第 8話 : 「カレーは何処へ行った」

<update/2001/8/19>

 

この話は、数年前に私の同僚が職場であった怪事件です。

 

私の会社は7Fにあります。

 

その日、同僚は仕事で帰りが遅くなる予定でした。

夜9時過ぎには、残業していた社員が

一人減り、二人減りとなり

とうとう二人きりになってしまったそうです。

 

同僚はお腹がすいてきて

デリバリーの弁当でも頼もうかと思い

残っていたもう一人の上司に「頼みます?」

と聞いたところ「いやもう帰るから」との返事。

 

デリバリーの弁当というのは、普通

2つからとか幾ら以上頼まないと

持ってきてくれません。

 

大食いの同僚は、

「まぁ2つ頼んで食えなかったら家に持って

帰って温め直せばいいや。」

と言う事で

 

ハンバーグ弁当

カレー弁当を頼んだそうです。

 

そのカレー弁当がその後

彼を恐怖のどん底に陥れるという事も

知らないで・・・。

 

そうこうしている内に上司は

「お先に」と言い帰宅をしてしまい

とうとう会社には、

 

彼一人の状態

 

となったわけです。

 

私の会社には夜になると、社内を掃除するオヤジと

灰皿を掃除するオバちゃんがやってきます。

しかし、入ってくれば

 

必ずわかります。

 

弁当が届きました。

 

さっき頼んだ「ハンバーグ弁当」と「カレー弁当」

 

同僚は仕事の区切りがついたら

食べようと思い、それらの弁当を

とりあえず、すぐ後ろにある小さな打ち合わせの

小部屋に置く事にしたのです。

 

彼は、どっちを食べようかと両方の中身を確認し、

カレーのルーをちょっとだけ舐め、味の確認をし、

どっちも美味そうだと思いながらも

小部屋のテーブルに2つの弁当を置いたのです。

 

後で食べようと思い・・・。

 

ハンバーグ弁当は、普通におかずとご飯が

別々に入っているもの。

 

カレー弁当は、ご飯が入っている容器が

ひとつと

カレーのルーが

カップ味噌汁みたいな容器に

別に入っているもの。

 

ここで仕事に戻った同僚の

位置関係を教えておきます。

 

ワープロを打っていた同僚の後方に

会社の出入り口。

その延長線上の真ん中右側に

小部屋。

 

彼は後に語っています。

 

「絶対に誰も入ってきていない」と。

 

さて仕事も一段落して、弁当でも食おうと

小部屋に戻った同僚は

弁当が置いてある机の上を見て何か異変を

感じ取ったのです。

 

おやっ?

 

ハンバーグ弁当もカレー弁当もある。

 

でもと思い彼はカレー弁当の

カレーのルーの容器を手に取ったのです。

 

次の瞬間彼は自分の目を疑ったのです。

 

なにがって?

 

カレーのルーの容器のふたを開けると

なんと

 

 

 

カレーのルーが入っていない。

 

 

 

この不自然な事の意味が解りますか?

思い出してください。彼は

 

<カレーのルーをちょっとだけ舐め、味の確認をし、>

 

してるんですよ、確認を。

ルーが容器に入っていた事。

 

ハンバーグ弁当のおかずもある。

ハンバーグ弁当のご飯もある。

カレー弁当のご飯もある。

カレー弁当のルー用の容器もある。

 

しかしである!

 

入っていたはずの

ルーだけが無いのである。

 

同僚はその時きっと

なにが起こったのかさえも

解らなかったでしょう。

 

もしも深夜の社内に

同僚が気づかないうちに誰かが入ってきて

しかもとってもお腹がすいた泥棒が

弁当があるのを見つけたらどうします?

 

もちろん弁当をそのまま盗むでしょう。

 

 

ルーの容器ごと持っていけば良いのに、

カレーのルーだけを何か別の容器に

入れなおして持っていったのでしょうか?

発覚を遅らせるために?

 

 

それとも、どうしてもカレーのルーが食べたくて

その場でルーをイッキ飲みしたのでしょうか?

 

 

 

そんな奴、絶対にいない。

 

 

 テーブルの上には、ルーが数滴転々としていた・・・。

 

いまだに謎である。

 

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