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ナパームスクエアVD2009
今年は桃太郎と猿雉犬でお届けします。 【登場人物】 とよちゃん…82期。 毬乃…82期。 エレナ…82期。 かつき…82期。 ほんとに読む?/読み飛ばし推奨 2月14日。バレンタインディ。 せっかくのバレンタインディやのに、今年は土曜日。 それで僕は三人を、同期会と称してランチに誘った。ほら、こうすれば僕に渡しやすいやろ?僕ってなんて親切な。あ、でも今年も義理でたのむわ。君らに本気だされても僕こたえられへんから。 それで青山のこぎれいなカジュアルフレンチのお店で、僕と、僕の同期はランチを食べる。 「なんでわざわざ土曜日に呼び出すのよ」 と、毬乃。どうもこいつはツンデレっぽいんだよな。入社当時はちっちゃくてカワイイと思ってたけど、中身はぜんぜんかわいくなかった。 「しかもドレスコード必要なお店に。不可解です」 と、エレナ。明らかに不機嫌な顔をしているけれどこれはわりと生まれつき。機嫌のいい時もちっとも機嫌よさそうに見えへんもん。見分け方は唇の形、と気づいたのは入社5年目ぐらいやった。 「まあまあ、せっかくとよちゃんが誘ってくれたんだし、ね」 と、かつき。この三人の中ではおとなしい方だし、いつもこうして場をとりなすのはかつきの役目だ。けれどもかつきはこう見えて結構ガンコだし、酒はめっぽうつよいし、怒るとこの僕でも泣くぐらいに、怖い。 入社した当時はたくさんいた同期も、今はこの四人だけ。過去最高の倍率を勝ち抜いて入ってきたエリート期と言われることに、少なくとも僕はそれをはばからない。けれどもこの三人は……。仕事はふつうにこなしているけれど、とびきりのエリートという訳でもない、仕事に生きるバリバリのキャリアウーマンという訳でもない、お局様コースというには、ウチの事業部はまだまだ上のお姉さま方も多いし。 ほんま、なんで、今、このメンツで残ってるんやろな。 ま、それはさておき。 そんなこんなで和やかにランチは進み、デザートとコーヒーが出てくる段に。 が、その段になっても肝心な、出てくるものが出てこなかった。 僕はだんだんいらいらしてきた。なんでやねん、なんで僕がわざわざこの場をセッティングしたのに、出るもの出てこないん?なんで僕はこの微妙な同期とわざわざ土曜日に出かけてきてまでランチしてんねん?しかもまたこいつら僕におごらせる気に違いないねん。 なんで?なんでー? 「なあ毬乃」 「え?」 「なあエレナ」 「はい?」 「なあかつき」 「(?)(今まさに最後の一口をほおばったとこです)」 「三人とも、なんか忘れてへん?」 「なんかって?」 「だから、今日は何の日やねん?」 「貴重なお休みを同期の誘いにつぶされた日ですよ」 「なんやその口の聞き方はー!」 「だって事実でしょ?」 「かー!揃いも揃ってなんや!今日はバレンタインデーや!女の子が男の子にチョコ渡す日やー!」 思わず叫んだ。叫んでからしまったと思った。なんや、これじゃあ僕がまるでおねだりしているみたいやん。 「ほらやっぱり」 「やっぱり?」 「そういう事なんじゃないかと思ってたんですよね」 「そういう事?」 「はい、とよちゃんこれ」 そして渡されたチョコレート。 は、なぜか一つだった。 「これ、あたしたち三人から」 「義理チョコです」 なんだかどんどん僕が恥ずかしい方向にいっている。しかもなんだ三人ともその哀れみに満ちた目は。あんなぁ、別に君らの義理チョコもらわへんでも、僕にはたくさん義理チョコくんねん、つうか本命チョコもいっぱいもらうねん。なのになんやその「同期の涼がいっこももらえないようだから同期のよしみであげよう」的な視線は! しかしそれより僕が気になったのは 「なに三人でまとめてんねん!!!」 気に入らん。何そんなとこで節約してんねん、なんや、はやりのエコって奴か? 「だって義理チョコだし」 「そんなに気合い入れたって、ねー」 「それなのに君ら三倍返しとか言うんやろ?しかもそれぞれにこれいっこ分に対しての三倍返し言うんやろ?したら僕にとっては九倍返しやねん!」 「いやそこまで誰もゆってないし」 「つうか義理チョコは日頃の感謝を込めるもんや。毬乃!僕こないだ君に誕生日プレゼントにリクエストに答えて薔薇の花束3X本贈ったやろ!」 「え?だってとよちゃんが何でもいいってゆったじゃん」 「エレナ!僕こないだ君に誕生日プレゼントに本物のだちょうの羽使ったはねぼうきあげたやろ!漫画家さんがつかうやつ!君の創作活動に必要な!」 「だからあれはなんでもいいってゆったから」 「かつき!僕こないだ君に誕生日プレゼントに鹿児島焼酎お試しセット買ってやったやん?12本セットでお試しサイズかと思いきや、ぜんぶ一升瓶で12本てどんだけてやつ!あれかて文句言わずに買うてやったやん!」 「だってなんでもいいていうから、ねえ?」 「君ら遠慮ってもんを知らんねん!!!」 一気にそこまで怒鳴った僕、あああほんとにもうこの同期というものは! しかしそこでエレナが言った。 「一つじゃなければいいんですか」 「は?」 「一つじゃなければいいんでしょ?」 毬乃も言った。 「え?」 「ちぇすとー!!!!」 そして突然かつきが吠えた。その手刀があり得ないスピードで振りおろされる。うわさっきエレナと毬乃が不自然に三歩さがったんはこのためか! あかん!殺される!!と思った時にはもうその手は三人でひとつ買ってきたチョコの上に振りおろされた 「うわあああん!なにすんねん!」 しかし驚いているのは僕だけで、三人ともいたって普通の顔をして、 エレナがしずしずとそのぐしゃ、とひしゃげた包みを手にした。 毬乃がうやうやしくそのリボンを解いた。 かつきがその箱をあけ、三人でそれを覗き込む。 「おやおや」 「まあまあ」 「なかなか」 そして、三人合わせたかのようににんまりと、満足げに笑った。 な、なに? その笑顔、なに? おびえる僕に三人が差し出したのは、 「はいどうぞ」 「はいどうぞ」 「はいどうぞ」 三人の手にそれぞれあったのは、かつきによって見事に「まみっつ」に割られたチョコレート(元々は手のひらぐらいのハート型)だった。 「これでいいんでしょ?」 確かに、三人でひとつ、ではない。三人がそれぞれ、だ。 てか、そーじゃないねん! しかしこれ以上続けると、今度は僕が「まみっつ」に割られる可能性があると判断した。それでこの微妙な同期からの微妙なバレンタインのチョコをありがたく受け取った。 「お、おおきに」 「おいしかったねー」 「ごちそうさまです」 「またこようねー」 すっかりご機嫌な三人と店を出た。ほらやっぱり僕のおごりやん。これだけで九倍返し以上の金額やで? 「これからどうする?どっか遊びいく?」 「あ、いいねー。どこ行こうか」 「今日は二月の割には天気も良く暖かいですから船でものりましょうか」 「って君ら僕の意見きかんのか」 「だってとよちゃんジェントルマンでしょ?」 「ネオダンディズムでしょ?」 「恋する男はドンキホーテでしょ?」 「なにゆってるかわからへんわー!」 勝手気ままな同期にげんなりする。 ほんま、なんで、今、このメンツで残ってるんやろな。 「……」 でもまあ、ここまできたら。 これ以下のメンツも、これ以外のメンツも、これ以上のメンツも思いつかへんわ。 なあ毬乃、 なあエレナ、 なあかつき、 したら来年は、君らから本命チョコもろうたるからな! うわあああ!!あかん、今のナシや。やっぱ無理!! ……同期って、そういうもんや、あらへんのや。 END ++++++++++ (涼さんの関西弁はちょう嘘っぱちです、ご指摘いただければ直します。あ、地の文はわざと標準語と混ぜてます) それはさておき。 星組愉快な82期です。 キャラ立ては……何を基準にしているんだか(笑)。 涼ハーレムのはずなのに全くその旨味がないところが、星組82期のいいところです。 解散なんて、信じるもんかー(笑)。 |