第52話:「2億4千万の瞳」
<update/2002/12/21>
人身事故
鉄道で「不慮の事故」や「自らの意思」での事故は後を絶たない。
良く、電車の遅れの原因を「支障事故が発生した為」とアナウンスがあるが
ある時期まで「死傷事故」だと勘違いしていた、俺。
何れにせよ、忘年会時期でごった返す駅のホームでは、
注意をする事が必用である。
自らを守る為に。
俺は、この第52話を書くにあたって、悩んだ。
何つったって、俺の人生の中でワースト5には入るマヌケさだからだ。
しかし、このサイトの趣旨がそうなんだから、書くしかない。
先日の東京は、この時期には珍しく大雪。
雪に弱い東京の交通機関は、各地で大幅な遅れが出ており、
サラリーマンやOLの足に、多大な影響を及ぼした。
勿論、俺の足にも多大すぎる影響を及ぼした。
その日、飲みに行ったのだが、別にベロンベロンではない。
普通にいい感じで、酔っており、どうって事は無かった。
家に帰るため、某JR線の駅に止まっていた電車に乗ろうとした。
普通に。
ホームの端は、雪&濡れている。
電車の出入り口も、雪&濡れている。
俺が、いつも通りに電車に乗ろうとした瞬間、
有り得ない事が起った。
周りの乗客は、こう思ったに違いない。
「えっ!?目の前にいた人が、消えた!」
俺も思った。
「あれっ?いきなり3歳児の目線になっちまった?!」
それは、一瞬の出来事だった。
そう、電車に乗ろうと思い、右足を電車の入り口の端に掛けた瞬間、
滑った。
落ちた。
滑って、
俺の右足が、
吸い込まれるように、
電車とホームの間に落ちたのだ。
マヌケ度、1000%です。
でも、そんな事にゃぁ構っていられない、39歳の俺。
抜かなきゃ、俺の右足。
抜けねぇ!
抜けねぇ!
膝が電車とホームの間に挟まって、
つっかえるのである。
イテェ。
おらぁ、膝が割れたかと思ったよ。
そうこうしている内に、駅員がやってきて、
俺の両脇を抱えて、無理やり引っ張り出した。
カカシ状態で引っ張り出される
39歳の俺。
その時点で、
マヌケ度、2000%にUP。
俺の右ひざの両側、大負傷。
俺の足にも影響を与えた、東京の雪。
何事も無かったように、平静を装っても
2億4千万の瞳が
俺に突き刺さった気がした夜。
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