第103回 生涯現役講座記録

左=記録の太田、中央=細田講師、右=門口代表

日 時:平成22年3月28日  13:30〜15:15  
場 所:能見台地区センター2階 多目的室           
参加者:41名                        
演 題:『放送ではしゃべれない相撲の裏話』
     元文化放送アナウンサー  細田 勝 氏

細田勝講師

プロフィール

 同氏は昭和29年早稲田大学卒業後、文化放送にアナウンサーとして入社、ラジオの各種番組を担当のほか、スポーツ番組に永年携わり、特に相撲放送では15年間ご活躍されました。

 ただ今ご紹介いただきました細田でございます。この会にお招きいただき感謝しております。有馬稲子さん、宗像弁護士さんの後では格が違いすぎるので恐縮しています。今日はみなさんが普段余り聞かれない相撲界の裏話をお話します。

 まさに今日は春場所の千秋楽日です、優勝は白鵬で間違いないでしょう。把瑠都の大関昇進も確実でしょう。いずれも日本人でないのが残念です。日本人の大関、横綱になれそうな強い力士が今のところ居ない。私は栃東が横綱になればと期待していましたが体力の面から、叶わず残念でした。

 最初に相撲界の言葉から説明しましょう。

 まず「ちゃんこ」。相撲界独特の言葉です。お相撲さんが作る鍋料理をちゃんこ鍋と言います。「ちゃんこ」の語源は諸説あるが「師匠といえば親も同然、弟子といえば子も同然」親と子が一つ鍋を囲んで食べるから「ちゃんこ」という説もあるがマユツバモノです。お相撲さんが鍋を食べるようになったのは明治の時代からです。当時の言葉は今日では差別用語に該当しますので表現できないが、古くから相撲界に伝わる言葉です。

 次に「よかた」。相撲人種は力士、床山、行司、呼出をいい、それ以外の人を「よかた」と言います。 次に「ごっちゃんです」。相撲界では「ごちそうさま」と「ちょうだい(下さい、欲しい)」という二つの意味があり、よく使われます。お相撲さんのことを「ごっちゃん人生」とよく言います。 この様な言葉を頭に入れておいて下さい。

○ 相撲に八百長は本当にあるのか?

 おおかたの日本人は相撲には八百長があると思っている。思っていてもこれが八百長だという証拠を出すわけにも行かないし、出すことも出来ない。新しいところでは某出版社の記者の八百長記事で協会側と裁判沙汰を起こしているが証拠がないので勝ち目がない。

 相撲は寛政年間に非常に盛んになり講談とか浪曲によく出る。その時代の「寛政力士典」によれば当時幕府から全職業人に「鑑札」が交付されていたが相撲界は芸者、太鼓もちと同一職業と分類され「芸者、太鼓もち、相撲」の鑑札で興行を行っていた。この様な事情を理解して八百長ということを判断して下さい。

 昭和29年の初場所14日目、東京地方は朝から大雪、夜には20センチも積雪。真夜中の12時に両国橋の上で横綱東富士と横綱吉葉山が二人だけで会っていた。両者は14日まで全勝同士、千秋楽に対決、勝った方が優勝となる。その時吉葉山は「明日の相撲はごっちゃんです」と言い、東富士ハ「ウン」と答へた。そして千秋楽の勝負は1分余の大相撲の末、吉葉山が勝つ。吉葉山初優勝、東富士は勝てば4回か5回目の優勝だった。吉葉山は涙を流して喜んだ。 この事実は既に二人は故人なので確認のしようがないが、私が文化放送で相撲放送を担当していた時に相撲解説者だった東富士さんから直接、両国橋の話を聞きました。この話はうそ偽りのない話です。この両国橋の上で二人が会ったということは当人以外誰も知らないし証拠もない。ですから相撲というのはTVを観ながら「あれは八百長相撲だ」やれ「ガチンコ(真剣勝負)だ」と言って酒の肴にして観るものだと理解して下さい。

 細田は相撲界の「忍術使い」と自認しています。正面からでなく側面からまた裏面から取材し、行動することを得意としていました。そこで裏話を二つ三つ・・・

・朝青龍の口上のこと。

 朝青龍が横綱に推挙され協会の使者に答礼の言葉を述べているが、その言葉を作ったのはこの私です。「これからは稽古に精進し、相撲道発展のために一生懸命頑張ります」と。この経緯は優勝後の千秋楽打ち上げパーティーの時に私は口上はどうするのかな?と心配になり、高砂親方は作れないだろうから、ましてや朝青龍本人が作れるわけがないからと思って私が作って高砂親方に渡した。親方はチラッと見て「ありがとう」と言って懐にしまった。口上当日、何か削ったり、付け加えたりしているかなと注意して聞いていたら、私が作ったセリフそのままで大きな声で発言していました。朝青龍本人はこのセリフを細田が作ったことは知らないと思う。

 白鵬の時も細田が作ったが白鵬は自分で作ったものを使った。私は「日本人の心は心として・・・」と作ったが白鵬は「精神一到の気持ちで・・・」と作った。「精神一到何事かならざらん」まで続けなければ正しい日本語にはならない。外国人力士にはこれ以上のセリフを期待しても無理だと思っている。

・天皇陛下と御酒のこと。

 天皇陛下が大相撲観戦に国技館にご来臨される時には、日本酒をお持ちになり下賜されることが多い。その御酒を協会は各部屋毎に分配するのだが力士間ではなぜか飲まれない。そこで細田が忍者として本領発揮。その御酒を部屋の関係者から手に入れたことがある。我々には貴重な御酒でした。一時代前はタバコと酒でしたが近年は酒だけになりました。

・外国人力士のこと。

 今、協会で最大の懸案事項は外国人力士の問題だと思う。現在52部屋あるが外国人力士の居ない部屋は2部屋のみ。なぜ問題かと言うと5年前協会は外人枠を1部屋1人と決めたが、当時既にモンゴル人が多数来日しており、その力士を日本に帰化させ外人枠を空けさせて、新しい人を入門させる様にしている部屋が出てきた。そうすると1部屋1人の枠は有名無実化してしまう。それを防ぐために、先般も申し合わせルールを守ろうと話し合ったが果たして守れるかどうか疑問である。私は1部屋3人か5人に枠拡大して、ルール厳守を徹底する必要があると思う。自分の部屋さえ強くなればと考える親方が多く、大相撲界全体を考えてる親方は少ない。このまま行けば10年以内に外人力士のみになる心配が大きい。相撲界滅亡あるのみだ。

・「感動した」と名セリフを生んだ取組みのこと。

 小泉元総理の「感動した」とのセリフを生んだ武蔵丸と貴乃花戦は相撲フアンに強い印象を残した。武蔵丸は相撲界入門前からアメフトで痛めた首に持病があつた。あの大一番の武蔵丸は本割で勝っているので、この勝負に勝てば日本中から非難を浴びるだろと最初から戦意が減退していた。首に持病があるため頭から突っ込む作戦は避け、組んだら貴乃花有利なのを承知の上で左四つに組み、貴乃花得意の上手投げに敗れた。貴乃花は涙の優勝を飾り、表彰式で時の総理大臣から「感動した」との名セリフを引き出した。私の目からは片八百長に写るが微妙な問題だけに何とも言えない後味の悪さが残ります。

○ お相撲さんの奥さんはなぜ美人ばかりなのか?

 力士の奥さん方は確かに美人が多いが美人ばかりではない。某親方の奥さんは一般的な女性です。美人は目立つからその様に思われるのかもしれません。

○ お相撲さんはどうしてあんなに肥るのか?

 力士は食べて寝る、食べて寝るの繰り返しの生活が続くからです。起床して11時ごろまで稽古、入浴後食事。丼飯5杯位詰め込まれるほど食べさせられる。食べて寝ることが肥る原因でしょう。

○ お相撲さんはどうしてあんなに歌がうまいのか?

 上手な力士がTVに出演しているからその様に思われているが、音痴な力士もかなりいます。某元横綱などは口が裂けても唄わないタイプ。その代わり奥さんが上手、詩吟の先生で武田節が得意で打ち上げパーテイーの時には必ず唄う。上手なのは解説の北の富士さんでレコードを出したことがある。増位山さんや琴風さんも上手です。朝青龍も上手な部類に入ります。

・力士手形のこと。

 「横綱貴乃花の手形」額入りを持参したのでみなさんにご披露しましょう。(回覧) 力士はまげを切ると手形は作らない。手形は「墨」と「朱」があるが「墨」の方が長期保存に適している。貴乃花は現役時代いわく因縁があって手形をあまり作らなかった。協会では地方巡業時、警察署や消防署へ挨拶に行くとき手土産に人気力士の手形を持参するが貴乃花の手形は人気絶大で貴重品扱いであつた。手形の大きさNO1は小錦、NO2は曙です。

○ 質疑応答

Q 引退後 親方になれない力士はどのような人生を送るのか?

A 概ね 幸せではありません。ちゃんこ料理は誰でも作れるがちゃんこ屋を開業して、しかも成功している者は数少ない。名もない力士達は体力を生かした職業に着くが決して幸せな生活を送っているわけではない。

Q 引退後 体重調整はどの様に行うの、やせ方の秘訣があるのでしょうか?

A 某元横綱は大減量したが医学的には失敗です。無理な減量は避け、除々に行うのが普通です。生活習慣が特に食生活が変わり食が細くなる。特別な減量方法はございません。無理して減量するのは健康に悪く力士の平均寿命は短い、特に元横綱は短命者が多い。

Q 桟敷席(ます席)の切符はなぜ手に入らないのか?

A 席は東西南北に1~16番と区分され、値段も松竹梅と3段階に分かれている。協会は御茶屋経由で切符を売っているが、毎場所一般に売り出しているわけではなく、昔から永年買い続けている得意先(企業等)がいるのです。ます席得意先は「未来永劫買い続けるのが原則」なので一般にはなかなか出回らない。倒産でもして権利を手放せば空き待ち人に行くが希である。入手するには、ます席権利者に縁故で交渉する方法か、半端ます席を利用する方法がある。チケット・ピアで販売しているのでお買い得です。「半端ます席」とは、ます席設計上コーナーに一人ます席、二人ます席と作られる席のことです。

 タマリ席・・・土俵下にある、ます席と土俵との間の席のことです。「大相撲維持会員の席」が正式名称で現在会員は69名、限定です。永年大相撲発展に協力してきた方々の席です。通称、砂かぶりとも呼ばれます。

Q 懸賞金の額はいくらですか?

A 土俵上で渡される熨斗袋の中は3万円です。スポンサーからは1本6万円ですが税金で6千円、協会手数料で5千円差引かれ、残り1万9千円は本人名義の銀行口座に積み立てておく。そして不時の出費に備え、引退時には本人に渡される仕組みです。

 それでは時間が参りましたのでこれで終わります。ご清聴ありがとうございました。


記録担当 :太田吉信さん

(記録担当 太田吉信)