無責任艦長タイラー


 注意。山月が無責任艦長タイラーって言ったら、とりあえずアニメの事です。その辺、原作タイラーファンの方はご容赦ください。
 わしが中学生だった頃のアニメです。放映圏に住んでいなかったので、出会いはレンタルビデオショップのアニメコーナーでした。
 借りようと思ったきっかけは、覚えていません。
 一巻借りて見て、ズブはまりしまして。その後続巻が見たくてレンタルビデオショップに通った事だけは覚えています。
 このお話を知らない方へ。
 内容は…スペースオペラ…か?ええと、要するに、どう見ても海洋艦なお船が宇宙飛んでドンパチやっちゃうような未来のお話なんだけど。カッコ良く宇宙戦争やって、勝った負けたで一喜一憂するような話じゃなくて。タイトル見れば分かると思うけど…主人公が「無責任艦長」なんだよね。
 主人公の名前はジャスティ・ウエキ・タイラー。歳は20歳。登場シーンでの彼は、まるで町をふらつく浮浪者のよう。そんな彼は、町のスクリーンで、志願兵を募る軍隊のCMを見て、出演しているアイドルの笑顔と「ノリコのお願い」という台詞につられて軍隊に入隊。運とゴマスリで入隊試験を突破し、配属された年金課でひょんな事からテロリストを退治してしまい、一躍駆逐艦の艦長に出世する事になってしまいました。ところがその駆逐艦「そよかぜ」と来たら、実は軍隊の姥捨て山。ならず者や問題児や扱い辛い猛者ばっかり。しかしそんな部下を従えて、タイラーは持ち前の強運とゴマスリと…ちょっと只者じゃない「+アルファ」の才能で、次々と敵艦を撃破していってしまう。
 まあ、大体こんなとこかな。異端な英雄ものとでも言えば良いのかしら?
 タイラーが「なんとかなるさ」の無責任っぷりで、次々勝ちぬいちゃったり、部下を飼いならしちゃったりする痛快振りが楽しいんです。しかもそれを見て、タイラーを過大評価してしまう敵軍の将達。タイラーの無責任さを見ていると、敵軍の真面目さがかえって笑えてしまうんですが。
 わしがはまったのはその痛快振りだけじゃなく、タイラーの正体不明さ。決して敵軍の将達が思っているような有能な艦長ってことはないんだけど、運やゴマスリだけでは説明のつかない、何かをタイラーは感じさせるんですよ。
 普段はタダのお馬鹿なお調子者のタイラーが、時々ぎょっとするくらい真実をつく言動をする。
 一体どういう育ち方すれば、こんなやつに育つんだろう?
 そんな正体不明さが、…山月の好みなんですよね。
 そんなタイラーの人格が、回を追うごとに段々明かされていって、クライマックスにはお約束的にきっちり英雄らしい行動をしてくれます。ですが…さんざ「何者なんだ!?」って思わせといて、タイラーがどんな過去を持つやつなのか明かされなかった(笑)
 本当の英雄になったはずのタイラーが、いつも通り無責任なハチャメチャをやらかして終わってくれた最終回。「くはぁ!まさか貴様、まだ何か隠し玉を持ってるんじゃないだろうなぁ!」そんなことを思わせてくれる終わり方が最高でしたね。
 ちなみに冒頭に言ったとおり、「無責任艦長タイラー」には原作があります。小説です。わしが読んだのはタイラー自身が主人公の第一シリーズと、タイラーのクローンが主人公の第…4?シリーズですが、特に第1シリーズにおけるタイラーのハチャメチャさは、アニメをはるかに上回っている…というか、アニメと小説のタイラーは別物かもしれん…。そうですねえ、ネタは小説版タイラーの方が高年齢向けかな。40代50代位の歳じゃないと解らんようなネタの目白押しだし。小説の方が、戦記モノとしてのセオリーやら、戦略的な兵術とかの描写がきちんとしていますしね。第4シリーズの方は、アニメ版タイラーを下敷きにしたタイラーのクローンが主人公、かな?全編通して面白いんだけど、やっぱ第1シリーズが1番勢いがあった気がするよ、作者には悪いと思うけど。
 どっちにしても、「タイラー」と言う存在の不可思議さは変わりません。どっちもめっさ好きです。こういう、本当の意味で滅茶苦茶に型破りな、スカーンと突き抜けるような非常識キャラクターって、最近いないなあ。タイラーに比べたら、「サラリーマン○太郎」とか「GT○」とかもまだ常識の範疇って気が…(汗)もちろん、そんな奴ばっかでも困るんだけど、たまにはそんな奴がいてくれると楽しいなって思うんです。

山月のはんこ