ヒロくん(師匠)
〜アコースティックに映える母性〜
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オール・アバウト・イヴ 『スカーレット・アンド・アザー・ストーリーズ』 ファーストの『イヴの序曲』はプログレ畑でも好評な傑作だが、このセカンドはさらに音楽的に成長を遂げている。ジュリアンヌの存在がさらに全面化し、優しいアコースティック感覚、美しい旋律に溶け込むようなジュリアンヌの清楚でしっかりとしたヴォーカルが際立っている。オール・アバウト・イヴはファーストのインパクトからゴス・バンドとしての評価も高いが、ブリティッシュ・ロックの正統派的な流れを汲んでいる。 |
『むじレコ』(『無人島レコード』)というお題を戴いたけど、無人島へ1週間ほどふらっとバカンスに出掛ける場合(帰りが保証されてる場合)と、ロビンソン・クルーソーのように無人島に漂着しいつ家に戻れるとも分からない場合とでは、おのずからセレクトが変わってくる。今回は後者の場合で話を進めていくことを予めお断りしとく。
私自身が運営してるサイト『SPILL THE BEANS!』に昔載せてた記事で、「my
棺桶レコード」(死んだ時に棺桶に入れて一緒に火葬して欲しいアルバム)について触れたことがある。「無人島に漂着し、二度と元の生活に戻れない」ということは(その状況にもよるけど)私にとっては『死に等しい』にすら感じるので、以前「my
棺桶レコード」に指定してたアルバムを『無人島レコード』とさせていただく。そのアルバムとは、オール・アバウト・イヴの『スカーレット・アンド・アザー・ストーリーズ』。英国人写真家・Holly
Warburtonの手による『赤頭巾ちゃん』をモティーフとした作品を用いたジャケットからして、すでに名盤の風格が漂ってるじゃないですか!
オール・アバウト・イヴ(以下、AAE)はジーン・ラヴズ・ジザベルのベーシストとして音楽シーンに登場したジュリアンヌ・リーガンを中心とした4人組。ザ・ミッションのウェイン・ハッセイに発掘されたというバック・グラウンドからも窺えるとおり、初期はポジパンやゴシックからの影響が強かったが、デビュー作『イヴの序曲』では英国トラッド・フォークからのエッセンスも取り入れて彼女たちならでは独自の様式美を構築。そのデビュー作『イヴの序曲』
に続いてリリースされたこの『スカーレット〜』では、ゴス的な仰々しいエッセンスを減らし、フォーク的なアコースティックな旋律が増加した。昔はバンシーズのスージー・スーのフォロワーと看做されてたジュリナンヌが、ケイト・ブッシュと並び称されるほどになったのだから、その転向ぶりは際立ってる。アルバムタイトルどおり収録曲は“Scarlet”とその他12曲で構成されてる。決してコンセプト・アルバムでは無いが、約半数の曲(特に、後半)で「死」や「終焉」について触れた歌詞が多い。
「死の匂いが漂う」=「不吉」というのが世間的な見方なんだろうけど、音を聴いてる限り、あまり不吉な印象は無い。というのは、(決して上手くはない)ジュリアンヌのヴォーカルに魅力があるから。その魅力とは...ぼ・せ・い……母性。今で言うところの「癒し系」ですな。ジュリアンヌのヴォーカルが母性をたっぷり湛えてるため、不吉な内容のアルバムでも子守唄のように聴こえる。私もこのアルバムを聴きながら何度も寝たもんです。
ギタリストのティム・ブレッチノ脱退後(今思えば、サウンドを仕切ってたのは彼だったのね)、一般大衆ポップスふうに路線変更したのが災いし、AAEはこの後2枚のアルバムを残して1993年に解散したんだけど、何度も再結成してライヴ演ったり、昔のレア音源をリリースしたりして商売出来るってことはそれだけジュリアンヌのヴォーカルに癒しを求めてるひとが今でも多いんだなぁ〜...と思います。
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ひろくん(ししょう) 音楽サイト『SPILL THE BEANS!』管理人。独自のチャートや年末企画、さらには言論の域にまで筆を重ねるなど、単なる紹介サイトではないスタンスを持つ。特に詳細まで書かれるライヴ・リポートは圧巻。天野ファンにして二児の父。 |