題名: [本の森-北野高校図書館-_00018] 勉強の哲学☆
件名: [本の森-北野高校図書館-:00018] 勉強の哲学☆
日時: 2017年6月14日 15:06

梅雨晴れ間、
図書館はひんやりしてます。

新着本、続々並んでます。
ぜひ、見に来てね♪

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前回、
いろんなコンテストの紹介をしたら、
さっそく資料を見に来た人がいました。

みなさんもポスターをふらりと眺め、
「あ、」
と思えば写メ撮って検索し、
応募要項見てください。
(最近はたいていネットからでも応募可)

読むのは当然として、
ぜひみなさんは、
書ける人になってください。

じつをいうと、
書けないと読めないのです。

勉強とは、
書くことです。

書けないとわかったことにはならないし、
書けないと自分は変わらないし、
書けないと世界は変えられない。

それが、
日本語であろうと、
英語であろうと、
数式であろうと、
プログラムであろうと――。

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この春、
話題の人文書が三冊、
立て続けに出ました。

國分功一郎『中動態の世界 意志と責任の考古学』
http://webronza.asahi.com/culture/articles/2017041800002.html
東浩紀『ゲンロン0 観光客の哲学』
https://mainichi.jp/articles/20170423/ddm/015/070/027000c?ck=1
そして、
千葉雅也『勉強の哲学 来たるべきバカのために』。

すべて読みましたが、
『中動態…』は、〈自由〉ってそういうことか、という驚きをもたらし、
『観光客…』は、今の〈世界〉の構造と問題を鮮やかに示し、
それを開く〈可能性〉を説く――
そんな感じ。

三冊とも、まちがいなく、
大学の入試問題、模試の問題、教科書教材なんかにもなっていくでしょう(!)。

北野の図書館には、
千葉雅也『勉強の哲学』が入っています。
東大京大生協書店で一位になったそうですが、
まさか試験で点を取る方法が書いてあると思ったんじゃねえよな(笑)

「周りに合わせて生きているというのが、通常の、デフォルトの生き方」
だと千葉さんはいいます。
勉強を深めるのは、
そういう「環境のノリ」から自由になるためだ
というのがこの本の答えです。

わたしたちは、
「会社なり学校なりのコードに合わせて」
「習慣的に、または中毒的に、〈こういうもんだ〉という、
ある特殊なしゃべり方や動きをして」
生きています。

そこから自由になるためには、
ことばの使い方を変えなければならない。
ことばの自由度を上げなければならない。

一番、心に残ったのは、これ。

「可能性をとりあえずの形にする。言語はそのためにある。」

おそらく数学が発展したのは、
実用とか目的とか、
〈こういうもんだ〉というコードから離れ、
純粋に論理と戯れることによって、
「可能性をとりあえずの形に」しつづけたからでしょう。

自然言語だって同じです。
思想も、そして、最も純粋な形では、文学も、
「可能性をとりあえずの形にする」、
つまり書くことで世界を作ってきたのです。

…というようなことが書いてあるんです。
(もうチット難しげに、しかし正確に)

進学や就職するときに、
「志望理由書」を書かされたり、
「小論文」を書かされたりします。

そのときみなさんは、
おそらくそれまで考えたこともないようなことを書かねばならない羽目になります。

だって、
高校生なんて、
仲間うちの特殊なノリのしゃべり方しかしてないからね。

「医学の使命」なんてことについて
友達としゃべったりしないじゃん。
「難民の現実をどうとらえるか」について
ラインで書きあったりしないじゃん。

でも、課されて、考え、
初めは自分のものではないようなことばでぼそぼそつぶやき、
そして次第に、
何かが変わっていく。
何か、これまでとは違う深いところを使っているような感覚になる。
ことばが変わってくる。
そして、顔つきが変わってくるんです。
何度も目撃してます。

『勉強の哲学』にいわせると、こうなる。

「慣れ親しんだ「こうするもんだ」から、
別の「こうするもんだ」へと移ろうとする狭間における言語的な違和感を見つめる。

そしてその違和感を、「言語をそれ自体として操作する意識」へと発展させる必要がある。

現実に密着した道具的な言語使用から、
言語をそれ自体として操作する玩具的な言語使用へと移る。

道具的な言語使用がメインになっている自分を破壊する。」

むつかしーね。

書くことで別の可能性が開く。
まだ医師でもない自分に医師の世界の可能性が開く。
国連で働いている自分の可能性が開く。

言語的に可能性を開いてもらいたい。
「志望理由書」はそれを求めてるわけ。
というか、
そのようにとらえられた人だけがその世界に行く資格を持つのです。

「深い学び」といったことばが流行りみたいになっていますが、
ほんとにわかって使いたい。

まあ、
いっぺん読んでみなはれ。

千葉雅也『勉強の哲学』
http://president.jp/articles/-/22113

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