PART 4 - ローズマリー/夏夕介

福井利男岡田志郎はオックス解散後、ムード歌謡の香りのするピープル、そしてネオGSバンドと呼ばれたローズマリーと、70年代にかけてバンド活動を続けた。
夏夕介はオックス解散後、歌手としてソロ活動を始め、現在は俳優として活躍中である。
ピープル、ローズマリー、およびキングス(岩田裕二と福井利男が、オックス結成前に在籍)、そして夏夕介のディスコグラフィーを掲載した。

ローズマリーは何度かメンバーチェンジもあり、レコード会社も移籍しているが、わかる範囲でメンバーと曲名を紹介した。  

ピープル/ローズマリーのジャケット写真は、enn8801さんのサイトとリンクさせていただきました。


ピープル

福井利男は71年のオックス解散後、ピープルというバンドを結成して活動を開始した。メンバーには、オックスの先輩・キングスの上田耕三も加わり、また岡田志郎も、半年後の71年11月に、このグループに参加している。
ピープルは、1972年4月ワーナーパイオニアから「恋人たち」というシングルでデビューした。 


ローズマリー(トリオ時代)

その後新しいメンバーを加えてリフレッシュさせ、よりロック色の濃いバンドに生まれ変わったのが、ローズマリーである。

1973年8月にトリオから「あいつに気をつけろ」という、加瀬邦彦作曲のシングルをリリースしている。 B面はこの英語版である。

ローズマリーは、GSブームが終わって数年後に結成されたにもかからわず、グループサウンズの影を強く残しており、同時期のバンド、「チャコ&ヘルスエンジェルス」らと共に『70年代GS』と呼ばれたりした。

デビュー当時のメンバーは:

福井利夫(リーダー/ベース・元オックス)
岡田史郎(リードギター・元オックス)
中尾喜紀(ヴォーカル・元ピータース、ロックパイロット)
上原おさむ(キーボード・元オリーブ)
東冬木(サイド・ギター →現 モト冬木)
愛川かつみ(フルート/パーカッション・元ピープル)
武田泰(ドラムス)、  

その後も「ふたりの休日」「センチメンタル急行」「傷心」と、トリオからは計4枚のシングル、そしてLPを一枚残している。
ファースト・アルバムのタイトルは「あいつに気をつけろ!/ローズマリー」
元ワイルドワンズの加瀬邦彦や、元アウトキャストの穂口雄右などGS出身の作曲家が、ローズマリーのシングル曲を手がけている。LPの方もやはりGSに携わっていた人が多く曲を提供した。

ローズマリー(フィリップス時代)

ローズマリーはその後、レコード会社をフィリップスへ移籍。
メンバーもチェンジして、1976年6月に「可愛い人よ」をリリースした。なんと、B.C.R.(ベイ・シティ・ローラーズ)もびっくりのタータンチェックのファッションには驚かされた。

この曲はクック・ニック&チャッキーのヒット曲のリメイクで、御機嫌なディスコナンバー。ブルース・インターアクションズ「ディスコ歌謡コレクション」でCD化されたのだが、このCDが現在入手可能かどうかは不明。

この後期のメンバーは:

元オックスの福井利男(ベース)、岡田史郎(ギター)の他、夕己ハルオ(ドラムス)、堀としゆき(キーボード)、そして伊丹サチオ、弾ともやの二人をツイン・ヴォーカルに加え、アイドルっぽいカラーを強めている。

伊丹幸雄は、元ワイルドワンズのバンドボーイ出身。「青い麦」でCBSソニーからデビューしており、甘いルックスで、70年代初等にアイドルとして人気を得た。
弾ともやの方は74年に「土曜の午後のロックンロール」でソロ・デビュー。アイドルながら、その歌唱力には定評があった。 後に歌手・生沢祐一として活躍する。

ローズマリーはその後も「ラブ・ミー・ライク・アイ・ラブ・ユー」と「悲しきミツバチ」の2曲をリリースした。


後期ローズマリー:前列右から 福井利男、伊丹サチオ、弾ともや、
後列右から 岡田史郎、堀としゆき、夕己ハルオ

 

参考文献: 
『リメンバー』SFC音楽出版
『GS & POPS』グリーンフィールド
『日本ロック紀』白夜書房 他


ディスコグラフィーピープルローズマリーキングス

ピープル 

EP
恋人たち(橋本淳/筒美京平)13月の森(宇佐美京平/佐瀬寿一)1972年4月 ワーナーパイオニア L-1082

ローズマリー

前期(トリオ時代)                                       

EP 
あいつに気をつけろ  B面:英語版(作曲:加瀬邦彦/編曲:井上尭之)
1973年8月 3A-108

ふたりの休日 (作詞:不明/作・編曲:穂口雄右) 悲しい旅(作詞:不明/作・編曲:穂口雄右)
 3A-122

センチメンタル急行(作詞:松本隆/作曲:穂口雄右)はじめての朝(作詞:/作曲:不明)1974年7月21日 3A-127

傷心(いたみ(作詞:松本隆/作・編曲:馬飼野康二)/ 一枚の銅貨( 〃/〃/〃) 1974年12月 3A-129 

LP
■ファーストアルバム 「あいつに気をつけろ!/ローズマリー」
あいつに気をつけろ!/俺のあいつ/青春の痛み/可愛い悪魔/ゴーイング・マイ・ロード/愛はときめく/出来ごころ/マック・ラ・ヤミ/セシール/哀愁の協奏曲/ローズマリー/麗しの面影/

 

後期(フィリップス時代)
EP
可愛いひとよ(作詞:阿久悠/作曲:大野克夫/編曲:深町純)恋は火の鳥(作詞:岡田富美子/作曲: T.Eyers /編曲:深町純) 1976年6月5日 FS-2014 
※「可愛いひとよ」はCDで聴ける。 「ディスコ歌謡コレクション・ ユニバーサル編」PCD1564 ブルース・インターアクションズ/Pヴァイン に収録。


ラブ・ミーライクアイ・ラブ・ユー 
(作詞:岡田冨美子/作曲:Stuart Woods / 編曲:ローズマリー)
/ ロックンロール・ラブ・レター(作詞:岡田冨美子:作曲:Tim Moors / 編曲:ローズマリー)
グッバイ・ヘンリー(作詞:麻生香太郎/作・編曲:あかのたちお)
悲しきミツバチ(〃/〃/〃)


                         

福井利男と岩田裕二は、キングスというGSの出身である。二人が参加したキングスのデビュー曲を紹介しておきたい。 キングスは福井・岩田両名の脱退後も、メンバーを変えて活動を続けた。 キングスのリーダー・上田耕三は、後にピープルのメンバーでもあった。

キングス

■アイ・ラブ・ユー( 作詞:清水芳夫/作曲:福井利男)空と海(作詞・作曲:松田篝)
※清水芳夫はオックスのマネージャー 
1967年9月5日   POLYDOR SDP-2009
※「アイ・ラブ・ユー」はCD化。 「蒼いムードのGSナイト」 パレード(新星堂)
 SPW-10031に収録されている。



夏夕介

オックス解散後、夏夕介は歌手活動を経て、現在も俳優として活躍中である。
ソロ・シンガーとしてのデビューは、1970年12月ちょうど20歳のときである。まだオックス在籍中に「田浦幸」から「夏夕介」と名前を変え、福井利男作曲の「涙が燃えて」をビクターからリリースしている。 もちろん路線は青春ポップス。 同じころデビューした夏夕介、にしきのあきら(現・錦野旦)、野村真樹の3人は当時『ビクターの3N』としてプッシュされていた。

「涙が燃えて」
  ♪わかれた日から 涙が燃えて
   けむりが胸に しみるのさ(作詞:宇山清太郎)

この曲はオックスのコンサートでも歌われていたが、オックスの演奏はシングル盤のオーケストラ・アレンジよりはぐっとワイルドで、ギターの音がカッコいい。
B面の「あこがれの人」は、三田明などの青春歌謡の70年代ヴァージョンというべきか。 どこか古風な恋を歌うフレーズが初々しい。
 
「あこがれの人」
   ♪名前も知らないで、あこがれた人(作詞:さがゆうこ)

ソロ2枚目の「愛と栄光の日々」は翌年コロンビアに移籍してから発表された。 すでにこの年、1971年の5月にオックスは解散しており、夏夕介として完全にソロ活動に入っていた。

移籍第1弾は、橋本淳・すぎやまこういちのコンビの楽曲だった。ジャケット写真は表裏とも、当時流行のファッションでしっかり決めている。

「愛と栄光の日々」
   ♪二人だけの世界は バラと夢の花園(作詞: 橋本淳)

と、サビの部分の詞が、いかにも橋本淳。女性コーラスの声がからむ曲は、今聴くとちょっとアニメの挿入歌っぽい印象を与える。
さてそのB面「いつまでもいつまでも」は、なんとGS/ザ・サベージのカバーなのである。オリジナルは1966年のヒット曲だ。

「いつまでもいつまでも」
    ♪そよ風が僕にくれた 可愛いこの恋を
     いつまでもいつまでも 離したくない いつまでも
                    (作詞:佐々木勉)

元オックスのメンバーがザ・サベージの曲を歌っているのは意外な気がしたが、限りなくさわやかなカバーに仕上がっている。本人のお気に入りの曲だったのだろうか。

俳優としての夏夕介の活動は、「野良猫ロック・ワイルドジャンボ」(1970年)など映画が先だった。その後「美人はいかが?」「光る海」などのテレビドラマに出演。 「突撃!ヒューマン!!」(1972年)では、特撮ヒーローもので主演を演じ、テレビを主な活動場所とするようになっていく。 

シングル第3弾の「君がそばにいるから」はドラマの挿入歌として、1973年に出された1枚である。朝日放送の「嫁サこらしょ」の中で、恋人役の梓英子にギターの弾き語りできかせるのが、この曲だったのである。 ヴォーカルはちょっと加山雄三風。ジャケット写真ではもちろん、白いギターを持っている。

「君がそばにいるから」
   ♪きっと しあわせ離さない
    君がそばにいるから もう他にはなにも欲しくない
                    (作詞:津坂浩)

B面の「絵里加」は、去って行った絵里加という名の少女を想う歌。

「絵里加」
   ♪美しい花が 一つ散った(...)
    髪の長い絵里加は去った (作詞:高瀬タカシ)

この曲が結局、彼が出した最後のレコードとなった。1974年になると、ドラマ「愛と誠」の誠役で注目され、いよいよ本格的に俳優となっていくからである。「赤い疑惑」を皮切りに、山口百恵主演のシリーズ・ドラマにも、ずっと出演するようになる。 
もう一つのヒーロー物「宇宙鉄人キョーダイン」(1976年)のスカイゼル役にも隠れたファンが多い。



「東映ヒーローMAX vol.1」  
 タツミムック(辰巳出版) 2002年5月18日 
 ■夏夕介インタビュー
 オックスから「キョーダイン」「スカイゼル」、そしてシアタージャパンでの  現在までを語っている。

しかしなんと言っても忘れられないのは、長年にわたりレギュラーをつとめた特捜最前線(1979年)の叶旬一役だろう。翳りのある叶刑事の人気は、今でも特捜ファンの間では絶大である。くわしい叶刑事情報については、特捜関連のサイトなどをご覧いただきたいが、番組の中でピアノを弾くシーンがあったことを特筆しておきたい。

第339話の「愛を裏切った女!」の中で叶刑事は、「哀愁のピアノワルツ」、浅川マキの「夜が明けたら」、トワ・エ・モア「誰もいない海(インスト)」をピアノで披露。さすがミュージシャン出身の俳優らしく、その姿はファンの注目を集めた。
 
現在、夏夕介は 劇団シアタージャパンで、主に舞台を中心に活躍中である。ミュージカルでは歌声も聴かせてくれ、その二枚目ぶりは健在である。
 
また映像の方でも、Vシネマ『首領への道』13 巻、14巻に出演している。

(夏夕介が残したソロ・シングルは合計3枚、計6曲である。 オックスには後期に加入したため、彼のソロはオックスのアルバムの中に収録されるチャンスがなかった。 今のところ残念ながら、中古レコードとして聴くより他はない。確かにその後しっかり俳優になってしまったので、ともすればオックス時代、ソロ・シンガー時代のことは忘れ去られがちである。 しかし彼のキャリアの中でそれを風化させておくのは、惜しいと思う。何かの形でCD化されることを願っている。

これはピープル・ローズマリーのレコードにも言えることである。

夏夕介
ディスコグラフィー

EP
VICTOR 時代


涙が燃えて(作詞:宇山清太郎/作曲:福井利夫/編曲:土持城夫)あこがれの人(作詞:さがゆうこ/作曲:土持城夫) 1970年12月25 日 SV-1094  
※まだオックス在籍中にデビュー曲の「涙が燃えて」をリリースしている。オックスのコンサートでも歌われていた。  
                       

COLUMBIA 時代
愛と栄光の日々 (作詞:橋本淳/作曲:筒美京平)いつまでもいつまでも(作詞・作曲:佐々木勉 /作曲: 野口武義) 1971年6月25日  P-131                                                  ※B面の「いつまでもいつまでも」は、ザ・サベージのヒット曲のカバー。

■君がそばにいるから (作詞・作曲:津坂 浩/編曲:神保正明)※朝日放送のテレビドラマ 「嫁サこらんしょ」の挿入歌 /
 絵里加  (作詞・作曲:高瀬タカシ/編曲:小谷 充)1973年9月10日 P-306
                                                            
(special thanks to minamo san)


ここでオックスのメンバーのバンド活動を整理しておくと、まず福井利男と岩田裕二がキングス出身。岡田志郎はマッコイズ。赤松愛はハタリーズ。野口ヒデトはバックボーンと、それぞれのバンドを経てオックスの5人となる。

赤松愛の脱退後、加入したのが、元グランプリズにいた田浦幸。赤松愛はその後引退。

オックス解散後、福井利男と岡田志郎はピープルに続いて、ローズマリーで活動。

田浦幸は俳優の夏夕介へ、そして野口ヒデトは現在の歌手・真木ひでとである。