携帯電話との果てしなき戦い:08
〜図々しい外国人〜
電車内でのこと。
「一応は、携帯電話の電源を切ることになっている」優先席しか僕は座らない。立っているのもその辺り、つまりは「電源をお切りくださいゾーン」だ。
そこで平気な顔して携帯いじってる奴を見ると僕は注意するようにしているのだが、余りに図々しい外国人がいたのを報告しよう。
優先席でのこと。
座っている中年女性が、携帯電話を開いて隣りの人と「ねーこの画像面白いでしょー」なんて言い合いしている。この「健常者ゆえの奢り」が我慢ならない僕は、その前に立ち、窓に書いてある「電源をお切りください」の文章を指差して彼女に告げた。
「携帯を切れって書いてあるだろうが。読めないのか?」
すると女性は、さも当然かのような態度で言い返してきた。
「読めないの」
はぁ? 流暢な日本語を話しておきながら、これしきの文章が読めないだと? しかし確かに、彼女のイントネイションは「日本に慣れたアジア人」のそれだった。けれども、「日本人と見まがうほど流暢な」日本語を話せるのだから、読めないというのは納得がいかない。
それでもキャッキャとケータイを見せて騒ぐ女性。
「電源を、切りなさい」
きちんと聞こえる日本語で話すと、仕方ないかのように彼女は携帯の電源を切った。
しかし、不愉快な女だ。そう思って僕は、彼女を睨み続けることにした。自分がした掟破りの痛さを知ってもらわないといけない。女性は何度か僕の方をちらちら見て、たまりかねたようにこ告げた。
「Don't look at me like this!」
はぁ? 英語なら解るのか?
だったらさ、窓に英語でも“Please turn off
your mobile phone”なんて書いてあるのが読めないのかね? さっき言った「読めないの」は明らかに嘘じゃないか! 外国人であることを卑怯な武器にして、逃げに転じようとしたのじゃないか?
僕は哀しいよりも虚しくなって、こう告げた。
「英語、読めんじゃねえかよ」
彼女は、僕の言葉を無視した。
そして携帯の電源を切らせもしなかった隣りの女性(こっちは日本人)と、相変わらず「流暢な日本語で」話し続けていた。
携帯の乱用を阻止できたことはできたが、大きな「しこり」の残る出来事だった。
もし本当に読めなかったとしたら、じゃあルールを破っていいのかよ。
そういうことを、僕は言いたいのだろう。