【正解】
涼(82期)×陽色(83期)


さて、ここで突然ですが
ナパームスクエアVD2006 Vol.8283




 2月14日。
 今日はバレンタインデー。
 今年も涼さんはたくさんの義理チョコをもらってくるだろうなぁと思いながら、キッチンでわたしから涼さんへのチョコを作る。ここ数日忙しくて、こんなギリギリになってしまった。まあ、でもここ最近の涼さんの忙しさからだと、きっと今日も帰ってくるの遅いだろうし……
「ただいま」
 突然、後ろから声がした。声の主はもちろん
「すっ涼さん!」
「驚く前に、することは?」
 と、とりあえずおかえりなさいのキスをしたというか、涼さんにくいっと顎を持ち上げられて唇をつけられた。……あ、甘い。
「どうしたんですか?こんなに早く」
「早くヤツカのをもらいたかったから」
「……」
「それにね、あんまり会社に長くいるとチョコばかりもらって大変なんです」
 涼さんが指差すリビングを見ると、今年も大量にもらってきてきた義理チョコが、義理チョコと呼ぶにはおこがましい高級チョコレートの数々が……。な、なるほど。でもふと思った。本当に、義理チョコだけなのかしら?中には、きっとひとつぐらいは……
「僕の本命は、ヤツカだけですよ」
 見透かされたように、言われて顔を赤くした。
「それで、ヤツカの本命は?」
 聞くまでもないことを、ニヤニヤ笑う涼さんをもう、と軽く叩いた。
「あ、でもごめんなさい、ちょっとまだ準備ができていないんです」
「うん、いいよ。待ってる。今年は、何?」
「チョコババロアです。後は固めるだけなので……」
 バレンタインは昔から大抵手作りだ。だって、買うのじゃ涼さんがもらってくるすごい義理チョコたちに叶う訳ない……ちょっとした、わたしの意地、いや矜持と言っておこう。で、できるだけチョコそのものじゃないものを作ろうとする。だってこれから義理チョコで毎日チョコ尽くしになるんだもの……。
 涼さんが目の前の型に入った、まだ固まっていないチョコババロアに、ひょいと指を入れた。そして舐める。つまみぐいだ。
「うん、おいしいです」
「涼さん!そんな行儀のわる」
 口付けられる。ほんのりと甘い。その涼さんの手が、わたしのセーターの裾をめくって……
「ちょっと涼さん!こんなところで!」
「ちょっと、固まるまで、時間あるでしょう?」
 ちょっとて!
「それに、今夜だってそのつもりだったでしょう?バレンタインだものね」
 それにて!
 というかバレンタインかどうかなんて関係ないくせに。
 というかそれこそお行儀が悪すぎますよ!つ、つまみぐいですって何言っているんだわたし。
「じゃあ」
 ひょい、と抱き上げられる。
 ひゃあ、ともう顔を覆うしかない。
 というわけでお行儀よく、ベッドの上におさめられた。
「いただきます」
 ……ああ、もう。
 チョコババロアが固まるまでの間に、まるでチョコレートのように甘くとろけさせられる。さっきボールの中で湯せんにかけられてゆっくりとかたちを失っていくチョコレートのかけらのように。
 ……ああ、わたしのボキャブラリーまでもが涼さんにおかされている。


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 すずやつ(新婚)視点。裏の言葉で言うと「奥様はヤツカ」……いくら当日限りのイベントとはいえ、表でやっちゃいけなかったような(素)。




 遠回りをさせてすみません、それではどうぞ→かけざんだいすき。