未完成詩「たからじま」



たからじまへ、かえろう。
ぼくらは、そこでうまれた。
いつか、そこへたどりつくために。

そこへむかうためにいるのは、
ちずでも、ほういじしゃくでもなくて。
そらがよぶ。「かぜをかんじなさい」
たからじまは、くもがながれゆくさきにある。

いままで、なんどくつをはきかえただろう?
くつのかずも、くつのいろさえも、
もう、よくおぼえてない。
でも、たしかなことが、ひとつだけ。
そのくつたちとすごしたから、
ぼくが、いま、ここにいる。

べつのところにあるのかも、しれない、
ぼくと、きみの、たからじま。でもね。
おなじくもを、おっているうちは、
てを、つないでいよう。

あのね。
ぼくらはね。
たからさがしに、いくんじゃないんだよ。

たからものを、かくしにいくんだ。

たからものを、かくしたなら、
いつか、たびだつだれかへ。かぜをおくろう。
だからそのひまでは、ゆっくりと、まわりみち。

きらきらするたいせつなもの、からだいっぱいに、つめこんで。

たからじまに、かえるひのために、ね。

山月のはんこ