第31話 :「そして僕は途方に暮れた」
<update/2002/03/06>
今の世の中、カルチャーショックなんてものには、
そうそう、陥るものではない。
特に国内で受けるなんて事は、まれであろう、
このカルチャーショックというやつに、
俺は数年前、大阪に出張に行った際に陥った事がある。
知っている人は知っているであろうが、俺は、
その光景を見た時の衝撃と言ったら、口では言い表わせないくらい
俺にとってはショックだったのだ。
そこは、
大阪は「飛田新地」にある
そう、いわゆる「チョイの間」というお店。
長屋状態の家が、ずらりと並ぶ一角があるのだ。
何件も店が連なるその長屋状態の家は、1件1件戸が開いており、
通りから見えるように、若い女性(しかも皆綺麗)が座っている。
隣には、料金交渉役のおばちゃんがおり、そのおばちゃんと
料金交渉をするのだそうだ。
ここは、新宿歌舞伎町のように、
ネオンがギラギラ耀いているわけではない。
普通の街の閑静な住宅街という感じで、
店構えも一見、小料理屋といった具合だ。
で、何がショックだったのかというと、この日本国内で、
この「飛田新地」だけは、そんな世界が許されているといった、
聖域みたいなものが存在している事に、
カルチャーショックを受けたのである。
断っておくが、俺はその日、そこにお世話にはなっていない。
何故ならば、俺は、こういった類いの性風俗系には
全くと言っていい程、行かないのである。
こういう「チョイの間」や「ソープランド」「ヌキキャバ」等々、
俺は、大嫌いなのだ。
別に、そういった所に行く事自体は、良いとも悪いとも言わないし
人それぞれ、趣味趣向は違うわけだし、楽しみ方は人それぞれだから
そういった所へ遊びに行く人たちの事をとやかく言うつもりは無い。
俺は嫌いなので行かないだけだ。
ただ、あの忌々しい、たった一度の悲劇を除いては…。
俺は、この38年間の人生の中で、たった1度だけ、
そう、
たった1度だけ「ソープランド」なる場所へ行ったことがある。
24歳の若きその日、
「これも社会勉強だぁ!」なる
「勝手な思い込み」と「言い訳」と「酒」の力によって
完全武装された、
社会人1年目である同期入社の新入社員俺たち3人組みは、
東京は神田にあるソープランドの店の前で、
突入するタイミングをはかっていた。
東京の事を知っている人であれば、
「神田にソープランドなんてあるのか?」
てな疑問が湧くと思うのだが、
そもそも、神田のソープランドなんかに
行こうと思った事自体が間違いだったのだ。
K氏、O氏、そして俺の3人は、
「ここは、結構若くて綺麗な人が、
従業員出入り口を出入りしているのを見た」
という、K氏の台詞だけを信じて、いざ店の扉を開けた。
俺は勿論、初めての世界である。
6畳くらいの待合室に通され、そこには先客が1〜2名位いた。
俺たちは、どうやって順番を決めたのかは覚えていないが、
たしか、番号札のようなものを受け取り、順番を待った。
俺の番となった。
そこで俺は、
禁断の部屋へと招きいれてくれる
SEXYなネグリジェを素肌にまとった女性と出会い、
不埒な世界へといざなう階段を、はやる気持ちを抑え、
上って行った。
いや、はずだった。
何故かって?
俺はその女性に会った瞬間、心の中でこう叫んだ。
「あんた、
間違いなく
50歳
過ぎてんだろっ!」
なぁ、おい。
俺はこれから、
50歳過ぎたあんたと
いたすのか?
俺は24歳だぜ。
なぁ?
俺は、
これから、
あそこに見えるドアを開け、
あんたと一緒に、
その部屋に入り、
俺は、あんたに、
何かされるのか?
なぁ・・・。
いきなり突きつけられた、
理不尽なまでの汚い大人たちの社会。
この状況を回避する為には、
キャンセルして店を出るしかない。
しかし、しかしだ、
24歳の社会に出たての若造の俺。
↓
ここは東京都千代田区神田。
↓
しかもソープランド。
↓
クレームをつけてキャンセルする。
↓
けれどもここは、神田のソープランド。
↓
つまりは、暴力団と繋がっている。
↓
クレームをつける。
↓
結果は目に見えている。
俺は何度も禁断の部屋へ着くまでに、
この方程式の検算を繰り返した。
当っている。検算に間違いなし。
あいにくだが、当時の俺は、
それを行動に移す度胸なんて持ち合わせていない。
俺が選べる選択肢はただ一つ。
「成すがまま。」
そう、「時の過ぎ行くままに身を任せる」しかない。
50歳を過ぎた彼女と過ごした、40分〜60分間に
何があったのかなんて事を、ここで赤裸々に語るのは、
あまりにも生々し過ぎて、無理ッス。
そこでだ、
その40分〜60分間に何があったのか、
ビートルズの往年のヒット曲「ヘイ ジュード」の
関西弁訳バージョンで
その時、その部屋で何があったのか、読者の方々には、
それぞれの感性で想像していただきたい。
さぁイメージしましょう。
- Hey Jude - 〜 なぁ、ジュード 〜
Lennon/McCartney
Hey Jude, don't make it bad なあ ジュード そんな悪く考えたらあかん take a sad song and make it better 悲しい歌でも歌うたら,気分も晴れるやろ Remember to let her into your heart 彼女を心で受け入れることを忘れたらあかんよ Then you can start to make it better そうすりゃ ぼちぼち良うなっていくで
Hey Jude, don't be afraid なぁ ジュード びびったらあかんて You were made to go out and get her 行って彼女を手に入れてこんかい The minute you let her under your skin 彼女を自分の一部として受け入れた時 The you begin to make it better その時から うまいこと行くようになるんちゃうか
And anytime you feel the pain お前が苦痛を感じるどんなときも Hey Jude refrain なぁ、ジュードよ やめときや don't carry the world upon your shoulders 何もかもお前の両肩に背負い込むことだけは、やめときや For well you know that it's a fool だってアホやと思わんか who plays it cool 気取った奴なんて By marking his world a little colder おのれの世界を冷ややかにしとるんや Da da da da da da da da da
Hey Jude don't let me down なぁ ジュード がっかりさせんといてや You have found her, now go and get her あんなええ子見つけたんやろ 早よ行ってゲットしてこい Remember to let her get into your heart 彼女を心で受け入れることを忘れたらあかんよ then you can start to make it better そうすりゃ うまくいくから
So let it out and let it in そう、全部吐き出せ、そして、受け入れるんや Hey Jude begin なぁ ジュード、やってみぃや。 You're waiting for someone to perform with お前は、一緒にやってくれる誰かを待っとるんやろ And don't you know that it's just you わかってるやろ、自分自身でやらんなあかんのや Hey Jude, you'll do なぁ ジュード、お前次第なんや The movement you need is on your shoulder 行動を起こしさえすればええんや Da da da da da da da da da yeah
Hey Jude, don't make it bad なあ ジュード そんな悪く考えたらあかん take a sad song and make it better 悲しい歌でも歌うたら,気分も晴れるやろ Remember to let her under your skin 彼女をお前の一部として受け入れるんや Then you can begin to make it better そうすりゃ ぼちぼち良うなっていくで Better, better, better, better, better, oh よぅなる、よぅなる、よぅなる、よぅなる、よぅなるっちゅうねん
<Copyright Information> © 1968 Northern Songs. All Rights Reserved. International Copyright Secured. <From> " PAST MASTERS-VOLUME TWO " 7. "The Beatles / 1967-1970" Disc-1 13. |
イメージしたかい?
そして60分後。
終ったよ。
なにもかも。
24年間築き上げてきたプライドが、
音を立てて崩れていく。
トラウマとなって。
「お父さん、お母さん、ごめんよ。」
僕はどんな顔をしてあなた達に会えるというの?
そして僕は途方に暮れた。
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