GOGO ゾウさん 57

インターネットが主役となる

21世紀のメディアを展望して


 ◎諸般の事情で、なかなか本誌の発行が出来ず、読者の皆様、執筆者の皆様には大変ご迷惑をおかけしました。せっかくお寄せいただいた原稿が日切れで掲載できなくなってしまったものもあります。まずもってお詫び申し上げます。
 ◎近年、メディアを取り巻く環境は、目まぐるしく変化してきました。紙に書かれた活字メディアと音声や映像の電波メディアが何とか共存し住み分けてきた時代が長く続いた後、コンピュータの急速な普及に伴うインターネットという情報手段が登場し、瞬く間にその存在感を示し始めたからです。
 ◎インターネットによる情報は、ほんの一、二年前までは、サンプル的な限定されたものに過ぎませんでしたが、いまや情報量はあらゆる分野の膨大なデータが提供され、質的にもより高度な専門的な情報源にまで自由にアクセスし、情報を得ることができるようになりました。しかも即時性においては、印刷・配送という過程を経る活字メディアは言うに及ばず、組織的な規制のある電波メディアをも凌いで、オンタイムの真新しい情報が、インサイダー、アウトサイダーの垣根を越えて、誰でも享受できるようになっています。
 ◎これまで唯一ネックとされていた、誰でもが「コンピュータを扱える」か、というハード面での障害も、もはや問題視すること自体時代遅れの謗りを受け兼ねない趨勢です。少なくともビジネスマンは、コンピュータなしの事業活動はあり得なくなっていますし、子供たちでさえ携帯電話を使ったインターネットアクセスを日常化しているのです。
 ◎そんな中で、置いてけぼりを食ってきた家庭婦人や高齢者さえも、家族の一人が仕事への必要性から家庭に一台普及したコンピュータによって、在宅の婦人層や高齢者も徐々に身近な存在へと迫ってきています。いまはまだ、主不在の間は冷たく電源を落とした状態のホームパソコンも、時を経ずテレビ同様、奥さんや家族に占領される事になるのは必定です。
 ◎本誌は、そんな時代への対応を模索して、昨年秋、試験的にホームページを開設してみました。全くと言っていいほどその存在を宣伝せず、他のホームページともリンクしない状態での利用度を三カ月間調べましたところ、多くは口コミで伝わったものと、検索エンジンをたどってたどり着いていただいた積極的な読者であることが分かりました。中には新聞を読むように毎日チェックするという方もおられ、更新をサボって叱られてたこともありました。その一部の方からメールや掲示板の書き込みをいただいていますが、年齢層も十代から八十代まで広範にわたっています。
 ◎誰もが情報の受け手であると同時に発信者でもありうるインターネットは、統制された公式情報のみならず、信頼度に疑問のあるかわりに多様な視点が注目されるゲリラ的な情報、マスにはなり得ない限定的なジャンルの情報まで手に入れることができる時代です。実はこれこそ、全ての市民がオピニオンの発言者であり、読者である、その伝達の手段としての媒体を作るというVOX創刊の趣旨だったことをご記憶いただいている読者もおられるはずです。
 ◎現に既存のメディアのニュースで、インターネットで発信された情報を後追いして報道する事例がまま見られるのは皆様ご承知のとおりです。
 ◎こうした結果を踏まえて、毎月の確実な発行が経費増嵩のため困難な現状をかんがみ、本誌は本誌なりの新しいメディア時代にあわせた住み分けを図りたいと考えています。すなわち地域のオピニオンの架け橋というVOXの創刊の志を守るため、時事問題やタイムリーな情報については今後、ホームページを通じて世に送り、本誌の方は、印刷メディアとしての特性を生かした保存されるべき資料や読物、特定の配布方法が必要な内容について、時期を定めず刊行して参ります。
 ◎このGOGOぞうさんも、ホームページでは「ゾウさんのつぶやき」と題するページで、タイムリーな問題点を取り上げて随時更新しています。
 ◎どうぞ今後はVOXのホームページをご覧ください。インターネットをまだ食わず嫌いの方もぜひこの機会におためしになってください。なお、それでも、ご都合で、インターネットを見ることが出来ないという読者のために、ホームページのプリントを郵送するサービスを行います。本誌定期購読者には更新のつど無料でお送りしますので、編集部まで電話でお申しつけください。

(2000.2)

VOX56 GO!GO!ZOUSAN

行財政改革成否のカギは
全市民を巻き込む情報公開

信頼の代償に企業秘密さえ聖域でなくなる

 ◎近ごろ売れている本に「買ってはいけない」というのがある。週刊金曜日という雑誌に連載されていたもので、食料品から家庭用品、薬品に至るまで、普通に我々が消費している大手メーカーの製品をはっきり名指しして、ダメを出している本だ。
 ◎これが売れるのは、こういう本が今までなかったからで、なぜ無かったかというと、本にかぎらずあらゆるメディアと企業は「広告」という因子で持ちつ持たれつになっているから、片っ方の商売をあからさまに攻撃することは遠慮する。この自主規制を、同書は「企業の広告は保険料だ」と断じる。
 ◎此処で一刀両断に切って捨てている理屈に信憑性があるのかどうかは、読者がそれぞれの責任で判断すべきことだが、例えば「ヤマザキクリームパン」は「パンの王様が作る添加物の塊」とし、「リポビタンD」は「ファイトも出ないスタミナドリンク剤」、「メリットシャンプー」は「抜け毛フケかゆみを呼ぶ合成洗剤」、「新ルルーA錠」は「かぜより恐いかぜ薬」と云う具合に。
 ◎見出しだけだと、毒舌ジョークのようだが、中身は真面目にいろいろデータを検証してある。更に面白いのは、こういう企画をずっと連載しても、それぞれの企業から苦情や抗議はほとんど来なかったのだそうだ。
 ◎要するに金持ち喧嘩せず、売られたけんかを買って、話題になる方が売り上げに影響して損だと云う単なる計算づくの話である。と同時に、世の中なんでも白黒がつくわけではないから、「そうとも言えるわな」と認めざるを得ない部分もあると云うことだろう。
 ◎そして、自社製品の内実を知っている食品会社の社員は、自社製品を決して食べない、という話があるように、自らがその一翼を担って世に送り出している商品に、必ずしも自信と誇りを持っているわけではなく、そこのうしろめたさは、これも生業と割り切ってきた企業風土と云うものがある。
 ◎「買ってはいけない」が打ち込んだ針は、単なるセンセーショナリズムに終わらず、そういう社会の本質の部分にまで、一つの風穴を開ける端緒となるならば、大変意義あることだろう。続編にはこれらの掲載企業に対して実施したアンケート結果をまとめたものを出すそうだし、一方では、文芸春秋が、この本に書かれている間違いを暴露する本を出すという。
 ◎こういう展開は、世の中や科学技術が複雑化すればするほど、情報開示ということが、より強く求められる方向に進むことをよく表している。企業秘密の壁は、企業責任の前ではもろくならざるを得ないのだ。
 
市長の情報公開意識を早く浸透させよ

 ◎私企業でさえ、消費者と言う市民の前には、情報の開示なしに信頼は得られないのだから、政府や自治体が国民、市民にその情報を公開するのは、当たり前のことなのだ。情報公開やってますなどとえらそうに言っても、知りたければ教えてやるから何を見せてくださいと申請せよ、などという今の情報公開制度自体が間違っているとさえ言える。
 ◎こんな問題が出来しています、と、積極的に市民に問いかけて、同じ問題意識を持ってもらうことが住民参加の自治の第一ステップなのである。新体制になった柴谷八尾市政だが、その点はどうだろう。
 ◎市長は、かなりオープンに市政の抱える問題点や課題を、庁外で喋って、職員の方が何でこんな事が洩れてるねん、とうろうろしているぐらいだから、市長の感覚と職員の感覚がまだ一致するところまで行っていないということなんだろう。
 ◎だから、現時点では、なんでも市長に直に訴えた方が話はスムーズに進むという状況らしい。市長室を秘書課より入口に持ってきた彼の熱意もそこにあるのだろうが、いつまでもそう先頭切っていると息切れするから、早く職員体制が市長のスタンスに追いつくことが必要ということなのかね。随分思い切った人事異動も断行して、新体制ここにありをアピールしたことだし。
 
  命運かかる改革検討委に期待

 ◎その柴谷市長が、今一番力を入れ、その先行きの命運、これは市長個人だけでなく、八尾市自体の命運がかかっていると言えるのが、行財政改革検討委員会だ。
 ◎京大と関学の先生を座長副座長に据え、この顔ぶれも従来の八尾市御用の学者先生から一新されたが、他五人の学識経験者(弁護士、会計士補、前市議、元職員)、産業界代表二名、市民代表公募委員五名で構成し、来年三月まで行財政システムの改善を検討する事になっている。
 ◎とりあえずは、八月三十一日の四回目までで、現在一時ストップしている龍華都市拠点区画整理、南久宝寺区画整理、市立病院建替、産業振興センター整備、工場アパート整備、火葬場整備の六事業について、ゴー・ストップの提言を出す。
 ◎いずれもどう判断するか、委員の先生方の責任は重大だ。公募した市民委員の応募も結構あったそうで、実はゾウさんも市の審議会がこれまでとどう変わったのかを見たくて、応募したのだが、恥ずかしながら論文審査で不合格になった。
 ◎だから、余りえらそうなことはいえないのだが、出した「私の行財政改革提案」は、こんなんだった。以下その全文である。
 「言うまでもなく行財政改革の原点は、「財源をいかに確保し、歳出をいかに抑制するか」ということである。これは常に執行者が心せねばならぬことに違いないのだが、財政危機という今日の状況においては、より大胆な発想とより果敢な実行が要求されることになろう。
 そこで重要なことは、行財政そのものの健全化が最終目標であってはならないということだ。健全な行財政とは、より良質な行政サービスがより効率的に提供されるシステムであり、実際に提供されるサービスが住民の満足度を高める結果をもたらしてはじめてその意義が生まれる。従って改革の視点は、単に財政のバランスシートの均衡化を目指すのではなく、限られた財政規模の中でいかに住民サービスを向上させ得ることが出来るか、というスタンスに立たなければならない。
 自主財源の確保については、おきまりの税収や国庫補助金の確保だけでなく、遊休資産の活用や処分を積極的に進めることが求められるが、ここにおいても、市直営では出来ない新しいサービスの提供を民間企業に提案し、よりフレキシブルな事業展開を可能にしつつ、民間活力の創出を図り、妥当な対価を受益者負担の原則にしたがって幅広く歳入に集約させるべきであろう。
 歳出の抑制については、事業費の抑制と人件費をはじめとする庁費の抑制を積極的に進める必要がある。
 事業費の抑制については、PFI等の活用により可能な限り民間企業で実施できるものは民間にまかせるという姿勢をとるべきであり、その実行に当たっては、コストダウンと質的向上を両立させるため競合する直営部門も含めた競争を促進する方策を検討すべきだ。
 人件費については、専門職員の採用範囲を拡大し、その道のプロによる質の向上を目指しつつ、窓口業務などについてはアウトソーシング化を図り職責と報酬のメリハリをつけ、全体として人件費の抑制を図る方向を進めるべきである。既存の職員についても「やってもやらんでも給料は一緒」という雰囲気を払拭するためにもボーナスで差をつけることぐらいはしたいものである。そのためにも勤務評定のシステム化は急がれるべきだ。
 最後に、財政面だけの改革によって確保される財源を有効に使うためには、ありきたりの「市民ニーズに的確に対応した施策の選択」というだけでなく、施策の選択理由を公開できるように客観的かつ科学的な根拠を持たなければならない。そのための徹底的かつ積極的な情報公開を推進することは言うまでもない。」
 ◎まあ、当たり前のことしか書いてないから、自慢するつもりは無いが、要するに、少なくともこんな程度のおざなりなものでは、合格しないほどのレベルの委員が選ばれたということなのだから、出てくる提言も今までどこの誰も出したことのないような画期的な新機軸になるに違いない、大いに期待したいのである。
 ◎「あんたあきめへんでした」と、ごていねいに、今を時めく総合調整担当の大西次長が言い訳に来てくれたが、聞けば、他の落選組にもえらいさんが手分けして回ったんだそうな。ここらは、まだまだスマートじゃないね。
 ◎なかには、どいつじゃおれの論文を不合格にしやがったのは、とお冠の向きもあったそうだが、それだけ皆が真剣に応募するという事は、八尾市民も頼もしい限りですな。そんななかから勝ち残った合格委員の皆さんなのだから、これは是非がんばってもらわにゃ困る。
 ◎当然情報公開を、基本姿勢に据える柴谷市長だから、どの委員がどう発言したのかと云うことは、明らかにされるのだろうが、願わくば全部すんだ後の気の抜けたビールじゃなく、審議の過程で市民が同時進行して問題意識を持てるような配慮があってしかるべきだろう、と思いますが。
 ◎兎にも角にも、八尾市再建の画期的なアイデアが打ち出されることを切に祈る、腑甲斐ない落選ゾウさんの巻でありました。

(99.8.10)