21.ジャンクとレンタル落ちを狙おう
〜音楽馬鹿ゆえの馬鹿買いのすすめ〜
「何でも聴く」音楽ファンの皆様、お元気ですか?
皆さんは音楽が好き過ぎて、本当に「何でも聴く」ため、CDにつぎ込むお金が幾らあっても足りないでしょう。だから新品で揃えるわけにもいかず、かといって中古も安くない。なのに音楽欲はとどまることを知らない。
そんな方々は本当に「雑食」で、リマスターだのボーナス・トラックだの紙ジャケだのは、新品でも買う好きなミュージシャンばかりで、他の音楽はそんなの関係なく、とにかくアルバムが手に入ればいい、という感じではないでしょうか。
というのも、僕がそうだからです。
いつだか、音楽関係の仕事をしている時、どんな音楽が好きかと質問したら「何でも聴きます」と言ってきた人がいました。じゃあプログレは? クラシックは? ジャズは? ビートルズは?……などと質問してみたら、それらはまったく知らない。その人のいう「何でも」とは「パンクとかコア系なら何でも」という意味だったのです。
そこらへんから僕は「何でも聴く」という言葉に疑問を感じ、自分ではなるべく口にしないようにつとめてきました。
しかしここ数年、本当に「何でも聴く」状態になってきました。先にあげたようなものからアヴァン・ミュージック、ノイズ、スパニッシュ、サーフ、フィールド・レコーディング……苦手だったブルースやカントリー、ちゃんとしたヒップホップなども少しは聴くようになり、カラオケ専用売れ線J-POPのような「消耗品」ではない「音楽」なら何でも聴くようになりました。
って言うと喧嘩売ってるみたいですが、僕は「作品」としての「音楽」の話をしているので、「商品」としての「その場限り」は未だに購入範疇に入りません。だって廃れたら何の価値もなくなるもの。だからPerfumeは買ったけどB'zは絶対的に買いません。芸能人歌手なんてもってのほかです。
なんていう自分の指針はどうでもいいんだ。好きならそういうのでも理由付けて(ここが脆弱)買うだろうし。
ともかく、「何でも聴く」人には、どんな購入方法を勧めたらいいか、というお話です。
きっと多くの方が実践しているのでは、と思うものがふたつ。
まずは、いわゆる「ジャンクCD」。傷や状態(ケース破損やブックレット不足)、廃れた流行曲、輸入盤などは、多くのリサイクル店では「ジャンクCD」として扱われ、50円だの100円といった「塵も積もれば山となる」放出品となります。これを目的にリサイクル店巡りをしている人も多いでしょう。
そうした基準もあるうえ、多くの店が共通のデータベース管理をして値付けしているので、そこに漏れるとどんなに状態がよくても名作と言われる作品でも、無慈悲にジャンク扱いとなり、流されるのです。だから「え! これが50円でいいの?」というものもしばしばあります。一般流通CDに限らず、各社が企画した通販限定のボックス・セットとかもそう。新聞・雑誌によく広告が掲載されてるでしょう? 『○○大全集』みたいなの。そういうのってデータベースに入らないので、よほどコアな店か店主がそれ系を好きなところとか、相場を調べる余裕のある瑣末な店でもない限り、機械的にジャンク商品にしてしまっているのですよ。
特に狙い目はクラシック。データベースは(よく知りませんが)クラシックは網羅していないみたいで、クラシック・ファンには名作なのにデータがなく、あっさりジャンクに回されるものもあるようです。あと、些細な傷でもジャンクになる。さらには、クラシックってよく100枚で1セットの「名曲・名演奏集ボックス」みたいなのがあるけど(主にソニー)、それらって箱にバーコードがあるから、バーコードで管理しているデータベースは、中身のCD単品では管理していない。なので、バラになると無条件でジャンク扱いになる。美品であれ、状態がどうであれ。そのくせボックスに入るような演奏は間違いなく名演奏の類なわけで、単品で買っても好きな曲や指揮者だったら間違いない。
綺麗なのにジャンク扱いになっているCDがちらほらあるのは、流行性を考慮したシングルとか、そのような規格外などがあるのです。それを狙うなら、こまめにリサイクル店を覗きましょう。そうした店の入荷はお客さんの持ち込み次第なのですから。
だから回転を重視せず、底値がそんなに安くない店だとか、ジャンク品扱いを設けていない店なんかは、最初っから対象外になってしまいますね。誰がスノーの12インチ・リミックス・ベストだとかダイアナ・キングを500円で買うのか、ということになりますから。あるいはその底値で何か拾いものがあるか、というように価値基準をずらす必要があります。そういう目は、自分の価値観を磨きながらいろいろな店に通っているうちに身に付くものです。
もうひとつは、レンタル落ちCD。こちらは偶発性が少なく、長期スパンになるものの、もっと確実性が高い。
というのもレンタル屋は、回転することを踏まえたCDをレンタルします。そのため、マニアしか知らない作品なんか置かず、定評のある名作を中心に展開する。ロックやJ-POPは売れ線重視だけど、狙い目はクラシックとジャズ。それらはレンタルで借りるより買っちゃう人が多いので、有名作品とか話題作といった、これさえあれば恰好が付くだろうといった作品が多いです。なのにそれさえ借りられる機会は少なく、いつまでも盤は綺麗なままだったりします。
それらが、ある程度経つと店内商品の入れ替えのため「レンタル落ちCD」として50円とか100円とか200円で放出される。ロックやJ-POPなんかはある程度売れるのが見込めるのでレンタル落ちでも最初は安くなかったりするけど、クラシックやジャズはいきなり100円とかが多い。それも名作・傑作の類が。
で、先に述べたように、借りる人が少ないから盤も綺麗なままなのです。「聴ければいいや」という人にはもってこいなのです。回転の早い売れた作品は傷だらけでも800円とかになってしまって、それでも売れるぐらいですが、これらはそんなことが見込めない。
そのため、レンタル落ちコーナーをまめに覗くと「え! これが100円でいいの?」というものが、ジャンクCDより確実に出てきます。
それであとは、シール剥がしなどをするかはその人次第です。しなくても聴けるのだし、状態もいいし、そういう人は購入数がべらぼうに多くなるでしょうから、面倒かもですが。
またレンタル落ちは、クラシックやジャズだけでなく、ロックやポップスでも拾いものがよくあります。名作なんだけどレンタルでは回転が悪かったものとか、もう回転しないだろうから放出しちまおう、といったものが。それらは状態以前に「買い」でしょう。結局は、音楽中毒は聴ければいいんですから。
あと、民族音楽なんかもわりと狙い目かもですね。ガムランとか沖縄とかは、一時期の流行りで入るもののみんな流行として聴くのですぐ回転しなくなっちゃうので、質がいいのに放出されてしまう。それを音楽馬鹿なら狙うべし、ですよ。
なんていうのは、僕が近年実践している「安く得をする」庶民の大好きな購入方法です。
この「安く得をする」というのにも、誤解を抱いちゃいけない。ジャンクやレンタル落ちにおける価値感は「自分にとって価値がある」ものです。ていうか、本当は何でもそうである筈なんですが、がっついた生き方を勧める女性評論家(あえて名は挙げません)なんかが「安くて価値があって得をする生き方」ばかり主張するので、勘違いした庶民にとっては「中古で状態がよくて安くていいもの」があたりまえになっている人が多くいます。
中古だろうが新品だろうが、ジャンクだろうがレンタル落ちだろうが、本当の価値観は「自分」がものさしです。
それを「世間」にすりかえる必要はありません。自分が楽しむものを、世間の価値観に合わせるような真似をする必要はありません。
まして音楽表現なら、なおさらのこと。
だからこの文では流行曲を馬鹿にするような書き口に見えるかも知れませんが、逆に、流行ったからこそジャンクとかレンタル落ちで安ければ買ってもいいな、と思えるわけで、現に僕なぞはカジャグーグー&リマールのベスト盤を買ってしまいました。どうしたって「ネヴァー・エンディング・ストーリー」が好きでして、しかし新品で買うのはなぁ、中古でも500円以上出すのも何だかなぁ、と思っていたので、レンタル落ち100円なら「はい、よろこんで!」と飛び付いたわけです。そういうことってあるよね。宇田多ヒカルもジャンクで買ったけど、いい作品だと思います。でもジャンク価格じゃなきゃいつまでも買わなかったと思います。あとはジャンク価格じゃないと死んでも買わないCCCDとかね。それらは買ってもプレイヤーでは絶対に再生しませんが、CDDAで出直したりしなくて当時のままCCCDでしか出てないものとか、人気がないから廃盤になってるものとか多いので。
それが刹那の流行ゆえの価値観なのか、自分にとっては今でもこれからも生き続ける価値観なのか、をちょっと考えてみれば、音楽ファンならすぐに答えは出るでしょう。そしてその答えの基準は、結局のところ自分にしかないとすぐに気付くでしょう。
言い詰めれば、そういうことです。
これはCDだけでなく、あらゆる中古・新品にも言えることです。

こちらは先日、大量購入してきた、すべて100円のレンタル落ちCD。
大量に積んであるんだけど、ちょっとひろく音楽を聴く人なら、いちばん上のものだけで「これが100円なの!?」と思ってしまうでしょう? ジェフ・バックリィの『素描』にPJハーヴェイ、パヴァロッティですよ。他にもアート・オブ・ノイズだのYMOの紀伊国屋ライヴだのがわらわら。
よく行くお店で大バーゲン状態でずらりと並びまくっていたので、たまさか友人と友に訪れ、きゃあきゃあ言いながらふたりで漁りまくりました。それこそ最初は40枚以上抱えていたのですが、「自分の中の価値観」と闘った結果、次々と落として30枚弱にまで絞りました。
でもこれらはどうしたって外せなかったのだな。スコーピオンズやジューダス・プリーストなんかのどうでもいい時期のアルバムは落としたけど。最後までシンデレラは悩んだけど。結局W.A.S.P.はベストだったから買ったけど。って全部HR/HMじゃねえか。そのあたりがとってもビミョーなんですよ。それに較べてジェフ・バックリィの『素描』を100円で買えるチャンスなんて二度とない。だからこその「自分の中の基準」での選択です。わかりばすか、北野さん。
まぁ、お金とスペースと時間と余裕さえあれば、悩まずに全部買っちゃったのでしょうけどね。
余裕がないのに得をしようとするから、小庶民は結局損をするのです。
せめて余裕がないなりに(自分にとっての)得を選べる、本当の「庶民」になりましょう。