3.プログレを聞くプログレッシヴでない人

〜それ以前に礼儀の問題〜

 私は当サイトの各所に記したように、リスナーにも、何らかのプログレッシヴな姿勢が必要であると考えている。ごく簡単に言えば、それぐらいの姿勢がなければ高い理解などできやしないからだ。
 私がその想いを強めてしまった小さな事件が、プログレを好んで聴くのにそうした姿勢がない人間と接してしまったことがある。ここに参考程度に記しておきたいと思う。

 その頃私は友人の勧めにより、ある「出会い」サイトのようなものに関わっていた。「出会い」と言っても、とにかく恋人が欲しいと猛ってばかりの「観念的童貞男/観念的処女」の集まりではなく、趣味や仕事などのカテゴリで登録できる、ある検索エンジンのサービス・サイトである。それでも私は面倒が先走ったのだが、友人が余りにも強く勧めるので、少し関わってすぐにやめようと考えていた。
 そこでは「ミニメール」という、まあ携帯のショートメールをパソコンでやるような、時代の逆流的発想のものがある。登録者を見て、気に入った人がいたら、それでもってハジメマシテだとかコンニチハとかを言うのだ。通信費の無駄も甚だしい。
 そういったことは掲示板の方が優れているし何より面倒臭い、と思った私は、なるべく送られてこないような厳しい自己紹介名刺(登録者はこれを閲覧して相手を決める)を作成したのだが、それでもふたりからミニメールが来てしまった。ひとりは会社のことを話す男で、もうひとりはプログレが好きだという性別不明の恐らく男。
 その後者が、問題なのだ。
 彼は最初、まるでプログレの先輩であるかのような書き口を見せていたのだが、次第に私に教えを請うようになった。私はその当初こそ、教師のように彼の質問に答えていた。だが、彼は何度となく質問ばかりで、それも「シンフォニック系が好きなんですが、何かお勧めは?」という、実に曖昧なものだ。
 私は情報の少ない条件に適合するものを教えられない。神ではないのだから、詳しい好みを知らないことには決定的なことなど言えない。
 そうしてミニメールとかいうものでの情報交換という、小さくまとまっている状態が大嫌いな私は「プログレオヤジ同盟」を何度か紹介した。彼の知りたいことなど、そちらで幾らでも解決できるうえ様々な意見が聞けるので、非常に参考になる。私もくそつまらないミニメールなんぞを義務のみで続けることもなくなる。
 しかし、彼は一度も同盟を訪れなかった。
 同盟の紹介は確か3度行った。しかし1度目は無視され、2度目は「繋がらない」と言われ(アドレスを丸コピーしたのだからそんな筈はない)、しまいにはよくある断り文句「忙しくて行けませんでした」が登場した(だったら何でミニメールはやる時間あるんだよ)。
 そこで私は、失礼を承知で彼とのミニメールをやめた。
 だが彼も、何度となく私に失礼を働いたのだ。私のお勧めサイトには無視や嘘を駆使したあげく、それでも私の意見を信用してCDだけは購入したがるという矛盾行為は、私が提唱する価値観に対して礼を欠くとは言えまいか? そのうえ、ミニメールでは当時の私の使用サーバは噛み合いが悪く、何度とダウンした。そのため、メールでのやりとりにしてほしいと2度ほど願ったのだが、それらも拒否される以前に、無視された。
 受身になってばかりでは「プログレッシヴ」とは言いがたい。自分で新しい/好みの音楽を探すという行為もできない人には、もはやプログレを聴いてほしくないものである。それ以前に、彼の社会的人間性をも疑ってしまった。
 最近は、姿の見えないネットだからといって、礼を欠く人間が多い。それでいてプログレを好んでいるというのだから、下手の横好きとでも言っておこうか? 軽い音楽を好む軽い見てくれの男の方が、まだ矛盾がない。「シンフォニック系」と言っていたのだから、雰囲気に酔う人間だったのではないか? そうしてプログレを聴く自分に酔っていたのかも知れない。
 音楽を聴くのに何かを合わせなきゃいけない、ということではない(パンク・ファッションじゃあるまいし)。だが、こうした人間は表面的な見解でしか音楽を見ていないということが自明の理となる。己れにも心がけるべきことの多い小事件であった。