29.ジャンルとしてのプログレ

〜その要素〜

  プログレの「要素」とは何か?
 今まで遠回しにしてきたそれを、今回は論じてみたいと思う。

 所謂プログレッシヴ・ロックはサイケデリック・ムーヴメントの延長上にあった。この進化は、ピンク・フロイドの初期を見れば一目瞭然だと思われる。サイケデリック音楽の特徴のひとつとして、楽曲を拡張/変化させた長尺のジャム演奏があるが、フロイドはこれをよく多用した。そうして即興性を身に付け、後の彼らがある。
 また、ビートルズなども良い例だろう。ビートルズはサイケになって以降、『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』のようなリプライズでアルバムを一貫させる手法や、『アビイ・ロード』後半の長尺メドレー演奏など、今までにはなかった、ある種「プログレッシヴ」な試みを施してきた。
 またその一方で、ジャズからの影響も見逃せない。キング・クリムゾンが即興性を得たのはジャズからの影響が強かったし、ソフト・マシーンがジャズ・ロックと化したのも所謂「プログレッシヴ」な音楽の開拓に貢献した。
 クラシックからの影響も大きな一要素だ。殊に長尺曲をパートごとに分割し、組曲的に演奏するのはイエスなどの十八番だったし、今もプログレの最も解りやすい一要素として君臨している。
 それでは、そうしたサイケやジャズ、クラシックなどの影響から生まれたプログレッシヴ・ロックの、主な「特徴」とは何であろう?
 それは、おおまかに考えて以下の要素になるだろう。

(1).インプロヴィゼイション(即興)
(2).コンセプト・アルバム
(3).(パートごとに分かれた)長尺曲
(4).複雑な楽曲展開(変拍子の多用)/即興演奏
(5).卓越した演奏能力
(6).メロディを忘れない

 このうち、(1).(2).(3).は前述した通りである。(4).(5).(6).はそれら表現方法の「表現手段」として成り立っている。
 とまあ、ごく簡素にまとめてしまえばこのようになるのだが、これらすべての要素を満たしていなければプログレではない、というわけではない。喩えばピンク・フロイドは変拍子はおよそ使わなかったし、演奏能力が未熟でも類稀なるコンセプト性を持つバンドなどもいる。ジャズ・ロック畑にはメロディを排他してテクニックのみで勝負したバンドも数多くいる。ここに挙げた要素のすべてを満たしているのは、キング・クリムゾンぐらいではないだろうか。
 五大バンド――キング・クリムゾン、ピンク・フロイド、イエス、EL&P、ジェネシス――で考えてみると、クリムゾンはすべての要素を満たしている。フロイドは変拍子やテクニックは二の次で、コンセプトに重きを置いている。イエスは逆にコンセプト性に欠けるが、長尺曲が多くメロディを重視している。EL&Pもコンセプト性がない代わり、クラシックからの影響が強く滲み出ている。ジェネシスは即興性やアルバム・コンセプトに欠けるが、他の要素はまんべんなく満たされている。
 然るにプログレとは、イギリスで起こった五大バンドからの影響によるムーヴメントのもと、表現手段として卓越した演奏能力でもって変拍子を多用し、メロディを保った音楽を呼ぶとしてよいだろう。そう考えればニュー・ウェイヴ期の名盤や、プログレ・ハード、プログレ・メタルなども「プログレ」と呼ぶことができる。逆にそれらをプログレとして扱いたくない時には、要素を満たしていないことを武器にすればよい。そうして境界が曖昧になっているのも、これらの要素が「表現手段」としていかに用いられているか否かに論点が集まっているためだ。

 以上が、「ジャンルとしてのプログレ」の要素考察である。
 これと「プログレッシヴであるか否か」は、別の問題となる。喩えば筆者はプログレ・ハードやプログレ・メタルはジャンルとしてはプログレであると寛容できても、それが「プログレッシヴ・ロック」であるとは思えない。これについては、また後ほど記す機会が生まれてくるだろう。