葉桜と桜桃
| 気が付けば息をしていた 世界に疑問を抱く間もなく 馴染もうと足掻いた けれど結局 弾かれた すべてを否定されてきた 友も失い 恋人も消えた 残ったのは虚無の自己だけ もう足掻くこともやめていた 忌むべき春が来る 浮かれた季節を思い出す 意味もなく風に酔い 我を忘れる人々ばかり 葉桜が生い茂る からびて落ちた桜桃を拾い その葉に乗せて眺めやる 私も彼らと同じだと 息を吐く やがて来る冬の覚悟を忘れ 人々は突然の死滅を恐れる 枯れ伏した草木は土となるが 人は灰色の骨を残してしまう 忘れ 気付いた頃には また息をしているのだろう その繰り返しのなかに 意味なき意味を探す人々 葉桜を手に 桜桃をかじる いっさいが自然の摂理に基づき 永遠を構築している 私はその たった ひとかけら 結ばれ 離れ 絡みあう もつれ ほどけ もとのさや 最初から何もなかったように 無言のまま 時は巡る 望もうと望むまいと また春が来る 誰かの あなたの ゆめの底 私はそこに いるのだろうか また春が来る あなたは いない |