HINE

〜敢えて北極で盛り上がる作品とは?〜

キャプテン・ビヨンド
『キャンプテン・ビヨンド』

 ディープ・パープル初代ヴォーカルのロッド・エヴァンス、元アイアン・バタフライのギターとベース、ジョニー・ウィンター・アンドの有名なライヴ・アルバムで好演しているドラマーの4人で構成されている、70年代最もハードなロック・バンド。短命に終わった幻のグループだが、骨太のハード・ロックを聴かせてくれる。このドライヴ感,ひたすら豪快! いい意味でB級と評される好盤。

 夏と暑いのが嫌いな僕にとって、無人島に1人取り残されるなんて想像しただけでゾッとするし、おそらく何もせず音楽さえ聞かないだろう。いや、無人島とはいっても南国とはかぎらないかもしれない…。北極にだって無人島はあるさっ! と気を取り直して想像してみよう。
 寒さに凍える中、心も体も温まるのは、やはりガツンとくるハード・ロックだ。しかも単調なやつはダメ。同じリズムでダラダラやられたら寝てしまう。変拍子バリバリのやつがいい。しかも、いっしょに唄えて何度聴いても飽きないメロディアスさや、スリルと緊張感が交差するハイ・テクニッックなバランス感。これらすべてを兼ね備えるのは未だたった1枚のアルバムしかない。
 ということで、僕が(極北の)無人島に1枚だけアルバムを持って行くとすれば、キャプテン・ビヨンドのファースト・アルバム“CAPTAIN BEYOND”を持って行くだろう。宇宙空間を彷徨うイラストのジャケットも、オーロラの夜空をバックに眺めるにはピッタリだ。よく見れば、裏ジャケでメンバー4人が歩いている場所も氷で覆われた山に見えなくもない。
 キャプテン・ビヨンドとの出逢いは、昔FMラジオ放送でやっていた「サウンド・ジョッキー」(渋谷陽一氏がDJを務める)で流されていた「過去への乱舞(大気の海で)」を初めて聞いた瞬間。その未知なるサウンドに、脳天直下の衝撃を受け、すぐにレコード屋へ買いに行ったものだ。当時(70年代半ば)売られていたのは、初回限定版の3Dジャケットに似せた、イラストの回りに球面体がいっぱい配置されているリイシューものだったが、このプログレ・アーティストっぽいイラスト・ジャケットも気に入り、ますます期待に胸を膨らませた。
 家に帰り、まるで初めて女の子の前でチャックを下ろすような(例えが悪いが…笑)、はやる気持ちを抑えレコードに針を下ろすと、まずはカッコイイ変則リズムで始まる1曲目「過去への乱舞」。やっぱり最高だ、、、と余韻に浸る間もなくメドレーで次の曲が侵入してくる。これは途方もない名盤かもしれないと思いつつ聞き進めていくと、6曲目、7曲目あたりでは、もうそれが確信に変わっていた。B面はもう素晴らしすぎて、おそらく涙を流しながら聞いていたはずだ。
 最初に聞いて良かったアルバムというのは、ある程度聞くと飽きて聞かなくなるということもよくある。しかしながら、このアルバムだけは30年たった今でも、聞く度に新鮮でまったく飽きることがない。この30年間、聞き過ぎてレコードを2枚、CDを2枚購入しているが、今またUSリマスター盤のCDを注文し、入荷待ちしている状態だ。
 ほら、こうしてこのアルバムのことを話しているだけでも熱くなってきた。このアルバムがある限り、寒い無人島でも1人で乗り切れる気がする。…擦り切れたとき、僕の寿命も尽きるのか!?

ひね
 ミュージシャンごとに解説を重ねる洋楽ロック大辞典「ROCK PRINCESS」の管理人。仕事の合間に読者から寄せられる原稿を編集し、どんどん扱っているミュージシャンが増えている。「ROCK PRINCESS」の「アーティスト・ガイド」は読者の原稿よって更新されるページなので、洋楽好きはぜひともチェック&参加を! 無類のジェフ・ベック愛好家としても知られる。