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ナパームスクエアVD2008
今年はぼんぼんとねえさん(日本橋のあたらしいあそび)でお送りします。 【登場人物】 ぼんぼん…日本橋のベンチャー企業家なすずみさん。関西弁。 ねえさん…築地青果市場に勤めるももかさん。いつも通り(笑)。 なんとなくつきあってる風な二人で。 ほんとに読む?/まっすぐ進む 「なあなあねえさん、なんか僕に渡すものあるやろ?」 朝からずっとこの調子で絡まれている。うっとおしいったらありゃしない。そりゃあ、確かに今日は2月14日だけど、つうかその前にアタシ今仕事中なんだけど! 「つうかアンタ仕事は?」 「今日は有給取ったんや。なあ、ねえさん、さっさと渡したほうが身の為やで」 「ない!ぼんぼんにあげるもんなんてない!」 もちろん本当は、一応は、とりあえず、用意はしてある。けれどももう渡す気なんかまったく無くなって、もうほんとこの男うっとおしい、いつかターレーで轢いてやる! 「そもそもアタシたちそういう関係じゃないじゃない?」 「なんや?今ハヤリのツンデレってやつ?僕それ好きやない」 「じゃなくて!別にぼんぼんにチョコあげる義理なんてないじゃない!」 「僕にはねえさんからもらう義理があるんや」 「は?」 「忘れたとは、言わさへんでー。この間、ねえさんのおねだり聞いてやったやん。この日のために僕そのお願いきいたんやで?」 た、確かにこの間、勧められるままに某ブランドのすっごい高いバック買ってもらった。でもそれを盾にとるなんてセコイ! 「それに、夜もねえさんのおねだり聞いてやっ」 わー!わー!それ言うのナシ!ナシ! 慌ててぼんぼんの口をふさいだ。つうかマジで今仕事中なんだけど!しかし周囲にはいつもの事とまったくスルーされているアタシ達。もうこうなったらさっさと渡して帰したほうがいい。なによもう、今日はせっかく仕事が終わったら一緒にごはんでもって思ってたのに、その時渡そうと思っていたのに……あ、あれ?なんかアタシ矛盾してる? 「はい、じゃあコレ!コレあげるからとにかく帰って!」 「なんやそれじゃあ僕がむりやりもらいに来たみたいやん、押しかけみたいやん」 「そうじゃないって言うの?」 「ん……まあええか。ねえさんおおきに、ありがとう」 そこでぼんぼんが本当に嬉しそうに笑った。このぼんぼんは笑うときゅーと目がなくなって鼻に皺が寄って、なんかもう子供みたいに笑うから、 「もう……」 結局、かなわないのかもしれない。 「ねえさん、今開けてええ?」 「子供じゃないんだから。おうちに帰ってからにしなさい」 「そっか、ねえさんの恥ずかしい写真とか一緒に入っていたらこんなところじゃ開けられへんもんな」 「ないわよ!」 「じゃ、僕帰るわ」 「……仕事終わったら、また来るんでしょ?」 「えー、でももう、もらうもんもろたしな、今日寒いしな」 「ええ?」 「嘘や。また来るで。『ねえさんがのぞむなら』」 そしてぼんぼんがアタシの手を取り口付けた。……んもう、完全にペースにのまれてる。結局やっぱりかなわないのかもしれない。 そしてぼんぼんは機嫌よく帰って行った。 そんな2月14日、バレンタインデー。 ++++++++++ ぼんぼんとねえさん、通称「煩姐」です。 関西弁がおかしいのは度々指摘されているので、言われたら直します(素)。 で、うっかり続きますが 読む?/まっすぐ進む そして2月14日、バレンタインデー。仕事もひと段落した午後はいつも通りの平和な時間、のはずが、そんな嵐はやってきた。 「んねえさぁああああん!あたしのチョコ受け取ってぇぇ!」 「おーまくん!」 大真くんは、アタシの元彼で、いや実際にリアルに「元・彼」で。NYにダンス留学に行くと、別れて旅立った彼は、戻ってきたら 「ねえさんに愛を込めてつくったのよおおお!」 「元・彼」つまりはオカマになっていた。そして何故かこのオカマがアタシにしょっちゅう会いにくるのだ。そして今日はあまつさえ、チョコて! 「何でアタシがアンタからチョコ受け取らなくちゃ行けないのよ!」 「ええ?だってぇ、今日はぁ、一年に一度、オンナノコからオトコノコに愛を告白する日でしょう?」 「っていうかアタシだって『オンナノコ』だし!」 「んもう、ねえさんどの口が『オンナノコ』ってゆってんのっv大丈夫よお、ねえさんそんじょそこらの男よりたくましいもの!あたし、大好きよ」 「全然大丈夫じゃないっ!」 「NYに行って気づいたのあたし、ねえさんほど男らしい女はいないって」 「なんか矛盾してるし!」 「あたしはねえさんを抱きたかったんじゃなくて、ねえさんに抱かれたかったのって」 「意味がわからない!」 「やだ、あたしの昔の口癖うつってるし。ま、いいわ。とりあえず食べてみてぇ」 「え?今すぐ」 「うん、いますぐ」 しぶしぶ包みを開けると、カワイイラッピングに反して中からごろっと黒い物体が 「これ、何?」 「見てわかるでしょ、ブラウニーv」 「なんか、すごい香ばしい匂いがするんだけど」 「そこかスパイスなのよおvv」 「なんか、すごい固いんだけど」 「ねえさんのアゴならそれぐらい砕けるでしょーvvv」 「はぁ?」 「いいから、食べて」 と反論した口にそのまま放り込まれた。 「!!」 「どう?おいしい?おいしい?」 「……まあ、食べられなくはないわね」 「ああん、よかったぁ。じゃ、これから紫にあげてくるね!」 「は?」 紫君とは、大真くんの幼なじみにして、その、初恋の相手だという。このオカマちゃんはNYに行ってこっちに目覚めたと同時に、自分の真の想いに気づいたのだという……ちょっと待って!それってアタシと付き合っている間はなんだったの?!と聞けばねえさんと紫はベツバラよお、と言い放つ。まあ、そんな事はとりあえずこの場では置いておいて。状況を冷静に分析すると 「ちょっと待って!アタシ毒見役?」 「毒見だなんて、あ・じ・み、ってゆってよ」 「つうかアンタ、自分で食べてないの?」 「だって甘いもの食べたら太っちゃうしぃ」 「アタシは?アタシはいいの?」 「んだってぇ、ねえさんだったら、あたしのどんな愛でも受け止めてくれると思ったんだもん。ねえさんの愛はいつだっておっきいんだもの、あたし、そんなねえさんに甘えてるってわかってるの、でもねえさんはやっぱりあたしの愛を受け止めてくれたものね!じゃ、紫のところに行ってくる!」 言うだけ言って去っていったあのオカマ……怒るよりも呆れるよりも、なんだかちょっとだけ寂しくなった。お互いに納得して別れたのだから、全然そんな気持ちは残っていないはずなのに、それでも一昨年だかのバレンタインは、おねだりする大真くんにチョコをあげたのはアタシだったはずなのに……いや、寂しいというか、なんというかすごく妙な気分。 それから二時間ほどして大真くんが戻ってきた。今度はノロケを聞かされるのかと思いきや、大真くんの顔が暗い。 「ねえさん……これ、やっぱりねえさんにあげる」 と、先ほどの紫君用の包みを差し出してきた。 「え?紫君受け取ってくれなかったの?」 すると大真くんはそのタレ目に涙をいっぱいに溜めてアタシに抱きついてきた。そしてわんわん泣いた。なんだと話を聞いてみると、紫君の職場近くまで行ったものの、勇気が出なくて渡せなかったのだという。 「……何やってんのよ、アンタは」 「だ、だってぇ。あたしだって一応わかっているもの、あたしは『オンナノコ』じゃないもの、紫につりあうカワイイ『オンナノコ』じゃないもの」 つーか、アンタも『オンナノコ』ってゆえる歳じゃないでしょ!とツッコミたかったけれど、腕の中でしおれるオカマにそうも言えず。 「あー、はいはい。わかったから、元気出して!別にアンタ『オンナノコ』じゃないんだから、バレンタインデーじゃなくても、思いを伝えていいのよ?」 ん?我ながらちょっとイイことゆったかも 「……バレンタインデーじゃなくても?」 「そう、だってアンタ『オンナノコ』じゃないんでしょ?」 「……う、うん!そうよね!そうよね!」 後で冷静に考えると、かなり飛躍した論理ではあったけれど、大真くんはすっかりその気になって元気になって 「やっぱりねえさんさすがだわぁ!もう人生の先輩!大先輩!」 「ちょっとー、おだてても何もでないわよぉ!」 「そんなんじゃなくて、ほんと感謝してるんだからぁ!だから、ね」 「え?」 突然、大真くんが目を閉じて、唇を寄せてきた。ええ? 「……今のは、感謝のキス。ねえさんあっりがとねー!」 そう言って、大真くんは軽やかに去っていった。アタシは呆然と立ち尽くす。そしてやっぱりものすごく奇妙な気分になった。だって、あのキスは元彼の大真くんとおんなじキス。いつもは甘いコロンの香りをさせているオカマの大真くんから、少しだけ、オトコの匂いがした……。 「……どーしろってのよ」 思わず、呟いた。どうしようもなくて、大真くんからもらった紫君宛の包みを開けてみた。そこには、アタシにくれたものより幾分見栄えのいいブラウニーが並んでいたけれど、味は、全くおんなじだった。 ++++++++++ そして「ぼんぼんとねえさんと、時々オカマ」でお届けします(笑)。そしてこっそりみらゆかです。 なんの前説明もなくはじめましたが、基本設定は文中に無理矢理織り込んでいる通りです。オカマは「ねえさんには愛だけど紫には恋なのお!」と主張しつつ、紫君(日本橋界隈を担当している駿脚セールスドライバー)にアタックしては邪険にされています(笑)。 ねえさんはそんなオカマと女同士の友情を育みつつ、時折見える「元彼」の片鱗に戸惑ったりするのです。 いずれオカマとぼんぼんと直接対決も見られます。 だいたいこんな感じでいいー?おごりーん? という訳でこのネタは引き続きウチか武器屋さんでこれから出てくると思います。涼百っていいよね!(お前らだけがな) |