寝言に注意。
「健生さんの部屋に上がってもいいですか?」
と言う問いに、七地家の母は快く頷いた。
後は勝手知ったるなんとやらで、さくさく上がりこんでノックをするが、そんなものは形ばかりだ。返事があろうとなかろうと闇己はドアを開けることにしている。夜ならともかく、真昼間っから不都合なことなど普通はないから(ダメなら「ダメ」と返事があるから)、七地に抗議を受けたことは無い。
案の定、七地はまたベッドで転寝をしていた。
軽く屈みこんでその顔を覗き込み、闇己は声をかけようとした。
「おい、七地…」
ところが闇己が寝顔を声を掛けた途端、七地は闇己の首筋に抱きついてぶら下がった。
体力で七地に押し倒されることなど無いはずの闇己も、中腰のところへ不意打ちでぶら下がられてはたまらずに引き倒されてしまう。
「ん〜…、ごめん〜、ゆーべ徹夜でレポート…。もうちょっと寝…」
むにゃむにゃ言いながら闇己を抱きしめて、こめかみに口付ける七地。
闇己は突如降ってきた口付けに絶句した。
「…子さん…後でご飯食べ…こぉね…」
と七地はまた寝入ってしまう。
どうやら、以前つきあっていた女性の誰かと間違えているようだ。
「おい…」
その後、七地を闇己の鉄槌が襲うこととなった。
こめんと。
七地は「振られたことは多い」と作中で言っていたが、夕香の「彼女には振られたみたいだし」発言からすると「彼女がいたことはある」ということなるので、未経験ってことはないと思う。まあ、しをりとも一夜を明かしてるしね。でも、闇己が経験済みはありえないはずだ。二人のスキンシップに対する認識の差はその辺にも原因があるような気がする。