第33話「対抗授業」その後
ブラック☆スターに殴られた後、
マカはアパートに戻ってから気が付いた。
「うあ!今日の食事当番あたしじゃん。ごめん、シャワー浴びてから作るから」
「ごみくせえ飯なんか食えねえからさっさと入って来い」
慌てるマカをソウルはバスルームへ追い払う。
「湯船につかるなよ、顔が2倍になったらただでさえマズイ顔がふた目と見られなくなるからな」
ソウルの軽口に、マカはほとんど脊髄反射でマカチョップを繰り出していた。
血行が良くなると内出血が進むのは確かだ。確かだが一言多い。
「あんたも湯船は控えなさいよ、帽子が入る頭でいたかったらね…」
「了解しましたごめんなさい…」

しかしマカが風呂から上がる頃には、テーブルに夕飯が並んでいた。
「あれ?あたしがお風呂入ってる間に作っちゃったの?」
「腹減ったんだよ。その代わり明日お前作れよ」
「らじゃ!」
殴られた直後でも、ソウルはいつもマカに甘い。
「いっただっきまーす!てゆーかぁ、冷製パスタなとこがニクイね兄さん」
内出血で腫れた口内でも、つるりと食べられるものを用意していてくれている。
変なとこで異様に気がきくヤツだとマカは思う。
「…もしかして、ついでに氷嚢作ってくれてたりしない?」
ふと、『あったらいいな』と思ったものを口に出してみると、
「……フォークで人を指すな。お前上機嫌すぎて気味悪ぃよ」
ソウルがぎゅっと眉間に皺をよせた。けれどその皺の深さはわざとらしい。
マカはにやりと笑って、食べかけのフォークを置いたまま冷凍庫へ向かった。
「ビンゴ!さんきゅ〜」
ニタニタ笑いながら、冷凍庫に用意してあった氷嚢を頬に押し当てて戻ってくる。
「ほーんと、気味悪ぃ…」
「なによぉ、ソウルだって今日機嫌いいじゃん」
「まだ1段階突破しただけじゃねえか。明日もキツイんだから食ったらとっとと寝ろ」
「はいはい」
そう、明日からが本番だ。
けれど、今なら何もかも上手くいく気がする。
そんな風に、強気になる日があってもいいじゃない?

山月のはんこ


   こめんと。
 相棒という関係はいいですね。バカップルのようにただお互いを甘やかすだけではなく、楽しいものだけ共有するそこの浅い友人でもなく。一緒にしんどいとこを抜けるから、その喜びもひとしお大きかろうと思います。