第 9話 :「何かが違っている」

<update/2001/8/19>

 

この話は会社の先輩が実際に体験した話です。

 

今年、とあるアウトドア関連商品の撮影のため、

赤城山にある、沼地にロケハンに行った時の事です。

 

朝靄もかかる、朝5:30〜6:00くらいだったそうです。

ロケハンの一行はアングルを決めるため

沼地を見下ろす高台に上がっていた時です。

 

 

カメラマンは高台の、ある場所へ行き

先輩とクライアントの担当者は少し離れた場所で

沼地を見下ろしていました。

距離は約150m〜200mだったそうです。

 

 

下を見下ろしていると、何処からともなく

人がやって来たのです。

 

先輩たちはは、その人に気づき

少し離れた所にいたカメラマンの方を見ると

カメラマンも気づいていて、頷いていました。

 

片足を少しビッコを引くような感じで歩き

手にはコンビニの袋みたいなものを

下げていたその人は、

沼地の淵を歩いて行き、森の中へと

消えていきました。

 

カメラマンも

少し離れた所にいた

先輩とクライアントの担当者も

 

3人が確認しています。

 

確かに誰かが通り過ぎた事を。

 

そして、暫らくするとその人は

今度は沼地の横の岩場で

膝小僧を抱えて、沼地を眺めていたそうです。

 

ふと気づくと、もうその人はいなくなり、

二度と姿を見せませんでした。

 

先輩たちとカメラマンは互いに歩み寄り

 

 

「見たよねぇ」

「見た」

 

 

と言葉を交わしたものの

 

3人とも

 

何かが違う

 

と思っていたのである。

 

確かに人が通った。

 

でも何か見落としたものがある。

 

なんか違和感があった。

 

3人とも見た。

 

3人とも感じていた。

 

一人だったら見間違いもあるだろう。

 

でも、

 

違う場所で、

 

同時に、

 

3人が、

 

見て、

 

感じた。

 

 

 

 ある筈のものが無いのである

 

 

 

その何かというのは、

 

その人には、なんと・・・。

 

 

 

 

 

顔が無い

 

 

のであった。

 

顔が無かったので違和感があったのだ。

 

3人が見たのである。

 

 

「その顔は、裸電球の様な感じで

ツルッとしていて、紅茶のような色を

していた」のである。

 

 

そいつが

コンビニの袋を持ち、足をビッコを引き

沼地の淵を横切り

岩場で沼地を眺めていたのである。

 

 

最初この話を先輩から聞いたとき

私は笑ってしまいました。

酒の席の笑い話だと。

 

 

しかしその後カメラマンから

同じ話を仕事中に聞かされた。

 

よく考えて欲しい。

 

3人なんだよね。

見たのが。

 

一人は会社の先輩。

一人は社外のカメラマン。

もう一人はクライアント。

 

この3人が結託して

嘘をつくだろうか?

 

3人が同時に

見間違うだろうか?

 

3人が

同じ夢を見るだろうか?

 

確かに不可思議である。

経験から言えば、有り得ない話である。

でも、この灰色の事象を

私は、信じたい。

 

そして、この話を聞いて

私はこう結論づけた。

 

 

 

妖怪はいる。

 

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