原付はカモられる

〜それでいいのか警察さん〜

 やってしまった。
 シャルロットに乗って初めて、交通違反でつかまってしまった。
 実にひと昔も前、原付免許を取って浮かれていた頃、一度だけつかまったことがあった。踏み切り前で停止することをしなかったどころか、何と知らなかったのだ。めちゃめちゃ愚かしい話ですが。
 よくある話だけど、なぜか試験問題と同じ問題が予習できる「裏講」というものを受けて、僕は試験に臨んだクチだ。だからテキストを1回通して読んで予習しただけで、ろくに交通法規を知らないまま合格してしまった。教習所に通って叩き込まれる普通免許と違って、原付はそんなふうに1日がんばっただけでも免許が取れる。だからよく「原付の試験に落ちる奴なんているの?」と思われるし、それでも実は僕も1回落ちていたのは秘密だ。
 そんななので、車と違って原付しか免許がないワカゾーは、ルールもよく知らないのだ。さすがに赤信号で停まるなんてのはわかりきってるけど、標識とか細かいことは試験ぶっつけ用のうろ憶え。だから往々にしてイキがった原付野郎は知らず知らずのうちに違反を繰り返している。
 それをカモにしているのが、警察だ。
 カモとか言っちゃうと警察が悪くて原付は悪くない、と正当化してるみたいだけど、そう思ってしまいそうになるぐらい、原付はカモられる。車種別での検挙数はダントツに原付が多いと聞く。前述のようにいまいち交通法規を理解していない人が多く、馬力がないため逃げられない。小回りは利くため狭く入り組んだ裏路地に逃げることはできるが、それまでの広い直線道路で確保されてしまう。スピードなどの、普段は許容範囲の法規を厳密にできる余地も多く、ノルマのために原付をつかまえているきらいがあるように思われてしまう。国道を時速30キロで走ってると後続車にめちゃめちゃパッシングされて、それじゃしゃあないとスピードを上げたら、つかまるのは原付なのだ。パッシングしたトラックは一応法定速度内でスルーなのだ。
 それだけ餌食にされている原付なのに、新聞配達のカブはノーヘルで歩道を走ってもOKというのも解せない。つかまっても「朝刊の配達中なんスよ」と言えば「むむ、それでは仕方ないな」と見逃される。何度やっても大丈夫。意図的に違反してるのに、いいんですか? でもなんかそれはいいらしいよ。なんでだろうね。なんだかなぁ(えのきどいちろう)。
 まー、踏み切り前の停止は知らなかった僕が悪かったと思うんだ。一応は「常識」だから。

 で、
 何をやってしまったかというと。

 二段階右折をしなかったのです。

 はい、ここから弁明(飽くまで正当化じゃないよ)を開始します。
 だってね、真面目に二段階右折を守るとね、まず紛らわしくて危なっかしい。ふらふらと交差点まで進んでいきなり停まって、ギコギコと方向転換したりして、邪魔で邪魔で後続のトラックなんかに「ブブーッ!」とあからさまなクラクションを鳴らされる。彼らには二段階右折なんてする必要はないので「邪魔だ何やってんだ糞原付」というわけだ。だけど右折レーンに入ると誰も文句言わず、並ばせてくれるのですよ。少なくとも危険じゃないしね。
 ほんで危険性からしたら、そういう右折なんてまったくもって危険じゃないじゃない? 逆に二段階右折を律儀にした方が原付本人にとって危険なケースが多いんです、実際。後ろから煽ってる車にかすりそうになったり、二段階して停まったらそっち方向の車に「何だこいつ、込んでるのに先頭に立ちやがって」とまた煽られたりするわけだし、でも馬力がないから車線変更できなかったらしょうがなく(この「しょうがなく」のニュアンスを汲んでほしい)二段階するわけだし。パッシング覚悟で。
 てかね、田舎でそんなの、守ってる人の方が95%ぐらいいないっすから。車も何もない赤信号でぼーっと待ってる歩行者の気分ですよ。まったく危険じゃないのに何でこんなに法を厳守せにゃならんの? っていう。意味なんかまるでないのに。
 だからね、ほんま原付の二段階右折厳守って、いっそなくしたっていいと思うんです。たしかに馬力の関係で右折レーンに入ったら危険なケースはあるかもだけど、入れれば安全なのだし、それよりも二段階して危険なケースの方が断然多い。走る人を守る筈の法が走る人にとって不都合になっとるのは逆ちゃいますか。そこまでケース・バイ・ケースを無視してでも、厳守せにゃならんもんなんですか?
 それ言ったら黄色信号でも停車せにゃならん。「黄色は注意」ゆう法規自体が曖昧過ぎ。でも点数が足りないとそれでもつかまえちゃうのが警察さん。だって厳密にすればそれもしょっぴけるから。だって職場に右折しなきゃいけないのに黄色レーンを2cm越えただけでしょっぴいて、「ここを右折しないと職場に行けない構造なんですけど」と言っても点数稼ぎのためにはシカトするのが警察さんなんですから。それも法規を幾らでも厳しく解釈できる原付を狙って。
 だから、ずるいと思ってしまうのよ。
 だからつかまったあと、言ったんですよ(詳細は後述)。
「それよりも危険性の高い携帯を見ながらの運転はどうなんですか」って。
 そしたら「しょっぴきたいけどできないんだよねー」的な回答。ああそうですか、つまりはつかまんなければどんな危険運転でもしゃあないってことなのね。自転車も歩行者も法規には引っかからないから携帯を見ながらしててもいいんですね。どんなに危険でも。あからさまに危険でも。
 ここらへんが、真面目なのに時々やらかしてしまう人こそをつかまえる「ネズミ捕り」の実情だと思う。
 だからこそ、それらが「点数稼ぎ」に思えてしまう。
 だって、あからさまに暴走する車は追わないんですよ? 自分が危険な目を見るから。
 まー彼らの大原則は「他人より自分を守れ」とは、それ系の知り合いに聞いてますが。そのうえで交通法規とかを言われるとすげー腹が立つんです。
 だから、世に言う「ゴールド免許」を信じられなくなってしまいました。
 免許上はゴールドでも、おまえはほんとにゴールドなんかい、と。
 障害者駐車場に停めるのは罰則じゃないからええのんかい、と。
 負け犬の遠吠えとはわかりつつも、ね。

 でね、
 不幸というか何というか、そのつかまった時のこと。
 三車線で右折した僕の原付を、警察さんは先に行って待ち構えてナンバーを見て原付であることを確認して、急にサイレンを鳴らしたんです。つまりは、僕はネズミだったんです。だって車体だけだともっと排気量の大きいスクーターと一発では見分けが付かないから。
 この時点で、なんだかなぁ。
 まさにカモじゃんか。
 でも、弱者が痛い目を見るのが今、もしくは交通法規の常道です。
 だから僕はしょっぴかれました。
 繰り返しますが、パッシングしたトラックは無罪です。そのあと高速でびゅーんと走っていったのに。
 で、パトカーの車内(これがつかまったことのある人ならわかるだろうけど、エアコン効いてて涼しいんだわ)に入ったらば、ついてないことに新人研修中。訊くだけ訊いて、弁解も何も通じない。機械的に新人さんに「この場合はここを見て」「ほら、ここに違反するでしょ」「ここにこう書いて、ここにこうしてもらって」……とりつくシマがない。
 そのとき僕は、ある人と約束していたので急いでいたのもあり、ひとこと断って電話させてもらった。「何かあったの?」と訊くその人に、僕は「ごめん。何でもない。大丈夫(ほんとは大丈夫じゃない)」とだけ伝え、「ほんとに大丈夫?」と訊かれても言葉を濁して電話を切った。つかまった時の警察さんの前では、真面目に生きてる人はそういう雰囲気になる。DQNは平気で長電話して「クソ警察がさー」とか言っちゃうけど。
「まぁ、二段階右折はそんなに危険な運転じゃないんだけど、規則は規則だからねぇ」
 この言葉に、僕は少しカチンときた。
「じゃあ、もっと危険な運転、たとえばメールを打ったりして携帯電話を見ながらの運転とか、どんどんつかまえるべきなんじゃないですか?」
「うーん、そっちの方がずっと危険っていうのはわかってるんだけど、なかなかねぇ」
 あ、そうか。
「みんなやってるからねぇ」
 やっぱりそうなんだ。
 いちいちそれを取り締まっていたら、キリがない。あと、タイミングの問題。常習的にそれをしている人よりも、たまさか二段階右折を守らなかった原付の方が、一方的に取り締まりの対象になる。
 たとえば、大人のポイ棄てを取り締まるより高校生の万引きをつかまえた方が、効果や効率がいい。
 要領の問題なんだ、
 そう言われているようにさえ、錯覚してしまった。
 半ば機械的に処理されたのち、僕は負け犬の遠吠えとはわかっていながらも、我慢できずに言った。
「そういう、もっと危険な運転こそ、厳しく取り締まってください。自転車だってそういう人ばかりで危ないです。歩行者だってみんな携帯見ながら歩いてて当然みたいになっています」
「うーん、危険だってのはわかるんだけどねぇ。我々はそういうのは車以外には注意ぐらいしかできないんですよ」
「自転車だって今は罰金とか罰則ができてるでしょう?」
「それもねぇ、みんな知らないんだよねぇ」
……知らないから注意だけじゃ、いつまで経っても彼らはやめないだろう。それを強行して取り締まるのが、警察なんじゃないのか?
 原付から小銭をせびるようなことしやがって、と思ってしまった。

 そうして切符を切られ、「待つ人(DER ZIBET)」のもとに言ったら、言われました。
「今回は、ついてなかったんだよ」
 結局は、そういうことなのです。

 だから原付は、些細なことでつかまります。
 逆にトラックはなかなかつかまりません。乗用車以上に。
 同じ原付でも新聞配達がつかまったという話は聞いたことさえありません。
 母親の死に目に会いそうになかったから急いだ、とでも言えば見逃してもらえたんでしょうか。まるで会社を休む口実ですね。ということは許されないのでしょう。
 そういう「要領の問題」なんですね。
 と、ヒネくれてしまいそうになるほど、原付はカモられる。
 だからせめて、やがて中型ぐらいは免許を取りたいなぁ。それ以前に普通免許を取るべきか。
 いずれにせよ、強きを無視して弱気をくじく、それが交通法規のわりと基本です。
 なぜなら、やくざを取り締まったら自分が危険だから。
 消防士も「自分が危なかったらすぐ逃げろ」が鉄則ですし。
 じっさい、原付がつかまる率は4割にもなるそう。危険度はいちばん低いのにね。

 それでいいのか、警察さん?
 と、自分で(法規的には)悪いことしておきながら、正当化するわけでもなく、疑問に思います。
 どうにかしなくちゃいけないと思うんだ。
 それが思い付かないからどうにもならないんだけど。

 だから、もっと上の免許を取ろうと思ってしまうわけさ。
 そうすりゃ自己正当化できて、彼らも文句が言えないから。
 それでいいのか、ということさ。

 以上で、負け犬の遠吠えは終わります。

※後日追記

 またつかまっちまっただよ。
 今度はどうしてもはずせない予定があってめちゃ急いでるときに、スピード違反で。
 そのときの警察官の対応が忘れられない。

「自分が何キロ出ていたかわかっています?」
 (そんなあからさまにわかりやすい「故意かどうか」の誘導尋問に答えられるわけないだろ)
「この道路の制限速度って知ってます?」
 (40キロだが、それで走ると渋滞を招く道で、誰もがそんな速度で走っていない)
「原付の制限速度って知ってます?」
 (30キロで走っているやつを、僕は渋滞を招くおっさんおばちゃんしか見たことがない)

 すべて「〜ですか?」ではなく「〜です?」だった。僕がコンビニ店員のとき店長に「それでよく殴られなかったな。相手に失礼だぞ」と言われた語尾だ。
 それで予定に間に合うわけがなくなり、いろいろしつこく訊いてくる警察官に断りを得、その先に電話連絡して遅れる旨を伝えた。
 電話を切ると、

「急いでるのかもしれませんけど、急いだら危ないですからねぇ」

 カチン。
 この「おためごかし」が、僕はなによりも厭だ。
 だから普段は穏便な僕も、憤懣やるかたない態度になってしまった。

 危険な状況でも事件にならないと助けてくれないくせに、
 暴走族は自分たちが危険に晒されるから放っておくくせに、
 自転車や携帯乱用は見て見ぬ振りするくせに、
 こういうところでばっかり「真面目にしているのにたまにやらかしてしまう」人々から小銭を搾りとっている印象が、ますますつよくなった。

 その日のうちに支払いを済ませた罰金の搾取票に記載されていた、「殿」の表記を僕は、二重線で消した。
 どうせ原付なんかに敬意はないだろう。
 かたちばっかりの「おためごかし」しか。

 効率を重視するとルールに縛られ、
 ルールを尊重すると効率から責められる。
 だからみんな「空気を読まない」人間になっていくんだな、と思った。
 空気を読んで危険じゃない範囲でスピード出したら、ルールの足払いを食らって自分が損するだけだから。

 正直者ばかりが、馬鹿を見る。