出会い

〜出会った刹那ひと目惚れ〜

 地元での仕事も安定して収入がやっと落ち着いてきた頃、不意に中学時代以来の親友、ウッチーがバイクを買ったと言った。
 それはイタリア産の「アプリリア」という輸入車で、なかなか高いとかなかなか走るとか言われたが、僕はうわのそらだった。
「何でバイクごときにそんなに懸命になれるの?」
 というのが、実は正直な心境だった。すまんウッチー、だから僕ぁ投げ槍なリアクションしちまったんだよ。
 で、彼がしきりにバイクで走ることの楽しさを語るので、不意にセピアを思い出した。そういえば都内を回るひとりツーリングしたなぁ、とか、雨の日でも野晒しという乱暴な扱いだったなぁ、とか、どうして踏切前の一時停止を知らずに免許取れたんだろう、とか。
 で、ウッチーがぼそりと「おまえがバイク買えば、ツーリングできるのになぁ」と呟いた。同席した別の友人は、原付の免許があるんだからバイクがあれば行動範囲が広がる、と主張した。
 そういう中、僕は「熱」を帯びてきた。
 走りたい。
 風になりたい。
 ウッチーがどこぞの中古バイク屋を知っているというので、連れていってもらう約束をしてその日は別れた。とりあえず安いやつを買ってみようか、という程度だったが、何となくフツフツと込み上げていた僕のバイク熱は、実は結構な温度だった。
 なので、翌日、近所のバイク屋にふらりと訪れてしまった。
「天気がいいのでバイクを買いにいった。いきなり『バイクください』と言うと、店員がびっくりしていた」
 という吉田戦車のエッセイがあるが、まさにその通り。僕は兄も姉もお世話になったバイク屋に、ふらりと「原付欲しいんですけど」と立ち寄った。
 安ければ新車でもいいや、というどうでもいい前提のもとである。もともと、前に書いたように「走ればいい」と思っていたので、原付でギアなしのスクーターで(僕はクラッチ操作がうまくできず、ギア・チェンジができないのだ)、メットインがあれば文句なし、と思っていた。
 でも、バイク屋の返事は厳しいものだった。楽観的に「10万ぐらいだったら新車でもいいなぁ」と思っていたのだが、現実は15万以上が相場。僕は原付乱造期にお下がりのセピアに乗っていたので、そういう現状は知らなかった。
 そこでがっくりしてしまった。こんなフツーのスクーターごときに15万も払えるかい、と思ってしまった。
 何だかやるせない気持になって、表に出た。一応は客として、バイクを見ようと思ったのだ。そうしておけばその場は凌げるし、その後ウッチーが連れていってくれるという店で中古車を買ってもいい。どうでもいい的な気分で表のバイクを見た。
 すると、
 二度見したバイクがあった。

 何だろう? この『ローマの休日』に出てきたようなバイクは? でもここは国産のバイク屋だからベスパなんてある筈がない。しかし、デザインは似ている。あんな感じのレトロちっくなデザインで、悪くない。
 思わず、僕は値段を訊いていた。18万強とのことだった。「フツー」のスクーターより高い。それでもオーナーやその奥さんは「それはいいですよ。2004年式で、もう2008年タイプが出てるから旧式になっちゃうけど、燃費もいいし。新式だと大して変わらないのに値段が跳ね上がるんですよ」と説明してくれた。
 バイク屋を後にしても、僕はそのバイクを忘れられなかった。風呂の中で煙草を喫いながら、あれはいいなぁ、とヒトリゴチていたりした。
 その時、不意にシャルル・ボードレールの「彼女のなべて」の詩が思い出された。
 これは、恋だ。
 キャバクラで言えば指名もせずに着いた娘がとびきりの上玉だったとか、いや上玉とはいかなくても、自分好みだったとか、そういう感じ。キャバクラが駄目なら街ですれ違った素敵な女性はどうだろう。二度見してしまうような、自分好みの女性に不意に出会ってしまった感じ。
 僕は積極的ではなくオクテな方なのだが、この時は、煙草の灰を桶に張った水に落としながら、あの娘に合う名前はシャルロットかなぁ、と呟いてしまった。
 何と、出会ったばかりのバイクの名前を先に思い付いてしまったのだ。
 そうなると、僕は俄然積極的になった。好きになったら一直線、が僕の性癖である。なので、風呂を出た後にはホカホカの躰で両親に「バイク買うからお金貸して」と相談していた。そうして翌日、仕事の前にバイク屋に寄ってちゃっちゃと契約してしまった。
 命名、「シャルロット」。
 そのバイクがYAMAHAの「ビーノ」だと知ったのは、契約の時の説明が初めてだった。

購入店

二級整備士2名、ロードレース国際ライセンスライダーの店
「ナベオート」
(YOU SHOP なべ)

千葉県 野田市 中里508-4
Tel:04-7129-8393

火曜日定休
朝10:00〜夜9:00まで営業中
いい店です! ウチは兄姉弟3人ともお世話になってます。
バイクはYAMAHA新車を中心に、他社や中古も扱っています。
オーナーが人がよく、奥さんもサバサバしてて、好感が持てます。
技術はもちろんすばらしい。そのうえサーヴィスがよく、購入時にはメットなどをおまけしてくれます。
そのあとにもYAMAHAのライターをもらったり、コーヒーご馳走になったり、集合場所にも使わせてもらっています。
YAMAHA国産車から輸入車までひろくメンテナンスする、まさに技術屋。職人ですな。