26.レーベルゲートCDに「否」と申す
![]()
〜現状「改悪」への拍車〜
空虚な現状は続くもので……引き続き「CCCD」に関することになる。必ず、前項と併せてお読み頂きたい。
普段のように様々なCDを手にしながら、ソニーのマキシ・シングル数枚に目が止まった。なぜかというと、ビニールにいつもの「COPY
CONTROL CDですシール」が貼られ、邪魔な「COPY
CONTROL CDですチラシ」が入っているものの、盤面にCCCDやCDエクストラ特有の「リング」がない(見えづらい)ことに気付いたからだ。してみれば、それは同じ「CCCD」のロゴでも「コピーコントロールCD」ではなく「レーベルゲートCD」だった。
さて「レーベルゲートCD」とは何か?
これはコピー不可を保ったまま、音質ほかに問題の多い一般的なCCCDでないCCCDを作るべくソニー関連3社と「レーベルゲート社」が開発したものだ。通常のCDプレイヤー上では曲数通りに表示されるが、実際には「曲数+2」曲分のTOCが入っている。その「+2」に相当するのは「PC再生用圧縮音源」と「インターネット用IDデータ」だ。だから、2曲入りのシングルでも実際には4曲分のTOCが詰められていることになる。それらをセカンド・セッションとしてエクストラ・トラック扱いで差し挟んでいるため、やはりCDエクストラ(エンハンストCD)仕様との同居はできないようだ。
一方の「PC再生用圧縮音源」は相変わらず音質に問題があるのは明らかで(だって「圧縮」してるんだもの)、従来のCCCDにも含まれていたので解るだろう。問題は、もう一方の「インターネット用IDデータ」ということになる。
この「レーベルゲートCD」は、PCでは圧縮音源さえそのままでは聴けない。著作権保護機能付再生ソフト「MAGIQLIP(マジクリップ)」とクイックタイムが再生に必要で、それをまずダウンロードしなくてはいけない。そのためPCに挿入すると、最初にそのダウンロード画面と手続きに入ってしまう(インストール後はこれは省かれ、ID認識のみになる)。そこで登録の手続きを済ませればPCでも聴けるし、従来のCCCDと違って「1回なら」ハードディスクへのコピーもできる。その管理を行うのが「インターネット用IDデータ」であり、登録情報と照合することによってそれらが行えるようになるというわけだ。
はっきり言うが、この時点で既に面倒臭い。PCに入れたくもないものを詰め込まれ、自腹で買ったCDなのに勝手に管理されてしまう。いきなり納得がいかないのだが……。
その「MAGIQLIP」専用の音源なども今後は公表していくという。しかし、今まで概してそうだったように、PCを通したものはなかなか安定しない。だから今後、これらが存在し続けるなど、はっきり言って筆者は信じていない。既に免責事項には「事前の予告無く、中断・中止・サービス内容の変更等を行う場合がありますので、予めご了承ください」とあるのだから。よくある逃れ文句だとは解っているが、それを認めた時点でインストールする気も起きないのは、筆者だけだろうか?
また、1回だけできるコピーかて、ID認証によって管理されたうえでコピーのため与えられるのはファースト・セッション(一般的な再生部分)の音源ではない。セカンド・セッションに含まれる、圧縮されたデータが手に入るのだ。つまり、明らかに音質が劣る音源しか与えられないうえに、それは1回だけ。2回目移行は「1枚」につき「200円」が要求される。曲単位ではなく、飽くまで「1枚」単位。レンタル利用であればタダで済むが、買った人間がこれに納得できようか?
しかも、だ。私は「いろいろとは」試していない(ヘンなモノPCに突っ込まれるのは趣味じゃない)のだが、コピーは「そのディスクで」最初の1回に限られるとも言われている。つまりレンタルであれば、最初に借りた者だけがコピーできるのではないか、と。ID管理のあたりが曖昧に情報開示され、曖昧なまま伝わり、曖昧なまま「複製→取り込み」などと言葉が変えられているのが現状。よって、現在ではどう落ち着くのかさえ解りかねる。
最も問題視されていた音質(ファースト・セッション部分、念のため)は、カッティング技術などの発達・向上によって改善されたという。しかし、一般リスナーの間では早くも「音が薄く、深みがない」といった感想が抱かれている。よりによって「音の厚み、質感、空気感」といった、各種高音質CDで重視される部分が手薄なようだ。
それ以前に、現在のところ「レーベルゲートCD」としてリリースされるのは「ソニー製品の邦楽マキシ・シングル」だという。ならば音質による差異は重要ではない、と独断したい。ジャズやクラシックじゃないのだから、音質にこだわったところで大きな価値はない。それ以前に、その採用基準が明らかに「最も売れるもの」だというところに、筆者は疑念を覚える――音質を餌にして金を釣ろうとしているのではないか、と。明らかに、目先の金のためにこれを採用しておるまいか?(結局はのちに「レーベルゲートCD2」として、アルバムにまで侵食するに至った)
因みに、相変わらず保障はいっさいなし。再生システムが異なるだけで、基本姿勢は(きっと通低する部分まで)従来のCCCDと同じだ。
さて、こんな画期的なシステムを導入してしまった「レーベルゲートCD」だが、問題は早くも山とある。
ものすごく初歩的なことなのだが、PCでID認証をするには、どこを通る? そう、インターネットだ。となれば、レーベルゲートCDは常時接続可能な環境でないと、聴くだけでも骨が折れる。ダイヤルアップでは初回のダウンロードから、毎回の認証手続きから、とかく電話代がかかるので「もうPCで音楽なんか聴けるか!」という展開に繋がるのは当然。コピーができてしまうPC、それで聴いているユーザーに対して敵にしない程度に反発しているという中途半端な姿勢。常時接続は「Yahoo!
BB」を筆頭に各種宣伝行為が多く見受けられるため一般化しているように見えるものの、実際にはダイヤルアップ接続の者や、ネットに繋げずPCを単体で使っている者も非常に多い。それらすべてを無視していることになるまいか。
また、こうやって同じCCCDでも規格を乱立させてしまうことで、結局は共倒れにならないのだろうか? VHSとベータのデッキを例にしてみれば、録画ができるVHSが生き残っているのも象徴的。利便性に勝るものはないし、面倒なものは衰退しやすい。ソニーは規格をオープンにして、他メーカーにも採用してもらいたがっているようだが、さてどうなることやら。今までソニーは(今では一連の「VAIO」シリーズを見るとよく解ると思うが)こと「自社製」という点にこだわっていた会社だ。
さらに、最も重要な点。
はっきり言おう。まだまだコピーは「容易に可能」だ。詳しくは省略するが、筆者が実験してみたところ「あっさり吸い上げられた」のが結論。別段、筆者のPC環境は特殊なわけでもない。ちょっとしたコツさえ解れば、どうとでもなってしまいそうだ。それ以前に民生用(業務用)レコーダーであれば、相変わらず何の障害も手間もなくコピーが可能。病気や犯罪と同じで、防護作を施せば施すほどそれを越えるものが出現するのは常だろう。またも虚しい「いたちごっこ」が始まってしまったというわけだ。
他にも音質から何から、従来のCCCDと同じ問題はまったく解決されていない。なのに新しい問題ができてしまった、という展開に陥っていないだろうか?
さらには、各社とも「音質向上」を売りにすることで、本来の問題点であった「著作権云々」「コピー云々」の部分が手薄になっていないか? いや寧ろ、論点をすりかえていないか? 筆者は、自分の買ったCDなのに管理されてしまうというのが最も納得のいかない部分だ。しかし、その部分はまるで触れられず、音質云々ばかりが表沙汰にされているきらいも強い。相変わらず「個人で楽しむ範囲」が無視されている。もともとは著作権保護が目的とされているのだから(その実、商業目的というのは誰の目にも明らかだが)、その著作権全体を守るために、逆転的に著作権の一部を侵害してしまっていいのだろうか?
そして何より――音楽CDの規格基準「レッドブック」を規定したのはフィリップス社と「ソニー自身」だ。なのに、自ら規格外の「レーベルゲートCD」を採用するというのは、方針としてどうありたいのか不明瞭。そう、遅くなるが、やはりレーベルゲートCDも「CD」ではない。盤面を見れば“compact
disc”のマークがないのがお解りだろう。
自分で言い出した約束を、自分で破るというのはいかがなものだろうか? それが喩えば人間であれば、筆者はその人を信頼しなくなるだろう。
こうして2回にわたって「CCCD」を採り上げながら、基本的なことに気付いた。
これらは、PC上での再生は、飽くまで「Windows」のみに頼っている。そうなると明らかに無視されたMacや最初から無視されているLinuxなどのみならず、もしWindowsに代わる大きなOSが誕生した場合、それまでのCCCDはすべてPC上では再生不可になってしまうわけだ。そこへきて「CCCD」を始めたエイベックスの商品群を思い、「レーベルゲートCD」の採用基準が「邦楽マキシ・シングル」であることを思うと、自然「目先の金にばかり目がくらんでいないか?」と思えてしまう。
売り上げ不振を改善すべくCCCDを導入したエイベックスが、さらに売り上げを落としたというのは象徴的であり、リスナー全体の「声」なのではないか。メーカーなのだから、売り上げを優先するなとは言わない。しかしそれを「著作権」というスケイプゴートで隠し続けるのは、商売としている「音楽」そのものに対して真摯ではない。
だが、それらCCCD関連をメインに購入している皆さん、安心したまえ。CCCDもレーベルゲートCDも、採用基準が「売れるもの」であるのは明らかだから、コピーせずともその多くは少し待てればレンタル落ちや中古による「現物」が手に入る。特に「レーベルゲートCD」は2003年1月現在「邦楽マキシ・シングル」のみに採用されているのだから、レンタル落ちなら100円そこいらで手に入るだろう。もっとも、そうした「著作権のスケイプゴートに甘えた表現者」を信奉するリスナーにとっては、そうなる前に聴かないと流行に乗れない(ことになる)ものが対象なのだろうけどね。
筆者は、やはり「レーベルゲートCD」もCCCDと同様の意向で購入しない。ソニーであれば好むミュージシャンもいるが、採用されていれば基本的に無視することにする。
ここまで来ると、もはや感情レヴェルで「大ッ嫌い」だね!