チーズ・ケーキがとろけた!
〜洋菓子専門店「エルドール」〜

クリスマスであった。
世間のクリスマスという概念はどうやら「イヴ」にまるぎり移行してしまっているようで、スーパーの外国産特売鶏は25日には姿を消し、倍の値段する国産鶏のみが残っていた。そもそもクリスマスとはキリストの誕生日であるのだから、その前日を持て囃すのはおかしくないだろうか? そんなことを言ったら仏教徒であるくせにクリスマスを意識する俺はどうなんだということになるが。森見登美彦の愛読者であればええじゃないか騒動を巻き起こしたくなる心境だ。悔しいが仕方なく家族の分を買う。
そこから東武野田線梅郷駅付近にある洋菓子専門店「エルドール」へ向かう。今年のクリスマスはここのケーキにしようと決めていたのだ。友人から何気なく教えられ、その際はお薦めの「はいちーず」という100円の小振りなチーズ・ケーキとうまそうだったシュークリームを購入し、すべからく口にしたのだが、まずシュークリームは普通にうまかった。コージーコーナーより濃厚で甘いのがいい。そしてはいちーずを期待もせずに口へ運ぶと、
とろけた。
本当に驚いた。一見チーズ蒸しパンを縮小化したような外観であるのに対し、口あたりはまるでレア、いやそれよりもレアで、パン生地であるのにクリームのようにほろほろととろける。何だこれは、と食感でビビり、またその味にビビった。
でらうめえがや。
動揺して名古屋人の口振りになってしまうほど、うまかった。それまでに食ったいかなるチーズ・ケーキよりもうまく、甘いのだがしつこくなくさっぱりしていて、何より、本当に口の中でとろけるのだ。なおかつ100円というお手頃価格であり、無駄に大きくないのもいい。これがべらぼうに高かったりデカかったりすると、うまくても手が出なかったり飽きてしまったりする。気軽に買えてちょっと物足りないぐらいの満足感がほどよいのだ。
いつもうまそうなケーキがずらりと並んでいるのだが、この日はクリスマスということで特別なケーキが並んでいた。その多くが苺仕様である。矢張クリスマスというと苺なのだな。赤がクリームの白と一緒になってサンタ・カラーになるからであろうか。それ以前に俺は苺が好きなのでその傾向は喜ぶべきだ。
両親にはモンブランと苺モンブランを、チーズ・ケーキにうるさい姉にはレア・チーズを、俺には名前を忘れたが苺の壁ができているやつを、いるのかいないのかわからぬ兄には無難なショート・ケーキを選ぶ。そこへはいちーずを幾つか加える。

見るも豪華な詰め合わせである。
いざクリスマスとなると、俺には関係ないねフフン、と澄ましていた童貞大学生も世の波に揉まれて不意に淋しさを覚え、くそくそどうして俺はこんなに魅力ある人間なのに彼女もおらぬのだ、と嘆きながらせめてものクリスマス気分を味わおうと足掻き、コンビニでショート・ケーキを買い求める。そのため、この時期ではコンビニにケーキはない。多めに発注すれど、それを上回って幻想を抱く孤独者が多いのだ。俺はいざ知らず、家族と過ごしているのでそのような想いは既に抱かなくなっている。いや、抱かないように己れの気持を誤魔化している。
夕餉の後にいざ食してみると、普通のケーキも期待通りうまい。スーパーの安売りケーキなんぞ較べものにならぬ。さらにはそういったものより実際安価である。だが甘いものをどう表現していいのかよく判らぬ俺はその詳しいコメントを避けておくことにする。
しかるのち、はいちーずを食す。

これだ、これがエルドール一番のお薦めであり、俺も最もうまいと認めるチーズ・ケーキだ。
大きさはふた口サイズぐらいで、スポンジ状に見えるそれをつまむと余りの柔らかさに指が本体に沈む。そうして甘い層に指が覆われてしまう。ひと口でするりと、いただいてしまう。
うまい。
マジでうまい。
これ以上何と表現できようか。
その言葉を俺は知らぬので、近辺にお住まいの諸氏はこれを読んだらばぜひとも店へ赴いて試してみてほしい。何せ100円なのだから、騙されたところで惜しくはなかろう。遠方の方は遊びに来た際に俺が案内する。尤も原付ではふたり乗りができぬので、交通手段がないのだが。通販などできれば良いのだが、手軽に得られるものより苦労して得るものの方がありがたみを感じるものだ。それが空振りにならぬほどのクオリティで、大いに納得できる。
今回は単なる紹介であった。面白可笑しい文章を期待された読者にはザマアミロと言っておこう。
このページは俺の個人嗜好の紹介であって、ウケ狙いではないのだから。
しかしそうしてわざわざ紹介したくなるほど、本当にうまいのだ。
自称グルメの友人も、キワモノ好きの俺でさえも驚き頷き病み付きになるほどのものだ。
近くにあるラーメン屋「山一」で激辛のラーメンを食し、完食して100円バック+名前記入した後に、これを食してみよ。
天国が見える。
嘘だがね。
今年も何事もなくメリー・クリスマス。