サラワク・コラム
〜サラワクで考えたこと・感じたこと・気づいたこと と 写真〜


【 5 2010.02.01 】 「ムチの思い出」
ムチの思い出
サラワクのシブという町の夜店で、懐かしいものを見つけた。ちょっと写真では見にくいが、左下に写っている。これはトウヤシでつくられている「ムチ(鞭)」である。トウヤシは漢字で書くと「籐」(「藤」とは違います)。籐は蔓性のヤシで、ほかの木に巻きつきながら光を求めて成長する。そのため大変強く、長く粘りのある繊維が得られる。日本でも籐を使った家具やゴザなどを目にすることができる。この籐ので作られた鞭である。マレーシアには「鞭打ちの刑」がある。新聞を読んでいると「禁固2年、および鞭打ち6回」といった記事を目にすることがある。たった6回?と思うのだが、聞くところによると、バットのような鞭で、尻を鞭打つのだが、3回と意識がもたないそうだ。刑には医師が参加し、継続できるかどうか一度一度確認しながら行われるそうだ。

私も「鞭打ち」の経験がある。小学校4年生から6年生にかけて親の仕事の関係でシブに住んでいた。当時(今でも)シブには日本人学校などなく、私は地元の小学校、しかも中国語で授業が行われるクラスに入学した。授業の内容はほとんど理解できず、英語、数学、理科は何とかなったくらい。宿題が出されたことも分からず、忘れていくと、その罰として「鞭打ち」をされた。鞭は直径1センチくらい、長さ60センチくらいの籐で、よくしなる。それで手のひらを10回くらいたたかれるのである。かなり痛い。しばらく痺れが続く。「罰」が重いときは尻をたたかれることもある。

最近の学校では鞭打ちはずいぶん規制されてきたようだ。宿題を忘れたくらいでは鞭打ちはできず、モラルに反したこと(たとえば嘘をついた、盗みをしたなど)、しかも校長先生のみに限られるという。

国際的な人権擁護団体からは「人権侵害」と批判されることもあるマレーシアの「鞭打ちの刑」は、かなり犯罪抑制に効果を発しているとも聞く。私にとって鞭の思い出は、今となってはそんなに悪いものではない。



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