8.私のプログレ定義考:Hawkeyeさん

〜視点を変えて〜

 以下の文章はHawkeyeさんより寄稿頂いたものである。よって反論なり意見は、彼のメール(前述リンク先)にお願いしたい。
 このように「生悟り部屋」では、あなたの「プログレ定義考」を募集中である。しかしこれは軽い茶番染みた話では終わらせてはいけないと考えているので、寄稿の際には、それなりのものを送って頂きたい。また、メール・アドレスの公開を義務とする。なぜなら、それなりの覚悟を払った文には、文責というものが問われるからだ。よって、私が最後に付け加える短い感想/考察部分を除いては、反論・意見などは論述する本人に問い合わせ願いたい。
 こうした「プログレ定義考」は、そういった心がけのある方だけに送って頂きたい。厳しいように思えるかも知れないが、誰かの駄文を載せて私に反論が来るのは筋違いである、ということを了承して頂きたい。
 なお、この方式を採用するのは、基本的にはこの「生悟り部屋」だけである。よって他のコーナーではどんな話でもいいし、メールアドレスの公開も義務ではない。コーナーごとに話のタネや流儀が異なる、というだけのことだ。
 以上のことを念頭に置いて、皆さんの優良な意見をお待ち申し上げる次第である。


『プログレ』定義考

「プログレ」って何?、という質問がある。
 実に基本的だが、難問と言う意味では最強であろう。
 多くの評論家、ファンがいろんなところで能書きたれているわけだが、一致した見解など出そうにない。

 これは、ある意味当然で、そもそも「プログレ」の語源が、東芝EMIがPink Floydのキャッチコピーに困り、英和辞典をひっくりかえした挙句にでっち上げた「Pink Floydの道は、Progressive Rockの道」から来ている以上、何か特定のジャンルを意図していたわけでないことが不幸の始まりである。
 たまたま、こりゃー便利だ、語感も良い、と言うことで、評論家・レコード会社・レコード屋・コレクターがてんでバラバラ・脈略なく使い始めたから、そもそも「定義」等与えよう筈まない。

 とはいえ、これだけ人口に獪醋している以上、何らかの見解を示すことも無駄ではあるまい。

 まず、オーソドックスに形態や様式といった点から定義付けしてみよう。

「プログレとはPink Floydのことである」
 実にシンプルである。源からして妥当ともいえるが、まあこんなことを言った日には、暗い夜道はとても一人では歩けまい。特にKing Crimsonのファンは確実に激昂するであろう。
 それでは、
「プログレとは、俗に言うプログレ五大バンド、その周辺及びそれらから影響を受けた音楽の総称」というのはどうだろうか?
 なかなかに纏まっているが、定義としては未定義語が多く含まれ結構問題含みではある。
 たとえば「Mike Oldfieldってプログレじゃないんですか?」「Kraftwerkはどうでしょう?」と言った質問には、相応に対応できるが、手ごわいのは「Frank Zappaを忘れて貰っちゃ困りますよ?」ってな質問で、これには正直お手上げである。そもそも定義中の「影響を受けた」の一言が問題で、範囲指定がなされていない以上、およそ効力に欠ける。
 ちょっと拡大解釈すれば、下手すれば、Mickel JacksonからSinatolaまで含まれかねない。

 要するに、何か具体的な音楽形態や様式を想定しての定義付けはうまくないのである。

 少し、切り口を変えてみる必要がある。

 10年程前のことであるが、我が家に極悪非道のコレクター4人が集結していた時のことである。
 茶菓子を運んできた、我が家の山の神が何気なくはいた「ところで、プログレって言うのは何なの?」との一言に、盛り上がっていたその場がいきなり凍りついた。
 その時、苦し紛れにはいた台詞が「何、俺が聞いている音がプログレだ」という奴である。その時は、たまたまFormura 3かなんかを聞いていたので、なんとなく納得したのではあるが、流石にこれは言い過ぎで、「じゃ、昨日聞いていたMozartの交響曲もプログレなの?」等と切り替えされた日には、目も当てられない。
ただ、この聞き手を定義の中心に据える方向は有望そうであると、後日気がついたのある。
で、でっち上げたのが、

「ロック音楽の形態のなかで、聞き手に多くを語らせる楽曲の総称をプログレという」

 である。
 実に高尚で、まるでフッサールの現象学を想起させる。無論ポイントは「多くを語らせ」の部分である。
 まあ、こんな定義を言った日には、大将軍・はかせ・KEN君あたりから、
「てめえ、馬鹿野郎!」
「そりゃー、ないっすよ!」
 等とボコボコに袋叩きされかねないが、個人的にはかなり納得のいくのも事実である。
 この定義に従っている限り、
「このLPは君にとって、プログレかも知れないが、僕にとってはプログレでない」と主張しても安泰であるし、「あっ、それシンフォニックで、結構聞きやすいよ」と一言でいえる、あまたのシンフォニックロックはプログレの範疇から外すことができるし、「このLPのあの曲はプログレだ」といった切り分けも可能である。
 随分とご都合主義的な定義ではあるが、ここら辺りはそれこそ、すれっからしのコレクターの老獪さではある。
 ただ、冷静に考えみると、プログレの範疇に入るバンドについて実に多くの人が多くを語っているところをみると、この定義まんざらでもないとは思うのだがどうだろう?
 勿論、反論・非難は甘んじて受けますよ。

(注:内容が内容だけに、やや斜に構えた表現方法をとっているが、内容は相当部分真面目であるので、いらぬ曲解は避けていただきたい)


(KENの雑感:)

 なるほど、実に応用の利いた、かつ斬新な意見である。「ジャンル」という視点ではなく、飽くまで「リスナー」として考えた、という点にこの論述は意味があり、また価値がある。
 しかしここで問題となるのが、それが所謂「プログレッシヴ・ロック」という「ジャンル」のものでは通じるが、ことJ-POPやらとなると、悪用もできるということだ。つまりはディレクターなり広告担当者なりがそう感じれば「プログレ」という言葉を誰に用いてもいいことになり、販売する上での一フレーズとして活用できてしまう。さらには「俺にはこれがプログレッシヴ」という個人個人の範疇で終わってしまい、活用ができない。そうして、文中でも言われている「シンフォニック・ロック」を「プログレ」とすることも、逆に可能となってしまうだろう。
 定義付けとしては優秀だが、ジャンル付けには活用できない。
 まあ、そういった「ジャンル付けなど無意味だ」といった姿勢が見え隠れするのも事実ではあるのだが。
 応用性では、良かれ悪しかれ抜群であろう。実際「その手があったか!」とも思ってしまったものだ。そうなると僕にとってはBUCK-TICKさえプログレになってしまうのだけれども……。