第 4話 : 「臨機応変」

<update/2001/2/18>

 

確かあれは、私が26歳位の時だったと思います。

その日仕事を終えた私は、

買い物があり目的地へと向かい買い物も終えました。

 

さてアパートへ帰ろうと駅へ向かった時ですが、

 

「あれっ!」

 

と思ったのです。

そう忘れかけていた

 

(第1話参照)

 

が私のお腹の辺りをノックしたのです。

 

ただ私は、

「ここからアパートまでは、

電車で乗り継ぎ2駅だし、大丈夫だろうと」思い、

家路を急ぎました。

 

しかし、そんな私の甘い考えとは裏腹に

は、次の瞬間、

 

急激に襲ってきたのです。

 

「やばいっ!」そう思った私は、

すかさず「イッパイイッパイのセイフティ・タイル」で歩き

臨戦体勢を取りつつ、

波のように打ち寄せては引く

の誘惑から何とか逃れていました。

 

小学生だった私であれば、誘惑に負けたでしょう。

でもそこは、スーツを来たイッパシの

社会人。戦いました。

 

しかしである。

人間限界があります。

 

なんとかこの誘いから逃れる術を

必死に考えていた時に、

視線の先に眩いばかりのネオンが

有るではありませんか。

 

そう「パチンコ店」

 

「ラッキィ!あそこまで行けば何とかなる!」

私はその事だけを考え、必死にたどり着きました。

 

パチンコ店に入るや否や、

 

パチンコ台などには目もくれず!

 

トイレを探し、一直線でなだれ込み!

 

スーツの上着を脱ぎフックに掛け!

 

震える手で必死にベルトを外し!

 

ズボンを下ろし!

 

そして

和式水洗トイレに、

 

F1のピットインも真っ青の早業で

しゃがみこみました。

 

間一髪!

間に合ったのですっ!

 

私は安堵の溜め息を「ふ〜っ」とつき、

思う存分その瞬間を満喫しました。

 

その後に起こる恐怖の瞬間が

迫っているのも知らずに。

 

安心したのもつかの間、

また、また・・・・・罠が待っていたのです。

 

お分かりでしょう・・・。

 

そう「紙」が無いのです。

 

トイレットペーパーが何処にも無いのです。

 

普通スペアとかがどこかに有るもんですが、

無いんです。

 

「こういうオチかよ」と

しゃがんだままで落ち込みながらも、

必死に私の思考回路はフル回転

しておりました。

 

「とにかく、拭かなければ。」

 

何で拭くかが問題でした。

その時に考えられたものの中で

私は一つのアイテムを選択する

事を決断しました。

 

それは・・・。

 

 

“今、はいているパンツ”

 

 

その時の私のパニくった思考回路では

最良の選択でした。

 

私は、しゃがんだまま

(そう、お尻を突き出したような格好)を

なるべく保ちつつ、

 

革靴を脱ぎ、

 

その上に足を置き、

 

その体勢のまま

スーツのズボンを脱ぎフックに掛け、

 

パンツを脱ぎました。

 

全てが上手くいきました。

 

しかぁ〜し!

新たな問題が。

事の終わったその使用済みパンツを

 

どうするか。

 

持って帰るわけにはいきません。

置いていく訳にはいきません。

私は、「トイレ」という個室の中で

証拠を消す事を思いついてしまいました。

 

私は、私は・・・・・。

 

 

そのパンツを、

 

和式水洗トイレの

 

水槽タンクのふたを開け、

 

な、な、なんと、

 

水槽タンクの中に

 

パンツを

 

 

棄てました。

 

 

スーツを着て(勿論ノーパン)

 

何食わぬ顔をし、

 

パチンコ店を後にしたのです。

 

 

あのトイレはその後どうなったんだろう?

(その時のパチンコ店さん、ごめんなさい。)

 

その日以来私は、

街で配っているティッシュは、

なるべく貰い、

バックに入れておくことを心がけています。

 

「備え有れば憂いなし」

 

とは良く言ったもんだ。

 

 

 

 

臨機応変の意味を履き違えた

26歳の夏。

 

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