「 う た 」 春。 花は沈黙。 風が来るのを 聴いている。 その花弁でもって 待ち伏せる。 花は罠。 風を捕らえる。 日溜り。 求める、 緑の枝々。 空と指先を 絡め合う。 溢れてこぼれる、光の粒に。 目を細める。 夜。 白銀の月 は 蝋の塊。 窓からついと手を伸べて、 芯を刺し、火を点ける。 夜は。 あっという間に 燃え尽きる。