うらら(マカー)P&ぴーひゃらPの【KAITO】オールド・ラジオ【オリジナル曲】についての考察です。 「今更かよ!」と言われそうですね。 元々、曲が好きで好きで好きで好きで仕方なかったのですが、神PV【PV】オールドラジオ【手描き】が 降臨した時に思い入れが再燃して、mixiで書いたもの、の書き直しです。 この曲は物語調である割に歌詞が短いのですが、曲・演出と共に独特の世界観を雄弁に物語っています。 想像力を掻き立てられるところがこの曲の魅力。 ですから、歌詞からどれだけの情報を読み取れるのか、歌詞に基づいて出来る空想の余地がどれだけ広いのか。 この2点を確認するために書いてみました。 |
印象だけで概観すると 閉じた世界に生まれ育った主人公が、思いがけず真実の一端を父から託される。 自分が束縛されていることに気付いた主人公は、育った世界を疑い、恐れる。 一方で、父が人生をかけて何かを成そうとしていたことをも知る。 真実への好奇心、変化への希望を、主人公は人形に託す。 大雑把に聞いていると、だいたいこんなあらすじだと思われます。 「壁」「大人」の存在は、ベルリンの壁や政治的支配を連想させますし、 機械が「禁じられた技法」であることは、「生まれる前の大きな争い」「人は外では生きてはいけない」 ということとあいまって、人類が核汚染や環境汚染といった機械による滅びに瀕した背景があるように感じられます。 歌詞の中には一度も出てこないのに「束縛」を意識させられる物語です。 そんな中で、主人公は自由への第一歩を踏み出すわけです。心躍ります。 この曲を楽しむなら以上の認識でいいような気がします。でもね。 そこで満足しちゃあ解釈厨の名がすたるってもんよ!!! つまりほじくるのが趣味なんですよ。 |
歌詞から得られる情報 まず、言葉の額面どおりに受け取れる情報と、そこから発生する謎を列挙していきます。 歌詞が抽象・比喩である可能性はとりあえず横に置きます。 1:登場人物は、「僕」=主人公、「大人」、「父」、「人形」。 潜在的にだが、「ラジオの電波の発信者」もいる。 →「母」は? 2:「生まれる前」に「大きな争い」があった。 世界観の大前提らしい。 3:舞台は、「壁に囲われた町」。 「壁に囲われた町」「人は外では生きてはいけないと大人に言われ続けて」「軽々と壁を乗り越え、消えた」「四角い空の下で」 歌詞からするとおそらく、壁は四角く町を囲み、天は吹き抜けている。その外で人は生きていけないと言われている。 →外で人が生きていけないと言うのは何故なのか? 外界と隔絶された町だが、主人公は「ひとりで生きて」きて、人形を「幼い僕の顔をしていた」と表現する年齢まで育っている。 身寄りが無くても生きていける。ただし、大人たちに壁の外では生きていけないと言い聞かせられる。 →この町の「大人」はどんな存在? 4:「いたことさえ忘れていた父が死んだと報せが届く」。 主人公と父は音信不通だった。だが、ちゃんと訃報も遺言も遺体も主人公の下に届いている様子。 主人公は、「開かれ縫われ帰って来た父」の遺体をその目で見たらしい。死んでから間もなくの対面だったと推定される。 体に弾丸が埋まっていた。それが死因かどうかは、語られていない。 →父が音信不通だったのは、そしてそれなのに訃報が届いたのは何故?死んだのはいつ、死因は? 5:父は、「『荷物を引き取れ』」という「簡潔な遺言」によって、「禁じられた技法」であるラジオと人形を主人公に託した。 →「禁じられた技法」を遺した父は何者? 6:主人公は機械をほとんど知らない。 歌詞以外からの情報だが、作詞者が「機械が無くなった、ずっと未来」とコメント。 主人公はラジオを「歌う箱」、コンピュータのディスプレイらしきものを「箱に光る文字」と表現。人形も含めてそれらを「禁じられた技法」と認識している。 「次の指令を待っていた」「主人の言葉を待つ」人形に、「命令」している様子を見ると、機械が命令で動くことは理解している。 →ラジオや人形が「禁じられた技法」なのは何故? 7:ラジオの電波の発信者が壁の外のどこかにいる。 「聞いたことのない言葉」なら、壁の外から発信されているはず。 →外で人が生きていけないと言うのは嘘なのか? 8:主人公は、人形にラジオの電波の発信者を探すことを託した。 「宵闇に紛れて人形を壁の前に連れて」行くことは出来た。しかし主人公は自分では行かない。 人形は「壁を乗り越え」たが、主人公は「軽々と」したその行動を見守るだけ。おそらく出来ないからだ。能力の差の為なのか、意識の差の為なのかは分からない。 主人公は「四角い空の下」に残り、人形が誰かを連れてくるのを信じている。 →主人公は何故壁の外へ行かなかった? →壁の外へ出たあと人形はどうなった? |
もっと超解釈出来るんじゃない? 以下はもう本当に妄想のレベル。 謎に対して、考えてみたことを挙げてみます。頭固いからなかなか定石から離れられないんですけどね。 思い浮かんだらちびちび足してみるかもしれません。 「母」は? ■「ひとりで生きてきた」と言っている以上、少なくとも幼い時にはもういなかったのでは。という以上の情報なし。 ■父と音信不通になる前にいなくなったなら、父子家庭の時間がある分、父との絆は強かったことでしょう。 ■父と音信不通になった後なら、母は父を探しに行って父と同じく撃たれたのかも。 ■もしくは父と音信不通になったせいで、母は病気で倒れたのかも。いたことさえ忘れたくなりそうな出来事です。 ■生死不明なら、生きてるかも。壁の外にいるかもしれない。ラジオ電波の発信者だったり…? 外で人が生きていけないと言うのは何故なのか? ■「生まれる前の大きな争い」のために、人々が壁の中で生活するようになったようだ。 ■壁は国境?しかし、敵国から身を守るためだとすると、「人は生きてはいけない」という言葉に沿わない説明。 ■未整備の荒野なので生活できない?出るくらいなら大丈夫そうなので、「宵闇に紛れ」ないと近づけないようにするほどの理由にならない。 ■致命的な汚染を防ぐための壁?天が吹き抜けの壁で防げる汚染とは何だろう。核か疫病か地雷か? ■壁は、町の人を護るためのものではなくて、隔離するためのものだったりして。 この町の「大人」はどんな存在? ■色々な人をひっくるめて大人と呼んでいるのだろうが、町はどんな体制で管理されてるんだろう? ■子供が壁の外へ出ないよう言い聞かせる一方で、「ひとりで生きて」いける町を保ってもいる。 ■独裁的支配があるのだろうか、それとも自治組織に近いのか。 父が音信不通だったのは、そしてそれなのに訃報が届いたのは何故?死んだのはいつ、死因は? ■音信不通だった間何をしてたのか? ■「禁じられた技法」を所持していた父には後ろ暗いところがありそうだが。 ■壁の外に人がいることを知って放浪していたなら→訃報が届かない。他の集落に辿り着いたなら、主人公に遺言する必要はあるか? ■逃亡・雲隠れしていて、発見されたとしたら→「いたことさえ忘れ」られるほどの期間、音信不通になるだろうか? ■「禁じられた技法」を持っていたなら、独裁にせよ自治にせよ父を幽閉する理由になると思う。 ■主人公は遺体を見た様子。でも実は冷凍保存されてて死んでから年月が経っていたりしないだろうか。 ■弾丸が死因だとしたら→逃亡中発見されて撃たれたか?幽閉しておくのに都合が悪くなって射殺か? ■弾丸が死因ではないとしたら→弾丸を体の中に抱えたまま、やはり何をしていたのやら…。堅気の生活は絶対してないと思う。 「禁じられた技法」を遺した父は何者? ■代々密かに「禁じられた技法」を受け継いできたとか。 ■主人公は機械をほとんど知らないが、壁の外にはラジオの電波を発信している人がいる。父は、壁の外からやってきた人かも。 ■父は、壁の外に人がいることを知っていた。簡潔な遺言は検閲をかいくぐるためか。そこまでして父は何かを諦めなかった。 ラジオや人形が「禁じられた技法」なのは何故? ■多分、「大きな争い」が原因でしょうけれど。 ■人類が衰退するに連れ、原料不足・技術者不足で自然に廃れたか。 ■取り返しのつかない被害を出して、徹底的に禁忌として扱うようになったか。 ■町を支配しているごく一部の人間が、支配力の維持のために独占しているからか。 外で人が生きていけないと言うのは嘘なのか? ■外に人がいることは確か。可能性は絞られてくる。 ■政治的情報操作で、真実は町を支配しているごく一部の人間しか知らない。この場合なら、壁は国境である可能性がある。 ■嘘をついているつもりはないかも。この町の他に人が住んでいる地域が無いか探したけれど徒労に終わったなどの理由により、これ以上の犠牲者を出したくないといった絶望感や退廃的な諦念に捕われているとか。 主人公は何故壁の外へ行かなかった? ■「彼はいつかつなぐだろう、断ち切られたすべてを」と語っている主人公。「すべて」をつなぎたいらしい。 ■主人公の望みは、自分ひとりが自由や真実を手に入れることではないのでは。 ■父の目的も、自分ひとりのためのものならば、息子に遺言を残したりはしないだろうし。 ■主人公は、一人で壁から逃げ出すより、壁の内側から人形と人形が連れてきた人々を迎え、壁をなくし、町そのものを解き放つために残ったのでは? 壁の外へ出たあと人形はどうなった? ■こればっかりは理詰めではいかない。でもたった一つの命令を一途に守って、やり遂げて帰ってくるって信じたいな。彼は自由と希望の象徴なんだから。 |