第50話:「鳴呼、団塊の世代の叫び」

<update/2002/11/15>

 

 

「団塊の世代」

 

1945年8月。

日本は、アジア大陸から太平洋に戦地を拡大したが敗戦。

戦後、1947年から1949年までのベビーブームに生まれ、

日本の高度成長期とともに、激動の日本の経済を支えてきた世代の人たちの事である。

 

 

しかし、その「団塊の世代」のサラリーマンたちが酔っ払うと、

得てして「正当な酔っ払いオヤジ」と化す。

 

 

 

「正当に白のワイシャツの第一ボタンを外し」

「正当にワイシャツの下は白のランニングシャツ」

「正当なネクタイの緩め具合と曲がり具合」

「正当なスーツのしわ具合」

「正当なカラミみ具合」

「正当なろれつの廻り具合」

「正当な赤ら顔と目の据わり具合」

「正当な千鳥足」

 

 

 

そう、これこそが

「純正正統派団塊の世代的酔っ払いスタイル」だ。

 

 

まぁ、激動の数十年を生き抜いてきたわけだから

我々の世代とは、いろんな意味で背負っている重さや

守るべきものの大きさがその比ではないだろう。

 

少なくとも、薄っぺらな人生歩んじゃってる俺なんかよりね。

 

 

 

 

でだ、

 

 

 

俺が30歳位の時の事なのだが、

仕事も終わり軽く飲んだ後、地下鉄を乗り継ぎ家に帰る途中の事だ。

 

乗り継ぎ駅のホームへ降りていくと

ホームは「人の山」

 

 

どうも人身事故かなんかで、電車が止まっているらしい。

 

 

でも、よくよく聞くとどうも、

電車は動いてはいるが、非常に遅れていて

支障のないA駅〜G駅までの振り替え運転のみとなっている模様だ。

 

幸いにして俺の降りる駅は、その振り替え運転区間内にある。

 

「しょうがねぇ、待つか。」

 

と俺は、地下鉄駅のホームで遅れている電車を待つ事にした。

 

でも当然、振り替え運転区間外の人たちは、少々苛立っていた。

 

 

 

 

待つ事数分。

 

 

 

一人待っていると、俺の右横のほうから、

この状況の苛立ちを隠せず、ぶつぶつ文句を言いながら

歩ってくる輩がいた。

 

 

 

 

 

 

そう、

「純正正統派団塊の世代的酔っ払いサラリーマン。」

 

 

まぁ、何処にでもいるような感じのサラリーマンだったが、

なんか、ブツブツ文句を言っていたので、駅員にでもカラムんじゃ

ないかと思い、俺はそのおっちゃんを眼で追っていた。

 

 

 

 

しかし、ホームにいる駅員は、他の乗客の問い合せで大忙しで、

何処にいるのかさえ解らない。

 

 

 

すると、おっちゃんが、ある壁と言うか柱で立ち止まり

その壁をじぃ〜っと見つめだした。

 

 

 

 

 

「ん?何やってんだ、あのおっちゃん」

「おいおい、何か見つけたかぁ?」

「おいおい、何かやろうしてねぇかぁ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

おいおい!

 

 

 

 

 

おいおい!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

おいおい!

 

 

 

 

 

 

 

やっちゃったよ。

やっちゃったよ、おっちゃん。

 

 

 

その人、一通り廻りに駅員がいないか確認した後、

 

 

 

 

 

通常、駅員がホームの乗客にアナウンスする為の、

マイクを掴んで、

ホームに響き渡るでかい声で、

こう叫んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うぅ〜〜らぁ〜〜

バス代、

だぁ〜せぇ〜!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

へっ?バス代っスか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

高度成長期にもまれた、団塊の世代。

日本の経済を支え続けてきた、団塊の世代。

人生とは何かを教えてくれる、団塊の世代。

背負うものの大きさが比べ物にならない、団塊の世代。

 

ホームのマイク握って、営団地下鉄に、

電車が遅れた事による自分への損害賠償

求める度胸があり、

 

それは、ホームにいる乗客全ての代弁者だという

男気あふれる、団塊の世代。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その損害賠償請求額、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「バス代」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

小ぃせぇ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

小ぃさ過ぎるよ、

鳴呼、団塊の世代の叫び。

 

 

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