第54話:「Can you speak English?」

<update/2003/02/23>

 

 

今思えば、「英語はちゃんと勉強して喋れるようになっておくんだった」と後悔するのだが、

それにしても外人ってなんであんなに声がでかいんだろう。

 

 

何故かはわからないが、俺はたまに仕事中の路上や駅構内で、

外人観光客に声をかけられる事が多々ある。

まぁ、声を掛けられると言っても「道」や「駅」を聞いてくる

程度なのだが、アメリカ人は勿論、韓国・中国人だろうが、

中近東の顔立ちだろうが、全員「英語」で聞いてくる。

 

俺はこの時点でムカツクのである。

 

だってな、よく言うけど、

日本人は海外に行った時になるべく、その国の言葉で

道行く人に何かを尋ねようとガイドブック片手に努力するわな。

「だったらお前らも、日本に来たのなら片言の日本語で聞いてこいっ!」

ってな気持ちになる訳ですよ。

 

でもね、それは母国語が「英語」の連中に対してで、

それ以外の国の人たちは、「英語」以外に「母国語」がある訳で、

 

「英語が世界の共通語」みたいな世の中の流れがある以上、

「母国語」以外に、

「英語」を会話出来る程度の語学力を身に付けているって事だよな。

 

それを考えると、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺って、小ぃせぇ。

って、思っちゃうんだよな。

 

 

だからいつも、信号待ちの横にいる外国人観光客や

電車に乗り合わせた外国人観光客いる度に、目を合わせないように

 

 

 

「絶対、俺に何か聞いてくるなよ」と祈るのである。

 

 

 

 

 

 

ただ、そんな時に聞かれても、「聞き方」ってな事がある。

 

例えば、

「Excuse me,Can you speak English?」とか

「Excuse me,Mr?」とか、聞かれりゃ

 

 

「Sorry,I can not speak English.」とか言って

なんとかその場を回避する事ができる。

 

 

 

「絶対、俺に何か聞いてくるなよ」と思いつつ、

「聞かれたらどうしよう」と構えていれば、

聞かれた時には、何とかなるもんだ。

 

 

 

 

ところがだ、

そんなある日、俺の後ろの方からこんなでかい声が聞えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「Excuse me,・゙。シ・?・ァ・鬣ケ、ハオ - taxi ・゙。シ・?・ァ・鬣ケ ?」

(注:↑文字化けじゃないです)

 

 

 

 

 

 

そこは、東京は新宿駅前の西口ロータリー。

 

俺は、仕事の目的地に行く為、ロータリーに数あるバス停の中の

自分が乗らなきゃいけないバス停を探している時だった。

 

その声に反応して、後ろを振り返ると、

中近東系の母子が、明らかに、俺の眼を見てる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺か?なぁあんたら、今の言葉は俺に言ったのか?」

(俺の心の叫び)

 

 

俺の視野には入っていなかった角度から、

いきなり、しかも「俺が英語を喋れる」と思い込んだように

完全に無防備な俺に声を掛けてきたのだ。

 

 

 

 

しかも、間の悪い事に、バス停でバスを待っている

25人くらいの列が、その声に反応して、俺に注目しやがった!

 

「英語で話し掛けられた日本人サラリーマンが、どう出るかのか。」

興味津々と言った所だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺、「やべぇ」

「Excuse me」と「taxi」しか解んなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

でも、そんな一瞬の出来事にも臆せず、

それだけ解れば、充分です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「すみません、タクシー乗り場は何処ですか?」

って聞いてきたんだろう。

 

意訳は、完璧。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺が英語喋れると思ったような聞き方で

道を聞いてきた外国人観光客の、母親。

 

 

 

 

 

 

「横で、早く教えてよとガムをクチャクチャ食ってる

生意気そうな中学生くらいな、息子

 

 

 

 

 

 

「どんな対応するのか興味津々な

バス停で待ってる、日本人

 

 

 

 

 

 

「無防備であったが故に、

なんとか英語が解っているように平静を装い

タクシー乗り場を探している振りして

頭の中で、単語探している、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

言ってやさ、あぁ言ってやった。

 

 

タクシー乗り場を探しているそいつら母子に、

俺は、指で示しながら、

自信満々にこう言ってやった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「Over there!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガム食ってるガキが言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「Thanks」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Can you speak English?

 

img16.gif

[戻る]


Copyright(c) 2001 Marvelous Melancholy.All right reserved