第34話 :「明日に向かって走れ」

<update/2002/03/31>

 

 

あなたは、

「恥も外聞も構わず、死に物狂いで何かを成し遂げた事」は、

ありますか?

 

 

あれは,確か今から16〜17年前の大学4年生の時の事である。

当時俺は、西新宿にある東京○大病院に勤める看護婦さんと

お友達だった。

 

日頃飲みに行ったり、大学の友達とコンパをやったりと、

遊んでいたのだが、たまに彼女のワンルームマンションに

友達と遊びに行っては、飲み会をやっていた。

 

しかし、そこは、ただのワンルームマンションではない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

女子寮。

 

病院と新宿公園を隔てた距離の西新宿に、

その大学病院に勤める看護婦さんたちの

女子寮があるのである。

 

当然、男子禁制。

 

じゃぁなぜ、その独身女子寮で、俺達野郎どもが、

白衣の天使「看護婦」と飲み会が出来たのか。

 

 

その女子寮(12F建て位のワンルームマンション)は、

交差点の角に建ち、しかも裏並びは、消防署(分室)だ。

当然女子寮の周りはブロック塀に囲まれ、出入りする場所は、

門が有る、そのただの1箇所。

 

勿論、管理人のオヤジが管理人室で出入りする人間に

常に目を光らせているので、そこはまさに

 

 

 

難攻不落の要塞である。

 

 

 

 

 

 

用は、その敷地に

 

俺たちゃ、夜這いを掛ける訳だ。

 

 

けれども、なんだかんだ言っても、所詮「白衣の天使」も人の子。

独身の若い女の子が一人暮らしをするマンションだ。

 

当然、俺たち以外にも、この難攻不落の要塞に

夜這いを掛ける飢えた狼どもがいるわけで、

 

それを手助けして受け入れる「白衣の天使」もいる訳だ。

 

 

だから、看護婦の間では、暗黙の内に、

この要塞に入り込む1つのルートが確立されていたのである。

 

ある壁を間隙をぬって飛び越えれば、敷地内に入り込めるのだ。

 

いつでも良いって訳じゃぁないが、

どこから入るのかは、ここでの明言は避けることにする。

 

 

 

 

で、

 

 

無事に彼女の部屋に深夜に入り込んだ、俺と友達Sの二人と、

次々と彼女の部屋に「つまみ」を持って現れる

白衣の天使たちとの、楽しい宴が、始まったのである。

 

 

いつものように。

 

 

まぁ、どうって事ない笑いと酒で、盛り上がるのだが、

いつも皆が酔ってきた時にやるゲームがあった。

 

 

 

「闇カクテル・イッキ飲み大会」

 

 

ベロベロに酔ったところで、グラスに

「酒」「ビール」「ウィスキー」「のり」「裂きイカ」

「柿の種」「枝豆」等々そこにあるつまみを

適当に入れて混ぜたやつを、

ゲームで負けた人がイッキ飲みするのだ。

 

 

 

これが、延々続き、気が付けば「朝5時」

 

夏の朝は、早い。

俺たちゃ全員ベロベロ。

 

今のうちに、俺たち二人夜這い野郎は、誰にも知られずに、

この男子禁制の女子寮を、脱出せにゃいかん。

 

もう空が白み始めたその時間、

いつもだったら、来たルートを戻り脱出するのだが、

その日に限っては、友達の彼女が、酔った勢いもあり、

 

 

 

「だいじょう〜ぶらよ、しょうめんから、れれも。」

「まら、かんりりんさんは、おきてないから」

 

しょ〜もない白衣の天使。

 

 

 

 

 

 

 

って言うからベロンベロンに酔った俺たちも、

 

「関係ぇねぇやぁ」ってな感じで、

普通のマンションから帰る感じで部屋を出て、

女子寮のエレベーターに、

二人堂々と乗り、

1Fから、踊り場へ出て、正面の門から出て行こうとした、

 

 

 

その時。

 

 

 

 

 

 

 

 

ホウキと、

 

塵取りを、

 

持った、

 

管理人の、

 

オヤジと、

 

ばったり、

 

 

 

出くわした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お前ら

何してんだっ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

俺らは、走って逃げた。

もう一目散に。

 

真夏の朝5時半の西新宿を

 

 

 

「まて、こらぁ〜!」

 

走って追っかけてくるのだ。

 

 

 

50代半ばと思しきその管理人。

追いつかれるはずが無い。

だって俺たちゃ、20代そこそこの若者。

 

 

 

だが、

俺たちの戦闘能力は、

あの「闇カクテル」によって20〜30%位しか出せない。

 

 

 

 

 

 

 

 

走った。逃げた。千鳥足で。

 

新宿公園の横の並木道を、必死に。

 

 

 

 

すると、俺の横を走っていた「S」が、

「やべぇ、キモチワりぃ、吐きそうだ」

とかわめいている。

 

 

「俺だって、もうイッパイイッパイなんだよ!」

 

 

 

 

言い終わったか終らないかの瞬間、

全力疾走で走っている中で

「グゥオボ〜、グゥオボボボボ

とかいう音が聞こえた。

 

 

 

 

 

 

 

走りながら。

 

 

横を見たら、「S」が

全力疾走して逃げながら、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ゲロ」

吐いている。

 

 

Tシャツに汚物がつきまくり。

 

 

 

 

もう、その悲惨で口の中から湧き出てくる汚物を見た瞬間、

 

俺にも限界が来た。

 

 

 

 

 

 

 

 

俺たち二人は、西新宿で、

 

真夏の夜が明ける朝、

 

看護婦寮に忍び込んで、

 

管理人に追われて、

 

恥や外見を捨て、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

眼から

「涙」

 

 

 

 

口から

「ゲロ」

 

 

 

 

鼻から

「鼻水と固形物」

 

 

 

噴出した状態で、

 

 

 

 

 

絶対に捕まらないぞという、

死にもの狂いの形相で、

 

 

 

 

 

公道を

 

 

 

 

 

 

 

 

 

全力疾走した。

 

 

 

 

 

 

 

 

涙なんて「拭けば」いいんだ。

服についた「ゲロ」なんて洗えばいいのさ。

「鼻水」なんて、後でかめばいいのさ。

 

 

捕まったら、俺たち終わりさ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

明日に向かって走れ。

 

 

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