山月家の同居人たち
そのいち。
ぼけらーっと窓の外を眺めている、らしい。
ん、やっとこっちに気づいた。
調子はどう?新入りちゃん。
我が家には慣れた?
「ぼちぼち。」
柳田(やなぎた)りのん。通称「ナギ」。
ボークス社製スーパードルフィー13少女リノン。
公式サイトで一目ぼれした山月が、完売情報に衝撃を受け、
半ば自棄になって突撃した直販店にいた。
(ある意味それを期待して新幹線に乗った節はある)
グラスアイを16mmのゴールデンロッドに
入れ替えた他は、どこもいじっていない。
「うそこけ、おめー。がさつですぐメイクはげらかすから、
そしたらメイクしよーとか、ウィッグ乱れたらお湯パーマで
アレンジしよーとか言ってたべさ」

…山月の訛りがすでに感染している。
そのナリで東北弁はギャップがありすぎるんではないのか。
まあ、正直言うとコスプレ衣装作って着せようとか目論んでもいる。
多少残念なくらいがこちらとしてはつきあいやすい。
黙っていればやはり美少女。生まれの良さがにじみ出る。
明かりの効果もあるが、ヘッドが左右非対称なので、
横顔が右と左で全然印象が違う。だから彼女に惚れた。
能の小面(こおもて)という少女の面には、月・雪・花の3種類がある。
花は左右対称だが、月と雪はわざと鼻の形を非対称にしてある。
どちら向きの横顔を印象的に見せるかで使い分けるのだそうだ。
実際にどれほど違うのか見たことはないけれど、
そんな美的技術に心が引かれる。
「おめーの美的感覚、ちょっと変でね?」
女の子のそういう無造作で無神経な格好とか仕草が好きなんだよ。
いいじゃないか、似合ってるぞ。
「まあ、つきあってやっから、早く私の相棒と小道具揃えれ」
…うん、すまん。まずカメラ三脚だな。
お前の趣味、写真撮ることだもんな。
相棒はミニスーパードルフィーを自力で組み立て・メイクしようと
思っているので、かなーり気長に待ってくれると助かるんだが。
「相棒…相棒…来たらどんな写真から撮ろっかな…」
…おい、話聞いてんのか?
山月に似て、すぐ自分の世界にダイブするヤツだな。
すぐぽや〜んとした顔に……っは!!
つうことは山月もこんなしまりの無い顔をしょっちゅう
さらしてるってことか!? ナギならともかく、
私の造作でそれはまずい。気をつけねば…。
平成21年の夏、2匹の子猫を拾った。
ダンボールの中で声が枯れるほど鳴いていた。
雄と雌のうち、雄の方は、姉のつてで貰われていった。
雌は山月のもとですくすく育ち、今こうして元気に暮らしている。
毛色が淡茶なので「ちゃあ」と名付けたのだが、
鳴き声がやたらと甲高く、「ちゃあちゃあ」と聴こえる。
違うんだ、それは名前の由来じゃないんだ。
「どっちでもいいわよお。あたしの可愛らしさに影響はないのよ〜」
毛並みがつやつやでふかふか。
ナギなら腹をソファにできそうだ。
となりのトトロのメイみたいに、ふかふかの腹で寝てみたい。
だがこやつ、なかなかじっとしていてくれない。
もっと撮りたかったのに、この後すぐに布団から飛び出した。
「私はいいんだけども。ハンカチ着せるとか貧乏人の子供の遊び
みたいなの、さらして大丈夫なわけ?」

なあに、このサイトの中では失うものなんざないね。
三つ子の魂百までってことで、
リカちゃん人形で遊んでた頃の気分が全然抜けません。
だって今たんすの中に奇麗過ぎて使えないハンカチが
いっぱい眠ってるんだもん。
いずれこれを材料に服縫うかな。
でもって、最後の同居人はここにいる。
最も古参の同居人にして、我が家の黒一点。
彼だけが、専用個室を持っている。
その名もトラディッショナル・ベタ。青い。
そして喧嘩っ早い。だがちゃあが怖いらしい。
「ちょ、ちょ、ちょ、山さん。同居人増やすのはええけど
わしのプライバシー、いやむしろ命はしっかり守れよ!?」

まあそう言わずにハーレムを楽しめよ。
「どうせハーレムなら同族がええわい!」
野郎連れてきたらズタボロになるまで喧嘩するだろうが。
「それが本能じゃい!ワシの嫁連れて来いと言ってんじゃろが!」
いや〜…悪いけど生まれた稚魚の面倒は見れんから。
…ナギ、ものすごい乗り出してベタを見てるな。
ウィッグボチャンさすなよ?
「青いお魚…奇麗…」
「じょ、嬢ちゃん、あんまりガン見せんでくれんか。恥ずかしい…」
「なによ〜、愛想のない。あんまりイケズするとお仕置きするわよ?」
「おまえの場合、仕置きのレベルと違うじゃろが!
恥ずかしいどころか命の危険しか感じんわ!顔突っ込むなああああぁぁあ!」

ちゃあはその調子で実家の老猫にもちょっかい出してるからな…。
流石に普段は水槽に蓋して台の上に乗せてますよ。
ナギはそんなやりとりをのほほんと観戦。楽しいらしいです…。

そんな感じの我が家でした。

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山月のはんこ
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