題名: 絶望を乗り越えて

2020/07/30


新聞の連載コラム。

哲学者の鷲田清一(わしだきよかず)さんが

『死に至る病』からキェルケゴールのことばを引用していました。



「絶望していないこと、いいかえれば

自分が絶望していることを意識していないこともまた

まさに絶望の一つの形である」



絶望していないことが絶望だ、って、どういうこと?



何かについて絶望している自分にさらに絶望し、

そこから眼を背け、

抜け出そうとすること。



鷲田さんは、

「時代の危機もおそらく同じで、

危機を危機として受けとめる感覚の消失こそ真の危機なのだろう」

と書いています。



もうダメかもって思ってる自分たちがイヤ。

だから、みんなで見ないようにしようぜ。



―――



コロナ禍のニュースがあふれる中で、

こんな事件が報じられています。



難病の女性に頼まれ、

薬物を使って殺害した疑いで医師2人が逮捕。

医師の1人は、

「苦痛なく死なせてやることはできる」

などと匿名でツイートしていたとされる――。



容疑者のものとみられる投稿には、

手塚治虫の漫画の登場人物の名前がたびたび出てくるそうです。



「やっぱりオレはドクターキリコになりたい。

というか世の中のニーズってそっちなんじゃないのかなあ」



「俺がもしも開業するなら、

ドクターキリコしかないなといつも思う。

自殺幇助(ほうじょ)になるかもしれんが、

立件されないだけのムダな知恵はある」



「ドクター・キリコ」は、

安楽死を金で請け負う医師。

手塚の『ブラック・ジャック』に登場します。



生きることをあきらめかけた患者に医師は何をすべきか。

天才外科医ブラック・ジャックはキリコと激しく対立します。





『図書館報』は読んだでしょうか。

佐々木先生の「洪庵のたいまつを繋ぐ」に出てくる幕末の医師、

緒方洪庵なら、この事件をどう考えたでしょう。

西田先生が取り上げた『ペスト』の作者、カミュなら?



『ペスト』からこんな引用が紹介されていました。

ペスト禍で人が次々死んでいく中、

登場人物のひとりが、こう言うのです。



「直接にしろ間接にしろ、

いい理由からにしろ悪い理由からにしろ、

人を死なせたり、死なせることを正当化したりする、

一切のものを拒否しようと決心した」



森岡正博『無痛文明論』という本は、

私たちは、

「苦しみを遠ざける仕組みがはりめぐらされ、快に満ちあふれた」社会

に生きていると指摘します。



危機を危機として受けとめる感覚が麻痺したとき、

私たちはほんとうの『死に至る病』に陥るのでしょうか。



この夏、

色んな本を読んで考えてみませんか?

ほんとうの絶望に陥らないために。




『ブラックジャック』【726/T1/8】

『緒方洪庵』【289/J1/1-284】

『ペスト』【953/C1/11】

『無痛文明論』【114/M5/2】





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