題名: 【北野高校図書館メルマガ本の森】明るい数学
日時: 2017年12月18日 14:02

数学の難問「ABC予想」のニュースが報じられました。


●長年にわたって世界中の研究者を悩ませてきた

 数学の超難問「ABC予想」を証明したとする論文が、

 国際的な数学の専門誌に掲載される見通しになった。


 執筆者は、京都大数理解析研究所の望月新一教授(48)。
 今世紀の数学史上、最大級の業績とされ、

 論文が掲載されることで、
 その内容の正しさが正式に認められることになる。

 http://www.asahi.com/articles/ASKDD5Q6MKDDPLBJ007.html?iref=comtop_8_01


記事には、望月さんの在籍する京大の数理研の紹介もありました。
そこには語り継がれている言葉があるそうです。


●数理研に在籍したスターの一人が佐藤幹夫・京大名誉教授(88)。
 微分・積分などの解析を代数の手法で考える「代数解析学」などの理論を切り開き、
 ノーベル賞と並ぶとされるウルフ賞を2003年に受けた。


 三輪哲二・京大国際高等教育院特定教授(68)は
 東大4年の時に佐藤さんの講義を聴いて数理研へ。
 「見たことない数学が出てきて、わからないのに興奮した」


 育った弟子らは「佐藤スクール」と呼ばれた。
 佐藤さんが弟子に伝え、語り継がれる言葉がある。


 「朝起きた時にきょうも一日数学をやるぞと思っているようでは、
  ものにならない。
  数学を考えながらいつの間にか眠り、
  目覚めた時にはすでに数学の世界に入っていないといけない」


さて、その「ABC予想」とはどんなものなのか?
記事には説明があるのですが…。
 http://www.asahi.com/articles/ASKDG73TVKDGPLBJ003.html?iref=pc_extlink


…といわれても「?」。
しかし、次の説明には、
門外漢にもなんとなくわかったような気に。


●"独創的すぎる証明"「ABC予想」をその主張だけでも理解する
 http://www.ajimatics.com/entry/2017/12/16/175035


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図書館には今回、
数学科の先生方絶賛の
『数学30講シリーズ』が入りました☆

ほんとうの数学の世界に分け入るための導き手になることでしょう。
ぜひ、手に取ってください!


●志賀浩二『数学30講シリーズ』(紹介)
 第一回日本数学出版賞受賞。
 微分積分/線形代数/集合から群論/ルベーグ積分/固有値問題に至るまで、
 全十巻を志賀浩二先生が単著で書き表した、日本を代表するシリーズ。


 各巻は本文30講とコラムで構成されており、
 著者自身が語りかける言葉は体系的理解のみならず、
 なぜそれらの分野が生まれ発展していったのかという歴史的考察まで含まれている。
 数学は文化である!


次の志賀さん自身のことばを読むと、
この書き手のことばの確かさがはっきりと伝わってきます。


「私の中に育てられてきた数学の世界は,
 しっかりとした, 明るい形をとっている」


いいなあ。


明るい数学を

明るい部屋で。


●数学30講シリーズ「刊行のことば」(志賀浩二)

 数学の本というと, ごくやさしい解説書か,

 スタイルのほぼ決まってしまった教科書の類しかないという現状に,
 私は前からあきたりない思いがしていた.


 私の中にいつしか育てられてきた数学の世界は,
 解説書で述べられているよりもっとしっかりとした, 明るい形をとっているし,
 また, 教科書の中で示されているような,

 乾ききった生硬な姿も示していないようである.


 一つ一つの事柄は, 明確に述べられていながら,
 しかも柔らかいスタイルで表わされているような数学書はないものであろうかということは,
 かなり前から, 私が時折り模索していたものであった.


 この数学30講シリーズは, それに対する私の一つの解答である.


 このシリーズの斬新さは, 何よりもまずその形式にある.
 読者が読まれるとわかるように, 形式が内容を決めている.
 一つ一つの講は, ひとまず完結したテーマを取り扱いながら,
 全体として30講という流れの中につながっていく.


 読者は, 一つの講を読まれて, 次の講へと移るたびに,
 一つの波を乗り越えて次の波へと向かうような,
 軽快なリズムを感じとられるのではなかろうか.

 このリズムは, まさしく数学そのものの中に息づいているリズムである.


 1講, 1講の分量は,

 読者がたとえば通学・通勤の途中でも読める程度のものである.
 しかし, もし1日1講を追って,

 1冊を1か月で読み上げられるならば,
 そのときは取り上げた主題について,

 ひとまずの知識と理解を得られたと感じられるだろう.


 そして,

 数学の意味とでもいうべきものがもたらす,
 ある柔らかい調べを,
 その中から聞きとっていただければよいがと思っている.
 http://www.asakura.co.jp/nl/series0101.html


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