第15話 :「体験入隊(いきなり完結編)」

<update/2001/9/22>

 

第14話からのつづき。

結構詳しく書くと、終らなくなるので端折っちゃいます。

 

で、そんなかんだで自衛隊体験入隊が

始まったのであるが、最終日までのメニューをさらっと

ご紹介しましょう。

<1日目>

規律を学ぶ

<2日目>

体力測定及び基本訓練

<3日目>

基本訓練/夜は駐屯地内にテントを張りで野営

<4日目>

自衛隊トラックに乗って演習地まで行き演習

<5日目>

終了

とまぁザットこんなもんなんですけど、

今でも印象に残っている事を抜粋して紹介しましょう。

 

 

まず基本訓練。

これがねぇ、笑っちゃうんですよ。

映画「愛と青春の旅立ち」とかのシーンで出てくる

基地内で訓練を行う時、2列縦隊で延々走っている

シーンがあるじゃないですか。

 

勿論英語で、

「♪鬼軍曹はぁ〜、タマ無しでェ〜       

     どっちが○○だかわからないぃ〜♪」

とかいうの。

 

あれを日本語で掛け声かけながら走るんですわ。

 

 

勿論日本語で、

「♪田舎のお袋何とかでェ〜♪」

とか

「♪俺は、やるぞぉ〜     

        俺は、できるぅ〜♪」

 

とかね。

もう可笑しくてね。

でもみんな最初は恥ずかしくて可笑しくて

戸惑ってたんだけど、やっぱそこは

同期入社の仲間達。

 

いつの間にか、みんな声が揃って真剣に走ってる。

 

俺は感じたね、

 

 

 

連帯感

ってやつを。

 

訓練をしている時には勿論自衛隊の規律に乗っ取って

行動しているわけだが、もう一つ意外なルールが存在する。

 

それは確か、

 

午前11時と午後3時に起る。

 

その時間に担当の自衛隊員がラッパを吹くのである。

 

そのラッパが鳴ったら、

走っていようが、

行進していようが、

休んでいようが、絶対に!

 

その場に立ち止まり、駐屯地の屋上高くに掲げられた

日本国旗に、

 

 

敬礼

 

 

しなければいけないのである。

 

俺は初めて日本人を感じたね。

 

 

で、次に駐屯地内でテントを張って野営をした時。

結構ウキウキして楽しかったよ。

 

自衛隊色の深緑色のテント。

自分達で張って、空気入れるビーチマットみたいな

やつに寝るんだけど、キャンプみたいで結構楽しいのよ。

 

翌朝起床後、テントをたたみ、自衛隊のトラックに乗り

実際に演習場に行って演習。

 

自衛隊トラックってね、いわゆるトラックよ。

深緑色した幌(ホロ)が掛かっていて、荷台に俺たち

隊員が合い向かいになって座っている。

 

勿論、駐屯地から演習場まで公道を走るわけなので

信号とかで止まるんですよ。

 

その時に、我々のトラックの後ろに止まった

アベックの車が、俺たちを見て

(多分本物の自衛隊員だと思っている)

冷笑するわけですよ。

 

 

運転している男が助手席の女に、

「自衛隊って大変だよなぁ〜よくやるよ。        

自衛隊に入る奴の気が知れねぇ〜よ。

俺なんか、かったるくってやってらんねぇよなぁ〜。

ご・く・ろ・う・さ・ん。」

 

ってな事を言ってるわけだよ。(完璧想像・被害妄想)

 

で、俺達たかが2〜3日体験しただけの新入社員。

でもその頃には既に心は自衛隊員、そして連帯感。

 

自衛隊トラックの中から思いっきりそいつらに、

 

 

 

メンチ切ってやったよ。

 

 

ふっ、目ぇそらしやがった。(ささやかな優越感)

 

演習場での演習といっても、銃を撃つわけでもなく

ただ、30Kgくらいのリュックサックみたいなものを背負って、

走れと言われたら、林の中、ぬかるみの中を

力の限り走らなければいけないのだ。

 

自衛隊員の格好してやるの。

これ、結構辛いのよ。

 

意外だったのが飯。

演習の時は、要は自衛隊員が実際に持って出る

携帯用のものをそれぞれが支給され持っているのだが

これが意外と美味い。まぁ疲れきって唯一の楽しみだから、

って事はあるけどね。

 

 

演習も無事に終わり駐屯地に戻った最終日の夜、

教官との親睦会という事をやる。

 

駐屯地内に唯一酒の飲める場所があるのだ!

 

まぁ、売店というか海の家というか、そんな質素な

所なんだけど、そこでアルコールを飲んで、親睦会を

やってくれるのだ。

 

勿論、宿舎からそこへ行くのには、

班ごとに「一列縦隊」

 

「オッチ、オッチ、オッチニィ」

ってね。

 

親睦会では、怖かった教官とも和気あいあい。

酒も入り、みんな陽気にこの体験入隊の経験を

疲れも忘れ思い思いに語り合っている。

 

 

 

「あぁ、なんて素敵な瞬間なんだろう。

俺は、こんなに一つになった同期の連中と

これから仕事をしていくんだ。

良かったよ。こんな経験が出来て!」

 

 

込み上げて来る充実感と一体感に一人酔い、

気持ちよくなったところで締め。

 

みんな、教官の締めの言葉を噛みしめて聞き、

 

 

「ありがとうございました!」

 

 

と高らかに杯を上げ、親睦会を終了したのです。

 

 

でも・・・、

忘れてたよ・・・・・。規律。

宿舎に戻る時の事を。

 

 

みんな気持ち良く酔った状態で、

 

 

一列縦隊で、

 

 

帰らなければならいのである。

 

 

考えて欲しい。

あなたが酒を飲みに行って帰る時。

 

酔った状態で帰る時に、仲間が店から出てくるのを店先で待ち、

駅までの道を一列縦隊で掛け声を掛けながら

ふらふらしながら、帰らなければいけないのである。

 

 

もうその光景は、

 

 

 

東京丸の内のオフィス街で、

 

 

大通りを引越しのため

 

 

決死の覚悟で渡る、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カルガモ 

 

である。

 

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