ライヴ! よたろう帝国

〜2000年12月25日(後日)〜

 さて、めでたくライヴも終了し、将軍もどうにか追い出し(すまぬ)、京都に平和が戻ってきた。
 そこでJun宅に残るはじめちゃん、Cinemaさん、僕の3人を、Junさんはまたも会場に連行する。機材のお片付けである。あ、この日はちゃんと起きましたよ。
 みんな寝ぼけまなこではあるが、昨日の話題などして少しずつテンションが上がっていく。そしてその片付けはすぐに終わった。何せ、次にその会場を使う人々が既に来ているのだから、急がねばならない。んで、またJun宅に舞い戻るのだ。ここでノーシンさんの折れたドラム・スティックを発見し、捨てられるところを僕が確保。いやあ、これはいい記念の品になります。押したら開く自動ドアにうまくあてがって、開きっ放しにするのにも使いました。
 そうして機材を車に積んでいると、見知らぬご婦人がが話しかけてくる。
「昨日、演奏しはったんですか?」
「ええ、そうなんです」
 と話していると、Junさんも「この人ら東京から来てんねんで」と入ってきて、しっかり「来年もやりますんでよろしゅうお願いしますッ!」と宣伝も忘れない。素晴らしい。こうして気軽に話せて、いきなり温和な雰囲気になれるのが京都である。
 Jun宅に戻るその前に、会場の外にある池を見詰めて話す一同。
 Junさん、
「この池の向こうに小屋があってな、来年はそこに機材置いてライヴやろうと思てんのや」
 はじめちゃん、
「あ、それいいねえ。将軍なんか勢い余って池に飛び込んじゃいそうだね」
 Cinemaさん、
「私はもちろん来ますよ! Cinema帝国としてね」
 などと話す。さらには池にマネキンの足だけ突き刺して、ピンク・フロイドの『炎』のジャケットを和風に作ってしまおうなどと盛り上がる。
 で、もはや馴染みとなったJun宅へリターン。機材を下ろしてから、Jun婦人のコーヒーを戴く。さらにはJun婦人が注文してくれたお弁当が届き、食べなさいと言われるものの、これから4人でラーメンを食べに行く予定があるのだ。それを明かすと僕とCinemaさんに「それやったら新幹線の中で食べぇ」とプレゼントしてくれた。ははーありがたい、である。何から何までお世話になってしまっている。
 それを携えようとしたが、食事後にまた寄ることになり、弁当とはしばしのお別れとなる。車に乗り込んで、まずは2日間ライヴのため頑張ってくれた体をキレイにすべく出発である。

 そうして向かうは温泉なのだが、この車中でまた素晴らしい会話が繰り広げられていた。もはや誰が何を言ったのかよく憶えていないので文体を統一してしまうが、こんな感じ。

「もっといろんな『同盟』できないかねぇ」
「これから温泉行くんだし、大将軍の温泉ツアーもあったし……」
「『プログレ温泉同盟』か?」
「それより昨日は子供がいっぱいいたからね。『プログレ幼児同盟』とか?」
「『小僧同盟』より年少なわけだ」
「みんなの子供を教育してね」
「それかいっそのこと家族ぐるみで『プログレ家族同盟』にしよう」
「でも女っ気が足りないなぁ」
「女だったら……コギャルなんかでもいいの?」
「うん。そうだよ、『プログレコギャル同盟』だ!」
「うはははは、できるわけねーよ」
「そうかな? 10000人にひとりぐらいはいるんじゃない?」
「プログレ大好きなのに周囲に合わせてラップ聴いてる振りしてるとか」
「ないない。だってプログレだぜ?」
「そりゃもっともだ」
「ていうか何でも『同盟』付けりゃいいってもんじゃないだろ」
「それもそうだ。うはははは」
「うはははは」

 ってな感じである。
 他にも雑多な「同盟」が誕生したのだが、ぜーんぜん憶えていません。シャベリもインプロですから。ええ。
 でも、もうひとつ特筆すべき会話もあった。ライヴ当日、手を繋いで会場を歩き回っていた「Jun息子」と「はじめ娘」の「小さな恋の物語」を語る親ふたり、である。

はじめ「なー、結婚させようぜー。いいじゃん、息子くれよ」
Jun「イヤやっちゅうねん! あんな、子供結婚さすのはええんやけど、オマエと親戚にはなりとうないッ!」
はじめ「じゃあさ、娘あげるからさ、嫁入り道具であの機材くれよ」
Jun「誰がやるかッ!」
はじめ「それかすぐに離婚させちゃってさ、慰謝料として俺が機材ぜんぶもらってくの」
Jun「政略結婚やないかッ! それにウチの息子、昨日言ってたやん。結婚はせえへんで、って」
はじめ「でも解んないぜー。ウチの娘さ、言ってたもん。Junちゃんの息子さんとまた一緒に遊びたいって」
Jun「ああ、仲良かったもんなぁ」
はじめ「一緒にシャボン玉吹いてたりしてたし、ずーっと手ぇ繋いでたぜ」
Jun「まあ、子供はすぐ仲良うなるもんな」
はじめ「ねー、だから結婚させようぜ」
Jun「せやから結婚はええけど、オマエと親戚にはなりとうないっちゅうねんッ!」

 もはや漫才である。親というものは面白い。
 さて、そうして到着した温泉。入浴料600円で広ーいたくさんの風呂。露天風呂もあるでよ。そこで我々4人は「プログレふるちん同盟」を結成したのである。
 サウナに入ると、塩が置かれている。それをおもむろに全身に擦り付けるJunさんとはじめちゃん。血行促進に良いらしい。ふたりとも背中に塩を擦り合っている。ふるちん男ふたりが背中に塩をコスり付ける、まこと奇妙な光景である。僕も真似してCinemaさんにコスったら、背中に傷ができてると痛がっていた。すまん。僕の指にも血豆を破った傷(リングしたままパーカッション叩いちゃったの)があり、すんげえ染みる。痛い。痛さが解ったよCinemaさん。すまぬ。
 湯上がりに浴場隣りのスペースにある食堂で、ピッチャーのビールで乾杯。
「もう、ずーっと呑んでるね」
 とのはじめちゃんの言葉にみんな大爆笑。そうとも、それもこの日は朝食もパンぐらいしか食べていないのにイキナリ湯上がりで、イキナリビールである。それもピッチャーで2杯呑んだ。もはや呑んだくれである。
 この頃、僕のジッポライターのオイルが切れた。給油してこなかったうえに、会場でも宴会でもどこでも誰でも、とにかくホスト顔負けのイキオイで点火しまくっていたのだ。これは僕に会ったことのあるスモーカーの方ならご承知でしょうが、僕の癖なのだ。というかもはや趣味。人の煙草に火を点けられないと、逆に悔しいのだ。
「これ使いなよ」
 そう言ってはじめちゃんが差し出したのは、おもいっきり「LAWSON」とロゴが入った100円ライター。火がなくてローソンで買ったはいいが、そのロゴが気に入らないのでくれるのだと言う。
「これあげるからさ、どんどん俺に火を点けてよ」
 きゃあ恥ずかしい。これが男女だったら口説き文句である。何せはじめちゃんは緑の館で我々が宿泊している時、僕が被っている毛布に、
「なーKENちゃん、エッチしようぜ」
 なあんて言ってもぐり込んできたほどなのだ。それに「それじゃ僕がネコ(女役)ですよ」と切り返す僕もどうかとは思うが。

 で、しばし談笑した「プログレふるちん同盟」は、湯上りのままラーメンを食べに行くべく車に乗り込む。目指すは「天下一品」。メニューがひとつしかない一点勝負の全国チェーンのラーメン屋である。本店は京都にあるらしく、また店によって微妙に味が違ったりするのだそうだ。Cinemaさん、大いにはしゃぐ。
「私は『家系』ラーメンばかり食べてましてね」
 横浜系の「〜家」というラーメン屋のことなのだそうだ。そして初めて食べる「天一」のラーメンに舌鼓を打っていた。ここでも4人はビールを呑む。また酒である。
 というところで大将軍からはじめちゃんに電話が入る。現状を報告すると、将軍は言った。
「なに? また呑んでんの!?」
 あの将軍をも呆れさせてしまう「プログレふるちん同盟」。その実態は、単なる酒好き4人組である。

 食事を終えた頃には、夕闇があたりを覆おうとしていた。
 Jun宅に一度戻り、岐路に就く準備をする。みんなでJun婦人にお別れの挨拶。お世話になりました、本当に。Junさんあっての機材墓場だが、アナタあってのJunさんだよ。というわけでアナタがJunさんだよ、などとワケの解らないことを考えつつ、Junさんともカタい握手。あなたのお誘いがなければ僕はこんないろんな楽しい想いをやり過ごしてしまうところでした。ありがとうです。
 そうして、ほんのり緑色の家をみんなで眺めつつ、はじめちゃんの車はCinemaさんと僕を送るべく、京都駅へ向けて走っていった。
 Junさんが「いなくなると、だいぶ静かになる車内。そこには寂寥感が募っていた。間もなくはじめちゃんともお別れだ。また来月会う機会はあるのだが、何だかすごくうら淋しい。
「京都駅への行き方が解んなくてさ、道も込んでるし、悪いけどここでいいかな?」
 そう言って隣りの駅で我々二人を降ろすはじめちゃん。ああッ、いいのに。迷っても時間がかかっても、もう少し一緒にいたいのに。そして京都を感じていたいのに……とは思うものの、そうはいかない。そこではじめちゃんともカタい握手。別れることになる。
 ああ、淋しいなぁ……と思うのも束の間、
……寒いッ!
 冬の京都、その夜は極寒である。盆地だもの。夏は暑く、冬は寒いという四季折々な場所なのだ。ようやく到着した電車に乗り込み、我々ふたりは京都駅へ到着。そこでCinemaさんがお土産を買っていたのだが、新幹線の時間も迫っており、急いで、同じ品物とかをドバッと3つ4つ買うというアヴァンギャルドな買い物であった。僕は金欠のため断念。
 新幹線に乗り込むと、ふたりともすぐにダウン。そりゃそーだ、ここ数日の疲れと共に、今日など朝から風呂上りの空きっ腹にビールをたんまり流し込んでいたのだから。あっという間に眠ってしまうのであった。京都とお別れする寂寥も、酔いにはかなわないのである。情けない。ううう。
 そうして到着した東京駅。ここでCinemaさんともお別れだ。ありがとう、あなたはほんと頑張りました。というかスゴイです。再会を誓い(や、すぐまた会う予定があったのだが)、カタい握手。
 帰りの山手線は、込んでいた。そこで僕は、ポータブルCDプレイヤーを再生させていた。
 曲は?
 よたろう帝国の「僕らは元気な探検隊」である。
 3部構成のこの曲が、今回の京都の想い出に、実によくマッチしていた。元気よく出発し、嵐を乗り越え、そしてまた元気になって帰っていく……僕は拳を握り締めていた。
 また来るよ、
 僕を乗せた電車は、やがて、僕を日常に連れ戻すべく高田馬場に到着した。


……と、感動的に終わらせる前に、今回の遠征の戦利品を紹介します。入手した場面は各所に書いてありますので、そちらを参考にどうぞ。



お酒は、きちんと笛モデルなのがフルート吹きの皇帝らしいですね。
スティックは、戴いたというより勝手に持ち帰りました。すまぬであります。
ライターも、バリバリ使っておりますよ。これであなたに火を点けます!

 しかし、一番の京都みやげはこうした形のあるものではなく、形のない、口に出して言うには気恥ずかしいようなものであった。「ほらほら、恥ずかしいとか言っておきながら、本当は言いたくてたまんないんだろ? ふふッ、可愛い顔しちゃって……」ってな助平なツッコミが入る前に断言してしまおう。
 それは、友情である。
 うおおお、恥ずかしいッ! しかし感動である。
 考えてみるといい。実際に会うのは初めてか、2度目なんてな人達ばかりだったのに、この連帯感は何だろう。そしてまた会えるという確信はどこから湧いてくるのだろう。あまつさえ、楽器などロクロクできない僕がそう感じているのである。バンドとなり、ユニットとなり、互いに結合し合った他のメンバー対しては何をかいわんや、である。
 正直に告白しましょう。わたくし、2次会では確かに頭痛ぐゎんぐゎんでした。でも、はしゃごうとすれば、きっとはしゃげたに違いありません。でもその冒頭のあたり、突然参加なのにバッチリ合っちゃう皆さんに対して「すげえなぁ」という想いが強く強く先走り、劣等感を抱いて沈黙しかけてしまったのも事実です。これはきっと、こういう場に居合わせると同じように感じる人が多くいらっしゃるでしょう。
 だが、それを突き破るものさえも、京都は僕に与えてくれたのだ。
 ロック魂。
 大将軍が何度も口にしていた、それである。それをもって、僕は歌でもコーラスでもパーカッションでも、とにかく自分で参加できるもので乱入したのだ。もはや楽器が「上手/下手」、「できる/できない」は関係ないのだ。参加できるパートがなくても、手拍子だっていいじゃない。これこそ「参加することに意義がある」なのだ。みんなと一体になる、それが参加なのだ。だからこそ僕は、楽器ができない代わりにこうして長編レポートを書く気になったのだ。普段から「自分はクリムゾンではピート・シンフィールドのようなもの」と暴言を吐いている僕であるが、こうやって、世界を表現することが「自分にも、何かできないか」と考えたあげくの、僕の恩返しなのです。
 そこに「ロック魂」があれば、何だってできるのさ! どどおーん!(壮大な終わり方を表現)


 実にしまりのない、長々とした駄文でしたが、読んで頂き、どうもありがとうございました。
「来年の話をすると大将軍が笑う」と言うので来年のことは解りませんが、機会あらば、またぜひとも行きたく思います。
 よっしゃ、せめてドラムの練習かな?

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