Comet C/1995 O1 ( Hale-Bopp )

ヘール・ボップ彗星(C/1995O1)は1995年7月22日に発見されました。
その後の観測から太陽からの距離が7天文単位、木星より遠い距離にあり、しかも1997年4月にはマイナス等級になる事が判明しましたのです。 発見時にはすでに11等という明るさで、あのハレー彗星でさえ同じ距離での明るさは15等から16等、単純に比較するとヘール・ボップ彗星のほうが100倍も明るい計算になります。
1996年3月に突然長い尾を引いて驚かせた、百武彗星(C/1996 B2)と共に長く記憶に残るであろう、この大彗星の2年以上にわたる観測記録を私なりにまとめてみました。


光度目測全データ

光度曲線と光度式

観測日記1997


光度目測全データ

95年9月18日より97年10月9日までの眼視光度目測、全52個のデータ。すべてICQフォーマットにて記録しています。

観測機器 15.0cmニュートン反射、 10.0cm20倍双眼鏡、 4.2cm7倍双眼鏡、 3.5cm7倍双眼鏡 & 肉眼


IIIYYYYMnL YYYY MM DD.DD eM/mm.m:r AAA.ATF/xxxx /dd.ddnDC /t.ttmANG *OBSxx
   1995O1  1995 09 18.49  S 10.5:HS 15.0L 6 100   1    2             YOS02
   1995O1  1995 10 12.43  S 10.5:HS 15.0L 6 100   1    2             YOS02
   1995O1  1996 04 24.75  M  8.2 S  15.0L 6  36   4    4    5  m290  YOS02
   1995O1  1996 05 12.69  M  8.5 S  15.0L 6  36   4    4             YOS02
   1995O1  1996 06 18.58  M  6.0 AA 10.0B    20   8    4             YOS02
   1995O1  1996 06 22.69  M  6.1 AA 10.0B    20   7    4    6  m340  YOS02
   1995O1  1996 07 05.54  M  5.7 S   4.2B     7 &10    6             YOS02
   1995O1  1996 07 12.69  M  5.8 S   4.2B     7 &10    6             YOS02
   1995O1  1996 07 13.70  M  5.8 S  10.0B    20   8    6    9  m 10  YOS02
   1995O1  1996 07 20.55  M  5.7 S  10.0B    20  12    7    9  m 20  YOS02
   1995O1  1996 08 03.53  M  5.6 AA 10.0B    20  12    7   15  m120  YOS02
   1995O1  1996 08 11.51  M  5.6 AA 10.0B    20  13    6   0.5  110  YOS02
   1995O1  1996 09 03.50  M  5.5 AA 10.0B    20  12    6   0.8  110  YOS02
   1995O1  1996 09 10.50  M  5.5 AA 10.0B    20  10    7   0.5  105  YOS02
   1995O1  1996 10 01.44  M  5.5 AA  3.5B     7  18    6   0.5  105  YOS02
   1995O1  1996 10 14.41  M  5.6 AA  3.5B     7 &15    6             YOS02
   1995O1  1996 10 27.41  M  5.3 AA  3.5B     7 &15    7   0.6   90  YOS02
   1995O1  1996 11 03.41  M  4.9 AA  3.5B     7 &12    7   0.8   80  YOS02
   1995O1  1996 11 06.42  M  5.0 AA  3.5B     7 &12    6   0.6   80  YOS02
   1995O1  1996 11 16.40  M  4.9 AA  3.5B     7 &10    7   0.7   70  YOS02
   1995O1  1996 11 28.39  M  4.7 AA  3.5B     7 &10    6   0.7   70  YOS02
   1995O1  1996 12 06.39  M  4.2 AA  3.5B     7 &12    7   0.6   50  YOS02
   1995O1  1996 12 13.38  M  4.0:AA  3.5B     7 &10    6             YOS02
   1995O1  1996 12 14.39  M  4.0:AA  3.5B     7        6             YOS02
   1995O1  1997 01 08.88  M  3.3:AA 10.0B    20   8    7   20  m 30  YOS02
   1995O1  1997 01 11.88  M  3.2 AA  3.5B     7        6   0.4   20  YOS02
   1995O1  1997 01 19.87  M  3.1 AA  3.5B     7  12    7   1.2  340  YOS02
   1995O1  1997 01 25.87  M  3.0 AA  3.5B     7        7             YOS02
   1995O1  1997 02 04.86  M  2.3 AA  3.5B     7  15    7   1.6  310  YOS02
   1995O1  1997 02 04.86  G  2.2 AA  0.0E     1                      YOS02
   1995O1  1997 02 08.87  M  2.1 AA  3.5B     7 &15    7   1.2  320  YOS02
   1995O1  1997 02 11.86  M  1.7 AA  3.5B     7  15    7   1.8  320  YOS02
   1995O1  1997 02 11.86  G  1.5 AA  0.0E     1            2         YOS02
   1995O1  1997 02 13.85  B  1.4 AA  0.0E     1            2         YOS02
   1995O1  1997 02 18.85  M  1.1 AA  3.5B     7  20    8   7    325  YOS02
   1995O1  1997 02 18.85  B  0.9 AA  0.0E     1            5         YOS02
   1995O1  1997 03 04.85 aB  0.3 AA  0.0E     1                      YOS02
   1995O1  1997 03 07.84 aB -0.2 AA  0.0E     1           12    330  YOS02
   1995O1  1997 03 08.85 aB  0.0 AA  0.0E     1            5         YOS02
   1995O1  1997 03 16.84 aB -0.1 AA  0.0E     1            6         YOS02
   1995O1  1997 03 17.42 aB -0.1 Y   0.0E     1            3         YOS02
   1995O1  1997 03 30.45 wB -0.9 Y   0.0E     1           16     20  YOS02
   1995O1  1997 04 06.46 aB -0.5 Y   0.0E     1                      YOS02
   1995O1  1997 04 07.46 aB -0.8 Y   0.0E     1           13     25  YOS02
   1995O1  1997 04 12.46 aB -0.4 Y   0.0E     1            8     10  YOS02
   1995O1  1997 04 26.47 aB -0.2 Y   0.0E     1           10     05  YOS02
   1995O1  1997 04 28.47 aB  0.4 Y   0.0E     1           12     00  YOS02
   1995O1  1997 05 04.46 aB  1.1 Y   0.0E     1            3         YOS02
   1995O1  1997 05 04.46 aM  1.1 Y   3.5B     7  10    8   2.5   40  YOS02
   1995O1  1997 05 09.47 aM  1.1 Y   3.5B     7 & 8    8   2.0   50  YOS02
   1995O1  1997 09 16.81 aM  5.3 YG 10.0B    20   9    6             YOS02
   1995O1  1997 10 09.83  S  6.5 S  10.0B    20   7    6             YOS02

光度曲線と光度式

52個の光度目測をもとに彗星の光度曲線と光度式を作成してみました。
(吉田誠一氏作成ソフト Comet for Windows を使用)

hbmag.gif

光度式

−0.65+5logΔ+8.13logr

当初の予報式、絶対等級=−2.0等には及ばなかったが、記録に残っている彗星の中では2番目の記録となる、絶対等級 −0.65等の値が得られた。またグラフが示すように最大等級m1は3月下旬から4月上旬、−1等までになっていることが分かります。


観測日記1997

★1月09日
1997年、いよいよHBの年。
発見されて約1年半、数ヶ月後にはどんな姿を見せてくれるのだろうか。
年が明けてからは晴れ間がなく、朝方に回ったHBがなかなか見れないが情報ではかなり明るくなっているという噂。
04時に起きて室津スカイラインぞいの駐車スペースへ。ここは柳井、岩国が視界に入り条件はやや悪いが東側の見晴らしは抜群。10cmの双眼をセットしてHBの出を待つが低空の透明度がいまいちでなかなか姿を現さない。
6h00m、HBが姿を現した。思わずハッとする。約3.3等、明るい!
6h40m、空がすっかり白ずんでも集光部はキラキラ輝いている。

★1月12日
今朝は透明度が良い。写真も撮っておこうと早めに室津スカイラインぞいの駐車スペースへ行きP2をセットする。 P2を組み立てるのは昨年4月の百武彗星以来だ。HBは09日より早くに見え出し、肉眼でもはっきり確認できる。
四国の山の方で盛んに稲光が光っていて、夜が明けると四国の山並みが目の前にくっきりと現れた。
この日写した写真には何と40分ほどのアンチテイルが写っていた。

★1月20日
室津スカイラインへ。着いた時には西空に月が残っていた。この日も透明度が良く肉眼でも楽に見える。わし座 ζ(3.0等)と同じか、やや暗い、といった感じで、小さな円盤状に見えている。

★1月26日
仕事前に30分ほど早く起き、自宅の前でHBの出を待つ。満月過ぎの月が煌煌と照っている。さすがに山が邪魔 をしてなかなか姿を現さなかったが。5h40mにようやく見え出した。
1週間前よりやや明るくなっていて、3.0等と目測。月明かりの中でも肉眼で見える。
06hになったところで朝食をとりに自宅に戻る。

★2月05日
明日は休日なので上関町皇座山に出かけることにした。皇座山はこの近辺では第一級の観測場所だと思う。周 りに明かりは1つもなく、西空の光、徳山方面が条件が悪いが、東の空に見えるHBには影響はない。
自宅を出るのがやや遅くなり観測地に着いた時にはすでにHBは昇っていた。一目見て明るくなってると感じる。1 月中は3等前後でやや増光が鈍っていて心配したが、どうもこの彗星は気を持たせておいて急に明るくなる性格 のよう。
3.5cm双眼では白鳥γ(2.2)とε(2.5)の中間、ややγ星に近いと目測。今日から肉眼での目測も始める。眼鏡を 重ねて恒星と彗星をぼかすとγ星と同じ明るさに見える。なんとなく尾もみえるような・・・。10cm双眼で見る彗星 のコマはため息が出るほど奇麗で核近傍は複雑な構造をしている。
観測中に細い月が昇って来たがまったく影響なし。
今日は一人ほど同業者が観測中だった。皇座山で観測者と出会うのは昨年の3月22日、百武彗星以来。

★2月09日
HBが気になって05h30mに目を覚ます。さすがに自宅前からは光害があって先日の皇座山の時の姿には遠く及 ばないが、まあしかたがない。

★2月12日
今日もHBが気になって目が覚める。部屋の窓を開けて外を見るとビックリ。なんと夏の大三角形が2つあるでは ないか!直感的に1等級だ!と感じる。目測をして見ると肉眼では
1.5等、2度の尾が見える。コマが小さいから星の様にキラキラと輝いている。

★2月14日
相変わらず、新・夏の大三角形状態で見えていて凄い。そろそろ空の暗い所で観測したいが、こう休みがなくて はどうしようもない。自宅前からの観測が続くといらいらしてしまう。

★2月19日
会社の同僚の I さん、Tくんと皇座山で待ち合わせることになった。
前もって早めに行き双眼鏡とP2をセットしていると2台の車が上がってきた。04h30mまでは月が残るのであれこ れと雑談をして過ごす。今日は猛烈な西風で二人とも震え上がっている。そのかわり透明度は最高だ。
3h30m、東の空からHBが昇ってきた。昇るにつれてどんどん明るさを増して、肉眼でもイオンとダストの尾が二股に分かれV字になっている姿が素晴らしい。こうま座を行くウエスト彗星を左右逆にしたよう。
3.5cm双眼で見ると視野いっぱいの尾が見えていてイオンの尾の先端は天の川の中に溶け込んでどこまで伸び ているかはっきり分からないほど。
10cm双眼では宝石のように輝く集光部から噴水のように尾が二又に吹き出ていて左右の尾の間はスプリットテイ ルのように黒い筋が広がって見えている。
夜が明けると今日はかなり冷えたのだろう、いつも暖かい皇座山で地面ががちがちに凍り付いていた。

★3月05日
19日から2週間HBを見ていない。 I さんから明るくなっているとメールをもらうが私自身、人の観測報告を読むだけで実感が湧かない。今日ぐらいからようやく月が細くなって条件が良くなるはずだ。
朝、自宅前からHBを見る。高度が2週間前からやや低くなっていた。目測をした光度に高度補正を実施して報告する。

★3月08日
今日明日と休みなので思い切って長野山に出かける事にした。
午後03時に自宅を出発、食料を買い足し2時間ほどで到着した。途中のカーブに2個所ほど雪が残っているところ があったが昨年の今頃の状態を思うとまったくうそみたいだ。
昨年の3月上旬、来たるべき百武彗星の観測のため下見に出かけた時は、鹿野の町から少し入ったあたりからすでに道の両脇に雪が残っており、米山のカーブを曲がっていよいよ長野山に登る道に入るところからは50cm以上も積もっていて、山頂に行くのをあきらめて帰ったのを思い出した。
日が暮れていき誰もいない1015mの山頂は気持ち良く、空も良く晴れている。
まず西空低く見えている46P/Wirtanen彗星を観測。前回の回帰の時は秋吉台で見たことを思い出した。次に双 子座の中にある81P/Wild彗星を観測する。
20hを過ぎる頃から西空にあった雲が広がりだし、しばらくすると全天を覆い隠してしまった。時々、風に雲が流さ れちらちらと星が見えるが状態が良くない。晴れているときは気付かなかった広島の明かりが雲に反射して思い のほか明るく見えている。
天気予報では晴れ予報を流しているので思い切って皇座山まで戻ることにした。
まだHBが見え出すまで時間は充分あるし、とにかく晴れの区域にいることが重要だ。
23h、長野山を下る。須々万から八代を抜け熊毛に下りて、上関へ車を走らせた。
01h、皇座山に到着。
案の定晴れていた。まだいくらか時間があるので1時間ほど仮眠を取ることにする。
目を覚まして外に出て見ると寝ている間にだろう、1台車が上がっていた。一言挨拶をした後に器材を見せてもら う。なんとフジノンの15cmED双眼鏡だった。昇って来たHBを覗くとクリアーな視野の中に迫力満点の姿、イオンの 尾が青白く伸びている。
薄明ですっかり白ずんだ視野の中のHBをもう一度見直すと37倍で南西に吹き出した扇状のジェットの中に波紋 のような模様がいくつか見えているのを確認。おお!これが噂のスパイラルジェットか!!空が暗く、HBが明るいと わかり難いが、バックが明るくなってコントラストが下がると逆に良く見えるのだろう。
結局この日のHBは大気補正を実施して、ついにマイナス等級! -0.2等と観測した。

1997/03/08 04h45m〜
露出10分×3枚コンポジット
ニコン50mmF1.4絞り2.8
高橋P-2赤道儀自動ガイド
フジカラーG400エース
撮影地:上関町皇座山

★3月09日
昨日の大移動徹夜観測に疲れて今日は近場でいいや、と思う。04hに起きて室津スカイラインぞいの駐車スペー スへ。しかし行ったら行ったで、やっぱり彗星は空の暗いところで見ないといかんなーと思う。昨日に比べて空の 状態は良いのに見え方は格段に悪く、二股に分かれた尾が見えない。固定撮影で大畠、大島の明かりといっしょ に写し込む。現像し終わった写真はカブリで真緑になっていた。
帰り道、駐車スペースで熱心に双眼鏡で眺めている人がいた。

★3月17日
朝、自宅前より観測。明け方の高度がだんだん低くなってきた。空の状態が悪いので尾はおもにダストの尾しか見えない。しかし低空ながらアルタイルより明るく見えていてキラキラと輝いている。
結果的にこの頃がシンクロニックバンドが一番はっきり見えてた頃で、残念。

★3月17日
そろそろ夕方で見え出す頃、まだ明るいうちから3.5cm双眼鏡で北西の空を探す。
18h40m、国道沿いの電線の上に見えているのを発見。まだ高度が低くて条件が悪いが、明け方の見え方と違い、尾が真横に伸びていてちょっと変わった感じの姿に見える。

★3月20日
自宅前から10cm双眼でHBを見る。背景が光害で明るいので核から西側に吹き出す流線状のジェットが良く見える。尾自体は3度ほどしか見えないが、車ががんがん通る中尾を伸ばした彗星を眺めているというのはなんだか不思議な気分がする。

★3月30日
朝、低気圧が通りすぎて冬型になった。昼ごろから真っ青な空が広がりだす。冬型になると瀬戸内側は晴天になる事が多く、ちょうど1年前の百武彗星を見た3月22日もそんな空だった。
夜勤明けで目を覚ますと16時前だった。慌てて出発の準備をする。今日は長野山に行こうと思っていたのだが、長野山まではたっぷり2時間、今から出かけると18時頃になってしまう。それから観測準備をするとなると・・・。そこで予定を変えて羅漢山に行く事にした。羅漢山なら1時間半ほどで行けるし、HBの見える北西の空は確か暗いはずだ。
山道を飛ばし17時20分に羅漢スキー場に到着。車をゲレンデに乗り入れて器材を急いで組み立て、家族で見に来た一組とHBが見え出すのを待つ。
「どのあたりに見えますかねー」との質問に「今日の空の状態なら一番星状態ですよ」と答える。
徐々に空が暮れていき南の空に一番星のシリウスが見え始めた。そろそろ見える頃だと北西の空に目をやると、HBがすでに見えているのを発見。10日前に自宅前で見た時よりも高度がかなり高くなっている。
薄明が終わると西空の黄道光がすーっ見え始め、HBはますます輝きが増してきた。
イオンの尾は二重星団とカシオペア座のあいだにまで伸びていて約16度ほど、太く曲がったダストの尾が明るく見える。
光度目測をするとシリウスよりは暗いものの、0等のカペラよりやや明るく、リゲルよりかなり明るい。大気補正をすると-0.9等の明るさになった。
羅漢山は道路がすぐ側を通っているため写真撮影にはちょっと向かないが、広島の明かりの届かない北から西空にかけてはなかなか良い空。朝方に使っていた皇座山は夕空には向かないため(光、徳山の明かりがちょうど北西にある)有力な候補地だ。ただ山波や木立がかなり高く、高度の低い対象物には向かないかもしれない
透明度が良いため大気減光がないのだろう。HBは木立の中に隠れそうになってもまだ明るく見えている。昨年の 百武も凄かったがこの日のHBは星空に張り付いた絵の様で、いつまでも脳裏に焼き付くだろう。

1997/03/30 20h20m〜
露出5分
ニコン50mmF1.4絞り2.8
高橋P-2赤道儀自動ガイド
フジカラーG400エース
撮影地:(旧錦町)羅漢山

50mm標準レンズでこの迫力!!これが大彗星ですよね。
この写真は木立の裾まで星がびっしり写り込んで、ほとんど大気減光していません。
★3月31日
今日も昨日からの晴天が続いている。昼過ぎに I さんに電話して長野山で落ち合おうと約束する。昨日はいろいろと欲張りすぎて忙しかったので今日はじっくり眼視で眺めよう。そういう事でP2は持っていかない事にした。
長野山に着いた頃から薄曇が広がり出しやや条件が悪くなったが、少しくらいの雲ならHBは問題にしないだろう。
展望台に登りHBが現れるのを待っていると、次から次へと人があがってきた。平日の、この山奥でこんなに多くの人が集まるなんて、初めての経験だ。まったくもってスゴい。P2を持ってきていたにしろ、写真なんて撮れなかっただろう。
山を降りる時にも西空の開けた道路沿いに車を止めて眺めている人が何人もいた。

★4月06日
透明度はずごく良いのだが、なんだか疲れ気味。光度目測だけで済まそうと、近場の箕山に日が暮れてから出 かける。サ−チライトがぐるぐる回る空の中、-0.5と目測。肉眼ではイオンの尾がまったく見えない。光害があると 青い光は弱い。
箕山の広場でも三脚にカメラをセットして写真を撮ってる人がいた。なにもこんなひどい空で撮らなくても、ちょっと 出かければ良い場所があるのに、と自分のことはさて置いて思う。シャッターの音だけ聞いていると少し露出時間 が短いように思うが、そっとしておこう。

★4月07日
昨日の空にはさすがに懲りた。今日は遠出をしよう。長野山は人が多いので諦め、今まで行った事のない、吉和 村、もみの木森林公園に行ってみよう。森林公園に入る前の別荘地に左に曲がる道があって、少しあがるとテレ ビアンテナ群のある展望台に出る。そこは 北から西にかけての見晴らしが素晴らしいという事は、昨年秋、何度か下見に行って知っていた。
187号から冠高原を抜ける。観測地には約2時間で着いた。3,4人、望遠鏡をセットしている人がいる。隣に陣取っ た人はかなりの装備で、高橋のJP赤道儀にペンタックスの鏡筒、マミヤのロールフォルダーという器材。
少しモヤっぽい空ながら黄道光がかすかにわかる。天頂から南は広島の明かりでダメだが北から西にかけては まずまずだ。
10cm双眼でコマ付近をじっくり眺めて見る。核近辺の輝きは3月までの方が上だったようで、倍率をあげてもスパ イラルジェットは見えない。イオンの尾はすぐに二股に分かれ、ダストの尾は思ったより幅が広い。しかしそれぞ れの尾が透明感のある色に分かれて見えて美しい。

★4月12日
透明度は良いのだが、西空に月が残ってきた。夕方から皇座山に出かける。
皇座山からの北西は徳山、光の光害があり条件は悪いのだが、見晴らし的には抜群なので彗星は暗い空で見 なければダメだ、とか言いながらついつい足を向けてしまう。
すぐそばに月があるのだが、いまだカペラよりも明るい。バックグランドが明るいので肉眼ではイオンの尾は見えない。3.5cm双眼鏡でもうっすらと見えるだけ。
夜景と細い月を取り込んだ構図を何枚か撮影。少し下の空き地でも写真を撮っている人を見掛けた。

★4月26日
満月を過ぎて月の影響がなくなる。これから次の新月過ぎまでがHBを西空で見る最後の月。明日が休みなので月初めに出かけた、もみの木森林公園に行く事にする。
展望台に着き器材をセットする。目の前には寂地山から恐羅漢まで1000mクラスの山並みが連なり、その下には 縦貫道を通る車のライトが微かに流れて見える。
吹き抜ける風が冷たさを感じなくなっている。空も春の霞かがった状態で、何だかパッとしない。
10cm双眼で見てみる。イオンの尾が淡くなっている。また以前とは逆に核から南側のジェットのほうが明るい。
肉眼ではダストの尾がまだ10度ほど見えるが、イオンの尾のほうはまったく見えなくなった。しかしまだマイナス等 級を保っている。スゴイ。

★4月28日
皇座山へ。透明度が良い。2日前の吉和より光害の影響を差し引いても今日のほうが上だろう。ダストの尾が以前とは違った見え方をしている。2、3度ほどはっきりした尾が以前と同じように北東に伸びて、その先から北に折れ曲がった尾が幅広く10度ほど淡く伸びている。光度もさすがにカペラより暗くなった。

★5月04日
あまり空の条件が良くない。この空ではあまり気が進まないが、今後はいつが最後になるかも知れない。日が暮 れ出してから大星山に出かけた。
さすがのHBも暗くなった感がする。今日から3.5cm双眼を使っての光度目測を再開。
ダストの尾が北西に2.5度ほど、先週見えてた北に折れ曲がった尾は見えない。
のの字方向にくねっと曲がった尾が印象的だ。

★5月09日
皇座山へ。日が暮れるのがずいぶん遅くなった。20時のHBの高度は約10度。相変わらず北西にくねっと曲がった尾が2度ほど見えている。モヤの中、集光部だけがオレンジ色にキラキラと輝いている。光度目測をすると1.1等、いまだに1等台を保っている。
結局、この日が夕空最後の観測となった。高度もまだ余裕があるし、まだ何度か見れるかとは思ってはいたが、 その後透明度の良い日を2日ほど見逃した事で、とうとう最後になってしまった。

★9月17日
台風19号が九州を横断して瀬戸内海に入ってきた。皆既月食が夜半過ぎから始まるのでそれまでに通り過ぎてくれれば良いのだが。
あちこちからHBが明け方の空に見え出しているとの情報が入ってくる。皆既月食よりもそっちのほうが気になるのが本心だ。
20h頃から雨が止んできた。夜半の晴れを祈って少し睡眠をとる。
02h過ぎに目を覚ますと雲のあいだから少し欠け出した月が見えていた。慌てて準備して室津スカイラインぞい の駐車スペースへ出かける。稜線に出ると強い西風が吹き付けてきた。
徐々に月が欠けてきて暗い星が見え出してきた。皆既月食を見るのはいつ以来だろうか?ずいぶん久しぶりの ような気がする。それにしても素晴らしい透明度でまさに台風一過。皆既月食をのほほんと眺めながらHBが上 がってくるのを待つ。
4時15分、佐田岬の上にHBの姿を3.5cm双眼で捕らえた。高度2度ほどの空ながら透明度の良さに助けられ、意 外にはっきりと姿を見せてくれている。10cmで見るとpa230°方向にコマが広がっていて、これが尾につながって いるのか? 光度は5.3等、低空でなければ肉眼でも見える明るさだ。

★10月10日
月が沈むのを待って発見されたばかりの宇都宮彗星C/1997T1を観測しようと思っていたのだが、空を覆ってい る薄曇がなかなか切れない。3時過ぎになってようやく晴れ出した時にはC/1997T1は西空の光害の中に入ってし まった。あきらめて南天低空のHBの方へ双眼鏡を向ける。しかしこちらの方も海上の雲を抜けきれず、なかなか 姿を現さない。
4時半になってようやく見え始めた。何だか暗くなったような・・・低空だけに空の状態
に影響を受けやすいのだろうか。9月の皆既月食の朝のほうが高度は低いながら、断然良く見えていた。

★10月13日
C/1997T1を見るため皇座山に登る。雲が多くなかなか晴れ間が広がらない。ようやく見つけた C/1997T1は10等 のかすかな姿。
HBは今が一番高度が高い時期で、位置的には問題ないのだが、とにかく雲が取れてくれない。それでも何度か チラっと姿を見せる。約7等くらいか? 光度を目測するだけの時間見えてくれないので、この日はとうとう光度を測れずじまいに終わってしまった。カノープスは良く見えていたのだが・・・。
結局、この日がHBを見た最後の日となってしまった。