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【正解】 大真(84期)×綺華(84期) さて、ここで突然ですが ナパームスクエアVD2006 Vol.8484 2月14日。 今日はバレンタインデー。 大まくんは待っていた。登校してから下校まで待っていた。入れやすいように下駄箱は前の日に掃除をしておいたし、ランドセルの蓋は開けたままロッカーにしまった。それなのにそれなのにそれなのにー! 大まくんは家に帰ってランドセルを置いて高速で宿題をすませると(遊びに行く前に宿題を、はお母さんとのやくそくです)、ものすごい勢いでゆかり君ちに駆けつけた。 「おじゃまします!」 ゆかり君ちに勝手にあがる大まくん。 「あら、大まくんどうしたの?ゆかりならコタツにいるわよ?」 「あ!ゆかりのおばさん、この間は御裾分けのりんごありがとうございました!おいしかったです!おかあさんがよろしくおつたえくださいってゆってました!」 礼儀正しい大まくんはきちんおばさんに挨拶をして、居間にいるゆかり君のところに行った。ゆかり君は今日は体育のある日だったので疲れてコタツで眠っていた。 「ゆかり〜〜!」 「な、なんだよ!」 「お前、今年、チョコレート!」 「ちゃ、ちゃんとしゃべれよ」 「チョコレート!バレンタイン!だから僕にチョコレートどうしてくれなかったんだよ!」 「はぁ?だっておれ男だぞ?」 「かんけいないもん!お前知らないのか?外国では男の人からも贈り物を贈るんだぞ?」 「いや、男から男には贈らないだろ?」 「かんけいないもん!だって僕ゆかりからのチョコが欲しかったんだもん!」 そういう大まくんは、クラスの女子から結構チョコをもらっているのだ。少なくとも三個はもらっているのをゆかりくんは知っている(内訳は四年生と三年生と二年生)。けれどもこのままじゃ大まくんがおさまらないのはよくよくわかっているので、仕方なく言うことを聞くことにした。 「じゃあこれ、ハイ」 手元にあったチョコを渡すゆかり君。 「うわーい!ゆかりからチョコもらったー!ってコレ、お前がもらった奴じゃん!!『ゆかり君へ、風邪なんかひいちゃだめだぞ』……」 「それ、保健の先生から」 「なんでお前だけ!」 「いや、今日保健室に行った子にはみんなくれたらしいよ」 「ずるい!ずるい!」 「じゃあこれもやるから、ハイ」 手元にあったチョコを渡すゆかり君。 「うわーい!今度こそゆかりからチョコもらったー!ってコレもお前がもらった奴じゃん!!『ゆかり君へ、早く大きくなってね』……」 「それ、お隣のお姉さんから」 「……あの、美人OLの?」 「うん、毎朝頭撫でてくれるんだー」 「……」 「まだ気に入らないのか?じゃあコレもやるよ。ハイ」 「『ゆかり君へ、いつもありがとう』……」 「それ、お向かいのお姉さんから」 「……あの、美人美大生の?」 「うん、いつも絵のモデルやっているんだー」 「……」 「まだ欲しいのか?じゃあコレも。ハイ」 「『ゆかり君へ、また遊びに来てね』」 「それ、裏の奥さんから」 「……あの美人未亡人の?」 「うん、あの人旦那さん亡くしたばかりで、それで寂しいだろうからって、お母さんに言われてよく遊びに行ってるんだー」 大まくんは何か怒鳴りたかったけれど、うまく言葉が浮かばなかった。のちに「この年上キラーが!!」と言えば良かったんだと気づくのだが、この時は無言だった。 ふと、ゆかり君の背後にはまだチョコがあった。大まくんはヤケになって聞いた。 「それは?」 「あ、いや、これは……」 ゆかり君が言い淀んだ。まさか、それがゆかりの本命チョコか?それとも人に言えないこいじの相手からもらったチョコなのか?それともまさか、それは、僕の大好きな大好きなあの子からの…… 「見せろ!」 「やだよ、うわ、大ま!やめろよ!」 大まくんはゆかり君から力づくで奪った。今日のゆかり君は体育があったのですでにエネルギーが残ってなく、あっさりと大まくんにそれを奪われてしまったのだ。 大まくんはチョコレートのメッセージカードを読んだ。 「『ゆかり君へ、いつもウチの息子と仲良くしてくれてありがとうね』」 大まくんのお母さんの筆跡だった。 「お前!僕のお母さんに何したんだー!」 「何って、何だよ!」 「僕イヤだからな!お前のことお父さんだなんて絶対に呼ばないからな――!!!」 泣きながら大まくんは去っていった。 「まったく……」 呆れに呆れるゆかり君は、それでも大まくんがチョコを全部持っていった事に気づいた。 「……疲れてしまった」 そしてまた、コタツで寝てしまった。 ++++++++++ みらゆか、というか大まみらんくん(小学3年生)とあやかゆかりくん(小学3年生)。 大まくんが確実にもらっている三つのチョコレートがどんなんだかはご想像におまかせします(そしてお返しに皆相田みつをフォーチュンクッキーをもらうんだな)(爆笑)。 |