第65話:「陽の当る場所へ 〜PROMISED LAND〜」

<update/2004/06/05>

 

 

約束された場所 「Promised Land」

あなたにとっての 「Promised Land」 があったら行ってみたいと思いませんか?

普通は思うよな。

 

 

 

唐突ですが、俺は腕時計をしてなかった。

 

別に持ってないのではなく、

何年も前に携帯電話を持ち始めた頃、

携帯電話の画面で時間の確認をしていたら

何となくしなくなったのだ。

 

しかし、

 

数ヶ月前に、腕時計が欲しくなっちまった。

 

それも、堪らない位に。

そう、堪らなく欲しくなっちまったんだよ。

 

 

俺が持っている腕時計は、全て革ベルト式のやつで、

なんて言うのでしょう?金属のチェーン式のやつを

持っていなかった。(ロレックスとかみたいなやつ。)

 

腕が細いので似合わないだろうと思っていたのだが、

そのチェーン式のやつが堪らなく欲しくなっちまったのである。

 

 

で、買おうと思ったのだが、

 

いわゆる、街のファッション・リーダーでもあり、

男っぽい俺としては、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ブランドなんて関係ないぜ。

 

 

洋服だろうが電化製品以外俺は、

ブランドなんてモノには全く興味が無い。

 

どんなに無名だろうと、全く気にしないのである。

ただし、いくら気にしないといっても、

 

「ROLAX」とか「OMUGA」とかさぁ、

 

明らかに、「そりゃないぜ」と言いたくなるようなものは、

いくら俺が、街のファッション・リーダーであっても、

いただけない。

 

とは言っても、数千円で売っている

その辺のバッタモノで俺は充分満足するのですよ。

 

そんなかんだで、数ヶ月前の仕事中、街を歩っていると

とある駅前で路上に露店を開いて

バッタモノの時計を売っているじゃありませんか。

 

まさに街のファッション・リーダーな俺に

打って付けの店である。

 

買う気満々で、路上の露店に近づくと、さらに

 

「千円でいいよぉ〜、千円で!」

「全部、千円だからねぇ〜!」

 

なんとも魅力的な掛け声が。

 

その時点で俺の買う気度 200%

もう買ったも同然です。

 

出店のテーブルに無雑作に並べられた腕時計を品定めしてみると

「¥10,000」と値札が付いた時計が沢山ある。

 

そこで、あの魅力的な掛け声がまたかかる。

 

「千円でいいよぉ〜、千円で!」

「全部、千円だからねぇ〜!」

 

まぁ、こんなバッタモノ、適当に値札付けてんだろうけど

千円だったら壊れたって安いもんだと思い、

 

買う気モード全開で、全てを見失っていた俺は

「Polo Team」とか、

あまり見かけないロゴが書かれた

腕時計を手に取り買った。

 

 

あぁ、買ったさ。

あぁ、買っちゃったっさ。

 

 

「これね」と商品と千円を売り手に手渡した後、

売り手が「こちらの商品ね!ありがとうございます。」

といった後、こう付け加えやがった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「千円値引きに

なりますので、

あと、

8千円戴きます。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

はぇ?

貴方様は今、なんとおっしゃいましたでしょうか?

 

 

 

 

 

 

 

そして、畳み掛けるように売り手側がこう付け加えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お客さぁ〜ん、

1万円の物が

千円で買える訳

ないじゃなぁい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

やられたっ!

 

 

完璧に買う気満々で自分を見失っていた俺。

俺とした事が、こんな古典的な詐欺に騙されてもうたっ!

 

 

そして、推して知るべし押し問答が有ったのだが、

3人いたその売り手、どう考えても

「プラダ」や「フェラガモ」「シャネル」「ルイ・ヴィトン」に

いるような、お客様のクレームに真剣に耳を傾けるタイプじゃぁ〜ない。

 

 

逆に、

これ以上文句を言おうものなら、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おいこらぁ、

なにイチャモン付けてんだぁ〜

あぁ〜?、こらぁ」

 

と凄まれる事請け合いの面々とお見受けするため、

客であるはずの俺の方が、なんつったって分が悪い。

 

しかも、露店で商品を品定めしていた他の客は、

俺との押し問答なんてモノには、全く感心を示さず、

普通に品定めしている。

 

 

 

 

 

お前らもしかして、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「サクラ」ッスか!?

 

 

 

 

 

やられたぜ。

 

まぁ、こんな露店で腕時計を買う気満々になってた

俺にはダメ出しだろうが、

 

こんな状況もなんなので、

なんだかんだ言って、結局五千円で手打ちとなった。

 

 

 

そして今では、毎日俺の腕にされている訳だが、

しはじめた当初は、普段腕時計をしていなかったためか

それに気付いた人たちから少々の注目を集めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何?これ?」

「安っぽ・・・・・・」

「こんな時計、どこで売ってるんだぁ?」

 

 

と、まぁ散々な言われ様だったのだが、

 

別に何と言われようが、

バッタモノとわかってて買っているので

俺的には気にしないのだが、

 

 

 

 

でもさぁ、

でもなぁ、

でもよぉ、

 

こんなショボイ腕時計にだって、

モテはやされるという、

 

 

 

間違いなく

「陽の当る場所」

ってなのがあるんだよ。

 

 

 

 

腕時計だけじゃない。

 

見てくれの悪い俺でさえにも

陽があたる事が約束された場所。

 

 

ショボイ男が、

ダンディーで、お洒落なナイスガイとなる事が

 

間違いなく約束された場所。

 

 

 

 

そこでは、

お気に入りの嬢が横に座り

酒を飲みながら徐々に俺に陽が当っていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

自分の年齢を言えば、

「いつも言ってるじゃぁ〜ん、

全然見えなぁ〜い!って。

若ぁ〜〜〜〜〜〜〜い!」

となり、

 

 

 

 

 

 

 

くたびれた一張羅のスーツも、

「今日の健地蔵さん渋くて

似合ってるぅ〜〜〜」

となり、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その辺で買ったネクタイも、

「チョー、センスいいよねぇ〜

私、こういうセンス大好きぃ〜」

となり、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

紳士服の青山で買ったボタンダウンのYシャツも、

「チョー、カワイイぃ〜い〜」

となり、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、

あのバッタモノの腕時計、

「Polo Team」でさえ、

普段、腕時計をしていなかったため、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうしたの健地蔵さん?

腕時計なんかして!

どっか違うお店の女に

貰ったんじゃないのぁ〜〜?

あやしぃ〜〜〜いぃ〜〜。

 

と、ジェラシーまで引き出す

最高のアイテムと化すのである。

 

 

俺の身に付けているもの全て、

そして、俺自身に

「陽の当る」事が

間違いなく約束された場所。

 

 

 

 

 

そう、

そこは俺の

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「PROMISED LAND」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

22:00以降、

1時間¥6,000−

延長30分¥3,000−

 

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