携帯電話との果てしなき戦い:03
〜電車内〜優先席?〜
「……優先席付近では携帯電話やPHSの電源をお切りになり、その他の席ではマナー・モードをご使用ください。なお、社内での通話はご遠慮願います」
……というアナウンスを聞く度に、苛立ってくる。ここには大きな矛盾が幾つもひそんでいるからだ。
携帯電話は、電波を飛ばす。電波は固形ではなく、直線でもない。だからその射程範囲(半径20〜30センチとか言われているようだが、どうなんだ?)に対象――心臓ペースメイカー(PM)使用患者ほか、医療機器の着用者――が居なくとも、その誤作動を引き起こす可能性は大いにある。
それに通話を禁じたとしても、メールでもweb閲覧でも電波は飛ぶ。だから「通話はご遠慮願います」というのは解せない。そのうえ、逆に言えばこの言葉は「通話しなければケータイ使っててもOK」と認めてしまったも同然ではないか。
そうした制定は、優先席だけは電源を切らせて患者の安全を「形だけは」守ろう、ということなのだろう。だが実際には、ますます患者達は乗りづらくなっているのだ。「ケータイOK」を宣言されているのだから!
それに、馬鹿みたいな話だが。
優先席に座る前に電源を切っている乗客など、全体の比率からいくと「砂漠の中の水一滴」ぐらいしか居ないのじゃないか(因みに、筆者はその一滴だ。あなたはどう?)。それどころか平気な顔で、相変わらずケータイをパカパカカチカチしている。そりゃそうかも知れない。鉄道会社が「(優先席で電源を切ってくれれば)車内でケータイ使ってOKですよ」としてしまったので、その都合の悪い( )内を無視してしまうのは、自分に甘い現代日本人にとっては当然というか嘆くべき現状である。
それも、
「はぁ? わざわざ面倒臭い」
「そんなこと誰もしてないじゃん」
「どうせ患者なんていないでしょ」
「ってゆーか暇潰ししたい」
そんなことぐらいだ、彼らが電源を切らない理由は。
もし、隣りに座る患者が激しく咳き込んでも、彼らはそれを「自分のせい」だと思っていない。ずっとケータイを光らせている。なぜなら、そうやって患者は乗客からも鉄道会社からも「無視」されてしまっているからだ。
筆者の実体験で、それは確認済だ。
困ったことに筆者は、精神的な事情からケータイの乱用を見ると軽い不整脈を起こすようになってしまった(主に怒りで動悸が起こる)。それが酷くなり、全身がガクガクと震え、腰が抜けたようになって立てなくなることもある。
だから筆者は、「形式上でも携帯の電源を切ることになっている」優先席にしか座らない。無論、老人や病人、妊婦達に席を譲るぐらいの余裕はある。しかしね、そうやって譲った矢先、彼らがケータイをおもむろに取り出すなんてことが往々にしてあるんだ。車椅子に乗った少女が車内でケータイを使いまくり、降りてからも「ケータイ歩き」になっているのも目撃した。PM患者は身体障害者や老人より特徴がないので、もし若い場合には見かけで判断されず、優先席は譲ってもらえないだろう。だから普通の席に着くしかないのに、そこでは「ケータイ黙認」になっている。
八方塞がり。
それ以前に、街には「ケータイの乱用」があふれているので、おちおち歩けもしないだろう……。
痛い思いをしていない人間は痛みを知らぬゆえ愚かな行為を採るが、痛みを知る人間でも別の痛みには無関心。他の痛みなんて知る余裕もないし、知りたくもない。
誰かに優しくするなら、自分に優しくする。
誰も彼もが「自分」だけ。
他の誰がどうなったっていい。暇さえ潰せれば。
――それが現状。
それ以前に、それは公の文書を読む「読書」と違って、「ごく私的な文書と状態を公に晒している」恥ずかしい状態であるということを認知できないのだろうな。もはや誰も。
……携帯電話を、ね。
煙草と似た扱いにするか、
きちんと「法として律する」か、
そうした、刹那的ではない解決策を練り出せないのかい?
喩えば煙草と同じく車内は全面禁止、ホームでは携帯電話使用区域を設定、なんてすればいいじゃないか。どうせ煙草と同じで馬鹿が守らないのは目に見えているが、少なくとも、「介助するように見せかけて、より差別している」現状よりマシになる筈だろうに。
また、携帯禁止を堂々と指摘できるのは駅員・乗務員の類だ。乗客側の立場にある患者は、死ぬ思いなうえ相手にそれを指摘すれば逆に殺されかねない。それ以前に、被害が出るまで何も対策を持ち出さなかった責任逃れ主義のせいで、絶対数として既にキリがなくなっている。乗務員達がケータイの乱用を「無視」する現場も、際限なく目にしている。
だから僕は、鉄道会社を信じない。
どんな人でも、乗客を信じない。
電車の中では、自分しか信じられない。
一部を特別視すんじゃねえよ。
全員やめさせりゃいいだけじゃねえかよ。