2010年1月26日
山口県から撮影した南十字γ星


事の起こりは“うべプラネタリアン・ひささんのブログ”1月20日の記事でした。

そこには“山口県でアケルナルは見えるぬか?”という話題が書いてありました。

以前から私のメイン観測地、皇座山から エリダヌスα星=アケルナル、南十字γ星=ガクリクス、が見える条件であることは知っています。


皇座山駐車場の緯度は33.8497度、標高は460mです。
この数値からGuide8でシュミレートすると南十字γ星は20分ほどの高さに上がることになります。
もちろん大気での浮き上がり(Guideでは0度で1.5度ほど上がる設定になっています。) を考慮しての値ですが。

※GUIDE8 でシュミレートした皇座山からの南十字γ星

現在のところ南十字γ星の北限記録は同じ山口県屋代島(大島)の嘉納山、1990年に宇部天文同好会の方々が撮影に成功されています。
嘉納山の緯度は33.9117度、高度は685mで、この数値は上記の皇座山より緯度は北ですが、シュミレートすると標高が高い分γ星は高く昇り、条件が良いことが分かります。
実際に皇座山から撮影するとなると、真南の方角は山口県最南端の八島を瀬戸内海越しにはさんだ愛媛県佐田岬で、γ星が昇るどうかは佐田岬稜線の山の高さがどれほどになるかでしょう。

見るというまではいかなくても、撮影に挑戦してみるのも面白いかも。ブログを読んでそんな気持ちになりました。

1月26日朝、当日は冬型ではありましたが前日に較べてやや緩みぎみで、皇座山にしては風も無く冬の飛び雲もない、なかなか良いコンディションでした。 ω星団も肉眼で見えていて、なかなかの透明度のようです。

この晩のγ星の南中時刻は4時19分、皇座山からの南は光害も無く、γ星が佐田岬稜線を超えてくれさえすれば撮影は可能と思えました。

EM200に180mmレンズ+ニコンD70デジカメをセットし、自動でγ星の位置を導入。4時16分から1コマ120秒露出でガイド撮影を行います。
35分まで7カット撮影し、その後明るく見えていたω星団、81Pを撮影、その日は終了することにしました。

機材を収納し、車の中に入った後に液晶画面で撮影画像をチェックすると、5カット目の画像に稜線上に赤く輝く星が思いのほか明るく写っていることに気付きました。


2010年1月27日04h28mから120秒露出
NikonD70 180mmF2.8開放(ISO1600)EM200自動ガイド


2010年1月27日04h31mから120秒露出
NikonD70 180mmF2.8開放(ISO1600)EM200自動ガイド


もしかしてγ星写ってる??
急いで帰宅し、パソコンで開いた画像と星図ソフトと較べて見ます。
ひとつひとつの星を確認していくと確かにγ星のようでした。
前後のカットを見てみると、前のカットには 稜線に接するように(ノイズとの区別が怪しいですが)後のカットには稜線に隠れるように赤い星が写っていました。

なんだかやけにあっさり撮影出来てしまったなぁと思いながらも、やったぞ! という思いも込み上げてきました。




後でこの時の状況をシュミレートしてみると、 撮影出来た4時28分からの120秒露出は南中から10分ほど過ぎていて、181.2度の方向です。
この位置の西方向には伽藍山という414mの山があり、γ星はちょうどこの山の東側、稜線のくぼみの間に現れています。
180度方向は山が高くて無理なのかも知れません。

※カシミール3Dで作成

今になって思い返してみるとこの日の空のコンディションは透明度8-9/10くらいで良い条件ではありましたが、経験上、過去には更に良い日もあったと記憶しています。
それよりも南海上に雲が無かったということが、今回撮影出来た一番の要因ではないでしょうか。

今回の撮影、北限記録ではありませんが本州での最初の撮影とはなるのでは?と思います。
今後は肉眼での確認(ニコンD70デジカメはリモート撮影が通常出来ないので撮影に付っきりになってしまいます)。
そしてチャンスがあればアケルナルもターゲットにしてみたいと思っています。


※ この記事を書いた後に神戸で開催された彗星会議にて津村光則さんにお話を伺ったところ、 アケルナル、ガクリクスを和歌山県護摩壇山で撮影されているとのことでした。
(津村さんのブログに写真が掲載されてます。)
護摩壇山の緯度は34.0575度、標高は1372mです。 津村さんが護摩壇山のどのあたりで撮影されたのかは分かりませんが、おそらくこれが現在の北限記録だと考えられます。


左:皇座山から撮影したつる座。真南です。
右:1月26日当日撮影したω星団。