていう子たちなんだい?「知らないよ!あいつらの名前なんて!」「じゃあその子たちはみらちゃんの名前を知っているのかい?」「知るわけないよ!」「おかしな子だねぇ。名前も知らずに喧嘩しているのかい?」……言われてみれば、確かにそうだ。
 次の日も同じようにつり橋まで追いかけっこ。「丸顔ー!」「泣き虫ー!」あ、あいつらほんとうに僕の名前を知らないんだ、なんだかそれがすごく頭にきた、なんだか無性に頭にきた!怒った大まくんは一気につり橋をわたった、渡りきって大まくんは「丸顔って言うな!僕の名前は大まみらん!」「俺、れおん」「お、おれあかし!」「僕まゆう!」つられて何故か自己紹介。それがなんだかおかしくて、れおんもあかしもまゆうも「そういえば名前も知らなかったんだ」と、おかしなことだな、おかしなことだね、とみんなで笑いあった。
 それからまいにち大まくんは日が暮れるまでれおんたちと山や川を走り回った。都会の遊びしかしらない大まくんには何もかも新鮮で、ときどきれおんたちにはこんなこともできないのかとバカにされるけれど、でもねおばあちゃん、僕は今日一番おおきなカブトムシを捕まえたんだよ!毎日毎日おばあちゃんにその日あったことを報告する。おばあちゃんは目を細めてうんうんと聞いてくれる。おばあちゃんは何か縫い物をしていた。「おばあちゃん、何を縫っているの?」「みらちゃんの浴衣だよ」村の鎮守さまでは、お盆に夏祭りが行われる。その日は、みんなが帰省するからこの村も賑やかになる。大まくんのおとうさんもおかあさんも、ちゃんとおやすみをとって戻ってくる。
 夏祭りの日、子供たちはみんな浴衣姿で朝から走り回っていた。村の社が一年ぶりに開けられて、少ないながらも屋台も出て、川には精霊が流れされて、楽しい楽しい村祭り、夏休み。そんな夜に大まくんはひとりの不思議な女の子に出会う。おかっぱ頭の金魚の柄の浴衣の女の子。お前だれだと言うより前に、そうだ先に名前を言わなくちゃ「僕の名前は大まみらん!」けれどもその女の子は何も言わない。ちょこんと首をかしげる。うわー、すごくかわいいなぁーと思っていると、女の子がぐいっと手を引いて「あそぼ」と大まくんを引っ張っていった、二人で川原で遊んで、わたあめを買って、そして女の子に大まくんは言った「ぼくきみのことがすきだ、大きくなったら結婚しよう!」女の子はうんと言って去っていってしまった。ねえ君名前は?結局教えてくれなかった。
 祭が終わった翌日、れおんたちにつかまって、お前昨日はどこにいってたんだよー、せっかくみんなで西瓜割りとか花火とかしたのによー、え?僕昨日はお祭りにいたよ。お社の傍で女の子と遊んでいたよ?ところがそんな大まくんを見かけた子は誰もいない。そしてそんな年頃の女の子はこの村にはいないという。「きっとそれゆーれいだよ!」そうか僕はゆーれいちゃんにぷろぽーずしちゃったのかとうなだれる大まくん。でもゆーれいでもいいからまた会いたいな、だって僕あの子の名前まだ聞いていないもの……大まくんのひと夏の不思議な思い出。
 夏休みも終わる頃、大まくんをおとうさんとおかあさんが迎えに来た。「お前来年も絶対来いよな!」れおんたちとゆびきりげんまんをする大まくん。けれどもおばあちゃんと別れるときにはわあわあ泣いてしまった。おばあちゃんも泣いていた。わがままばかり言ったけれど、おばあちゃんのことは大好きで、おばあちゃんも大まくんのことが大好きだから。
 ぼくのなつやすみ、僕の小学三年生のなつやすみ。


 っていうゲームがあったら、延々とやると思うなわたし!(つうかそれもうゲームじゃなくてSSだから)。  で、このゲームには続編もあります。



ぼくのなつやすみ2


 けれども翌年から中学受験の為に塾に通い始めた大まくんは、なつやすみにおばあちゃんちに行けなくなってしまった。中学生に上がる頃には、おばあちゃんちに行くなんて子供みたいなことできないし、ましてや一番「こども」だった自分を知っているおばあちゃんに会うのも恥ずかしい。「みらんー、おばあちゃんから電話よー」電話をかけてくるおばあちゃんいもぶっきらぼうに対応して、おばあちゃんが色々なものを送ってきてくれても、「余計なことしなくていいから」とつっぱねて。そんな風にあのなつやすみはどんどん遠くなっていく大真くん。けれども本当はおばあちゃんのことは今でも大好きで。そして思い出すあの仲間たちとのたのしいなつやすみ、そして今でも忘れられないあの女の子……。


 大真くんが次におばあちゃんちに行ったのは、おばあちゃんが死んでからだった。おばあちゃんのお葬式は村でしめやかに行われた。大学生四年生のなつやすみ。大真くんは、おばあちゃんの亡骸の前でやっぱりあの時と同じようにわあわあ泣いた。気がつくと、傍にれおんたちがいた。久しぶりだと言う前に、れおんたちもおばあちゃんにはお世話になったとみんなで泣いた。
 ひさしぶりのおばあちゃんち、久しぶりの再会、れおんもあかしもまゆうも村を出ずにいた。地域の消防団に入ったれおん、村の駐在所のおまわりさんになったあかし、家業の小間物屋を継いだまゆう(そのうちコンビニにすると言っている)。たったひと夏のことだったのに、みんなみんな覚えていた。あの夏は懐かしかったなと、お通夜の火を守りながら、車座になって酒を酌み交わす大真くんたち。そういえば、あの夏お前幽霊に会ったなぁという話題に。いやアレは幽霊だったのかなぁ、だって握った手は確かに暖かかったもの、そんなつきない思い出話で夜を明かした。
 翌日の告別式、大真くんは見慣れない同じ年頃の男を見た。ひっそりと正座をしている男に、あれは誰だと尋ねると、最近村に戻ってきた一家の息子で、今は村の郵便局に勤めているという。そうか、だからちょっと垢抜けているのかとじっとその顔を見ていた。男にしては線が細い、でもきれいな奴……見覚えがある…あの、夏祭りの、女の子……っ! 彼女は、いや彼はあの夏、両親に連れられて田舎にひと夏帰ってきていたものの、身体が弱くて大真くんのように外で遊びまわれなかった。祭りの夜だけ、外に出してもらえた彼は、迷信深い祖母の影響で、女の子の格好をさせられた。昔から、身体の弱い男の子は女の子の格好をさせると丈夫になると言われていたから。
 幽霊じゃなかった、あの子はいたんだ!残念ながら女の子じゃなかった。ずっと抱いていた淡い初恋が破れたことを知った。けれども
「おぼえているよ『大まみらん』くん」
 彼に初めて名前を呼ばれて、そして彼の名前を教えてもらって
「紫……?」
 ようやく名前を呼ぶことができたことが、なんだか不思議と懐かしくて、それだけでまるで昔からの友達のようで、そしてなんだか……
「おぼえているよ『大きくなったら結婚しよう!』」
 くすくす笑う紫君。その瞬間、大真くんは初恋がまだ終わっていなかったことを知った


(※ぼくのなつやすみ2は18禁BLモノです(ええええええええ?))



続・ぼくのなつやすみ2(続なのに2)


 おばあちゃんのお葬式を終えて、「あんたが家族で一番暇なんだから」とおばあちゃんちの後片付けに残された大真くん。なつかしいおばあちゃんち、けれどもおばあちゃんはもういない。大学最後の夏休み。就職はまだ決まっていない。空虚な不思議な夏休み。あの夏と同じ夏だけれど、れおんもあかしもまゆうも遊んでくれない。幼馴染はみんなもう働いている、そんな姿を見ながらあせるでもなく、かといっておばあちゃんちの片づけをさくさく終わらせるでもなく……僕は何をしているんだろうか?でもまだここにいたいような、気がする。
「ゆうびんでーす」
 郵便局員の紫君は毎日郵便物を届けにくる。おばあちゃんが亡くなっても、あたかもおばあちゃんがいるかのように届く郵便物、届けるのは、あの日のあの思い出のあの子。半袖の制服から伸びる腕は妙に華奢だけれど、やっぱり男だよなぁと。ああやっぱりこれは失恋だ。
「ゆうびんでーす」
 関係するところには全て連絡を出したから、そろそろおばあちゃん宛の手紙はこなくなると思ったのに、その日紫君はいつものように夏のけだるい空気とせみの鳴き声を背負ってやってきた。何をするとでもなく縁側に寝転がっていたら、紫君が庭をまわってきてくれた。「ゆうびんです、大真みらんさんに」
「僕に?」
 立秋を過ぎて届いたのは、暑中見舞い。おばあちゃんからの暑中見舞い。なくなる直前にだされたそれを、大真くんのお母さんがこちらに転送してくれたのだ。見慣れた筆文字で「みらちゃんへ」そう、おばあちゃんはみらちゃんの「ん」はこうやって書くんだっけ。他愛のない、毎年もらっていた「暑中見舞い」。
「お前は、おばあちゃんに暑中見舞いを出したか?」
「え?」
「残暑見舞いなら、処暑までだ」
「処暑?」
「ついでに暑中見舞いは立秋までだ。ついでに年賀状は12月25日までにだ」
 言われて気付く……そうだ、僕はおばあちゃんに手紙をだしたことがない。
 大真くんは紫君に待っててと言って、慌てて家中をひっくり返して、官製はがきをみつけた。「残暑お見舞い申し上げます」
「これ、出していいかな?」
 あて先はおばあちゃん。そう、ここで出せば明日ここにもどってくる郵便物だ。
「なんでそれを聞く?官製はがきも封書もみんな平等に郵便物だ」
 紫君は何も言わずにそれを持っていった。
「ゆうびんでーす」
 翌日、大真くんのおばあちゃんに大真くんが書いた残暑見舞いが届いてそれを大真くんが受け取った。
 大真くんは思った。書こう、おばあちゃんに手紙を書こう。あの夏の思い出をおばあちゃんに聞いてもらおう、そして今年の夏休みの話も聞いてもらおう。なぜかそれを大真くんはいま自分がすべきことだと思った。

 あの夏はあの夏限りの夏で、この夏はこの夏限りの夏だから。


『おばあちゃん、僕は今日一番おおきなカブトムシを捕まえたんだよ!』